MAG2 NEWS MENU

イスラエルの「イラン核施設」攻撃に加勢か停戦か?大統領選に貢献「ユダヤ」と親イラン「プーチン」で板挟みになるトランプ米国のジレンマ

日本時間6月13日午前10時、世界中を震撼させた「イスラエルがイランの核施設を攻撃」という衝撃的なニュース。すでに不安定な状態が続いている中東情勢ですが、一気に緊張感が高まったことは言うまでもありません。しかし、イスラエルは世界中から非難を浴びると分かっていても、なぜイランの核施設を攻撃する必要があるのでしょうか?今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』ではジャーナリストの北野幸伯さんが、イスラエル、イラン両国の思惑を推察しながら、どっちつかずの対応を取る米トランプ大統領のジレンマについても解説。イスラエルとトランプの関係、そしてプーチンとイランとの関係を紹介しながら「核戦争」が起きかねない緊迫の中東情勢を考察しています。

なぜイスラエルはイランの核施設を攻撃したのか?

6月13日の午前9時53分に、メルマガを配信しました。

『【RPE】【重要】★イスラエルのイラン核施設攻撃が近い【兆候】』

です。

配信から7分後、イスラエルは、イランへの攻撃を開始しました。

正直いうと、こうなること、有料講座『パワーゲーム』では2023年8月にお話ししていました。

このメルマガでも2023年9月19日号

『【RPE】★イランの核兵器保有と次の戦争が近づいている?』

から、一貫して「こうなる可能性」について書きつづけてきました(「イスラエルvsハマス戦争」が起こったのは、2023年【10】月7日であることに注目)。

そして、「2025年予測」でも、「イスラエルがイランの核施設を攻撃するだろう」と話していました。

なぜ私は、「イスラエルがイランの核施設を攻撃する」ことがわかったのでしょうか?

復習しておきましょう。

既述のように、私が「イスラエルとイランの戦争が起こる可能性がある」といったのは2023年8月です。

そして、2か月後の2023年10月、ハマスがイスラエルを奇襲し、「イスラエルvsハマス戦争」が始まりました。

ハマスはイランの手下なので、これは事実上の「イスラエルvsイラン戦争」なのです。

2024年、「イスラエルvsハマス戦争」は、「イスラエルvsハマス、ヒズボラ、イラン戦争」に拡大しました。

なぜ私は、戦争が始まる2カ月前に、起こることがわかったのでしょうか?

どういう話だったか振り返ってみると、

『時事通信』2023年3月5日付。

<イランを訪問した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は4日、ウィーンの空港で記者会見し、イラン中部フォルドゥの核施設で核兵器級に近い濃縮度83.7%のウラン粒子が検出された問題について「その水準の濃縮ウランは蓄積されていない」と述べた。>

いよいよ濃縮度90%を超え、核兵器保有が近づいたからかもしれない。

『日経新聞』2023年9月17日付。

<国際原子力機関(IAEA)は16日の声明で、イランからIAEAの一部査察官の受け入れを拒否すると通告があったことを明らかにした。

査察官はウラン濃縮などを検証している。

グロッシ事務局長は「強く非難する」と述べ、査察に深刻な影響が出るとして再考を求めた。

国際社会の懸念が一層強まるのは必至だ>

『朝日新聞DIGITAL』2023年10月9日付。

〈米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、イスラム組織ハマスがイスラエルにしかけた大規模な攻撃はイランの関係者が準備段階から協力し、最終的なゴーサインを出したと報じた。

ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部の話として伝えた〉

そして2024年11月18日、イスラエルのネタニヤフ首相の発言で、私の予測が正しかったことが明らかになりました。

ユダヤを裏切り、イランに日和ったトランプ

『テレ朝ニュース』11月19日付。

〈イスラエル首相 先月にイラン核施設攻撃を明らかに「核開発計画阻止できていない」11/19(火) 8:06配信

イスラエルのネタニヤフ首相は18日、軍が先月、イランの核施設の一部を攻撃したことを明らかにした一方、「核兵器の開発計画は阻止できていない」と述べました。

現地メディアによりますと、ネタニヤフ首相は18日、議会で演説し、先月26日に、イランの防衛能力やミサイル生産能力に関連する施設に加え、核施設の一部を攻撃したことを表明しました。

一方で、「核兵器の開発計画は阻止できていない」として、「イランの核開発への歩みを止めることは、我々の責務だ」と強調しました〉

「イランの核開発の歩みを止めることは、我々の責務だ」そうです。

だからイスラエルは、イランの核施設を破壊しなければなりません。

そんなイスラエルにとって、アメリカ新大統領は、ハリスよりトランプの方がよかったのです。

なぜ?

バイデン-ハリスは、イスラエルとイランに、「どっちも落ち着いて!」というだけでした。

それで、停戦の仲介を試みていた。

しかし、イスラエルにとって、同国の存在自体を認めないイランの核兵器保有は、「悪夢」以外の何物でもありません。

だから、破壊しなければならない。

では、トランプはどうなのでしょうか?

彼は、「イランの核施設を破壊しろ!」と公言していました。

『時事通信』2024年10月5日付。

〈イラン核施設「攻撃すべき」 反対のバイデン氏批判─トランプ氏

時事通信 外信部2024年10月05日10時11分配信

【ワシントン時事】トランプ前米大統領は4日、南部ノースカロライナ州で開かれた集会で、イスラエルによるイランへの報復について、イランの核施設を「攻撃すべきだ」と語った。

核施設攻撃に反対したバイデン大統領を「間違っている」と批判した。

トランプ氏はイランの核施設に関し、「われわれにとって最大のリスクだ」と強調。

その上で、「まずは核(施設)をたたき、残りのことは後で心配すればいいと(バイデン氏は)答えるべきだった」と語った〉

この発言は、トランプの考えがネタニヤフ首相と同じであることを示していました。

当然、イスラエルロビー=ユダヤは、ハリスではなくトランプを支持したでしょう。

トランプを勝たせたユダヤ・イスラエルロビーは、即座にイラン核施設を攻撃することを望みました。

しかし、トランプは、日和(ひより)ました。

ユダヤと板挟みになった「プーチンのポチ」トランプのジレンマ

つまり、イランと交渉を開始したのです。

これは、何でしょうか?

トランプには、二つの「スポンサー」がいます。

すなわち、ユダヤ・イスラエルと、プーチン・ロシアです。

ユダヤ・イスラエルは、すぐイラン核施設を攻撃したい。

しかし、プーチン・ロシアは、イランの現政権を存続させたい。

なんといっても、イラン現政権は、ロシアにドローンを提供し、助けてくれているからです。

プーチン・ロシアに武器を提供してくれる国は、北朝鮮とイランしかいません。

それで、プーチンは、トランプに「イランと核交渉しろ!」と指示したのでしょう。

トランプが異常なまでに「プーチンの【 ポチ 】」であること、皆さんもご存知でしょう。

そのため、アメリカでは、上院議員も「トランプはロシアの工作員だ!」と断言しています(17分54秒からみてください)。

こうして、トランプは、「イラン核施設をすぐ攻撃したい」ユダヤ・イスラエルと、「イラン現政権を守りたい」プーチン・ロシアの板挟みにになったのです。

しかし、イスラエルも、永遠に待ち続けるわけにはいきません。

待っている間に、イランが核兵器を完成させるかもしれない。

それで、イスラエルはイラン核施設への攻撃に踏み切ったのです。

そうなるとイランは、どう出るでしょうか?

『時事通信』2024年10月5日付。

〈イランはこの日、紛争が発生した場合、地域内の米軍事基地を標的にするとけん制した〉

もし、イランが米軍基地を攻撃すれば、当然「アメリカも参戦」ということになるでしょう。

トランプが、いくらプーチンのポチでも、米軍基地を攻撃されて黙っていれば、「ロシアの工作員であること」を告白するようなものです。

(私は、「トランプはロシアの工作員だ」とはいっていません。「アメリカの上院議員が、『トランプはロシアの工作員だ』といっている」という情報を紹介しているだけです。念のため)

というわけで、イスラエルがイラン核施設を攻撃し、アメリカが「しぶしぶの体」で参戦する(トランプは、ホントにしぶしぶでしょうが)、そんな可能性が高くなってきました。

イスラエル、アメリカ、イランのそれぞれの思惑を見てみましょう。

イスラエルと米国は何がしたいのか?

まずイスラエル。

イスラエルの戦争目標は、イランの核施設を破壊し、イランの核兵器保有を阻止すること。

これだけです。

大戦争を望んでいるわけではありません。

もう一つ、「なんとかしてアメリカを巻き込みたい」と思っているでしょう。

トランプ・アメリカ。

ユダヤ・イスラエルとプーチン・ロシアの二つの勢力に勝たせてもらったトランプのジレンマは深いでしょう。

イラン現政権は、ドローンを提供することでロシアを助けています。

プーチンにとっては、弾薬と兵力を提供してくれている北朝鮮に並ぶ「友人」なのです。

しかし、イランが米軍基地を攻撃すると、「プーチンのポチ」トランプも、イスラエル側に立って参戦せざるを得ないでしょう。

そして、ブッシュ(子)時代と違い「やる気のないアメリカ」が参戦することで、大戦争を回避できる可能性が高まります。

イラン。

イランの指導者たちは、「国民を納得させるためにイスラエルを大々的に攻撃しなければならない」一方、「核施設が破壊されてしまったら、戦争をする意味がない」というジレンマに陥っているでしょう。

アメリカがバックにいるイスラエルに勝てる見通しもありません。

それなら、「国民が納得するくらい大々的にミサイル、ドローン攻撃を行って、その後うやむやにして、自分の地位を守ろう」となるかもしれません。

そうなるのが、一番「平和的な解決方法」です。

私たちは、イスラエルの立場もイランの立場も理解して、なるべく早い平和を願いましょう。

戦争が長引くと、石油価格が暴騰し、インフレがさらに加速するかもしれませんし。

核をもたないイラン。

そして、中東の安定と平和が、日本の国益です。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2025年6月14日号より一部抜粋)

【関連】国際社会の“ウクライナ離れ”で一身に浴びる注目。イスラエルが開始した「存続のための大きな賭け」

image by: The White House - Home | Facebook

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け