なぜここまで米が高くなってしまったのか?2024年「米価高騰」の舞台裏を徹底解剖!

 

4.政府の備蓄米放出とその失敗

この危機に対し、政府は2025年2月、緊急措置として備蓄米21万トンを放出した。これは、国内消費の約3%に相当する量で、通常は自然災害や作付不良時に限られる異例の対応だ。しかし、価格は下がらず、2025年1月の卸売価格は前年比69%上昇、過去最高を記録した。(ジャパンタイムス)

なぜ、この措置は失敗したのだろうか?」

(1)農協による流通管理

鍵は、農協の流通管理にある。政府の備蓄米は、JAや卸売業者を通じて市場に供給される。JAがこの入札に参加し、落札した米の供給量やタイミングを調整した結果、市場に十分な米が流れず、価格抑制効果はほとんどなかった。

農水省のデータによると、2024年末の民間在庫は約180万トンと、過去10年で最低水準。これに対し、備蓄米の放出は焼け石に水といえよう。(米国農務省海外農業局)

(2)放出量の限界

さらに、21万トンという放出量は、年間消費量約700万トンのわずか3%。供給不足を解消するには不十分だった。専門家は、少なくとも50万トン以上の放出が必要だったと指摘している。

また、JAが在庫を抑えたことで、放出米が市場に十分に流通しなかったことも、価格高騰の継続を招いた要因である。

5.農協と農水省:価格操作の疑惑を追う

ここで、核心的な疑問。米価高騰は、単なる需給の乱れなのか、それとも計画的な価格操作だったのか?

直接的な証拠は少ないものの、農協、農水省、流通業者の動きから、以下の点が注目されている。

(1)農協の価格設定力

JAは、農家への買取価格を決定し、これが消費者価格に直結します。2024年の買取価格引き上げは、生産コストの上昇、(肥料費は前年比20%増、労働費は10%増)だけでなく、需要増を背景にした戦略的判断だった可能性が高い。

たとえば、JA全農の報告では、2024年のコシヒカリの買取価格は、60キロで1万8,000円から2万2,000円に上昇。これが、市場価格を押し上げる要因となった。(毎日)

(2)備蓄米のコントロール

政府の備蓄米は、JAを通じて市場に供給される。2025年の放出では、JAが落札した米を段階的に市場に出すことで、価格を維持したと見られる。

農水省は「流通の問題」と主張しているが、JAの在庫管理が価格下落を防いだと指摘する声もある。(米国農務省海外農業局)

(3)流通業者のホーディング

卸売業者や小売業者も、価格上昇を見越して在庫を抱え込んだ。2024年秋、卸売市場での入札価格は、60キロで2万5,000円を超えるケースも出てきた。これが供給不足をさらに悪化させ、価格高騰を助長した。(豪グレイン セントラル誌)

(4)農水省の姿勢と批判

農水省は、供給不足を否定し、問題は「流通の非効率」にあると主張している。しかし、長年の減反政策やJAとの密接な関係から、農家保護を優先する姿勢が批判されている。東アジアフォーラムの分析では、農水省の政策は、消費者負担を軽視し、農家の所得維持に偏っていると指摘されている。

(5)価格操作の可能性

直接的な証拠はないが、JAの価格設定、備蓄米の管理、農水省の消極的な対応は、計画的な価格引き上げと維持を可能にした構造を示唆している。東京財団の研究では、JAの独占体制が市場競争を阻害し、価格操作の余地を生んでいると指摘している。

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