国際社会の“ウクライナ離れ”で一身に浴びる注目。イスラエルが開始した「存続のための大きな賭け」 

Tehran,,Iran.,February,18,,2014.,A,View,Of,Tehran,,The
 

6月13日、イランの核関連施設への先制攻撃を行ったと発表したイスラエル。関係各国の努力でかろうじて保たれていた世界のバランスはこれから先、どのように変化してゆくのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、中東やウクライナ戦争の今後をさまざまな情報を総合し推測。さらに国際安全保障を巡る各国の思惑を考察・解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:多極化する世界で取り残される古き欧州と第2次世界大戦の遺産イスラエル‐政治利用される現代紛争とMulti-polarsの国際情勢が作り出す“新しく古い世界”

綻びが制御不能の亀裂に悪化し割け切る。政治利用される現代紛争とMulti-polarsの国際情勢が作り出す“新しく古い世界”

「もし今、中東エリアにいるのであれば、すぐに退避の準備を始めた方がいい」と数カ国から助言されました。

幸運なことに私はその時、東京にいましたが、情報が次々ともたらされる中、事態が非常に緊迫してきていることを感じました。

15日日曜日にアメリカとイランの6回目の核問題に対する協議が行われますが、「恐らくそれが対話による解決を図るラストチャンスになるかもしれないとのこと」です。

ここ数日の間に明らかになったのは、現時点ですでに9発分の核弾頭製造に値する濃縮ウランが製造されており(現時点で濃縮率は60%強)、アメリカとの協議が物別れに終わった場合には、一気に核兵器レベルの90%超の濃縮を行い、アメリカ and/orイスラエルによる対イラン攻撃に備える方針を固めたと言われています。

原子力の平和利用を司るIAEAでは、欧州各国が音頭を取り「イランはIAEAの査察に協力的ではない」との非難決議を可決させましたが、それがさらにイランの反応をエスカレートさせる方向に進み、イランは「近日中に追加のウラン濃縮施設を建設・稼働させる」と受けて立つ様子で、緊迫度合いが高まっています。

アメリカのトランプ大統領はまだ対話による合意が可能と考えており、そこにロシアをイランの後ろ盾として引き込むことで解決を模索しており、ロシアも乗り気であると言われていますが、イスラエルがイラン核施設への攻撃を真剣に検討しており、イランも「イスラエルまたはアメリカによるイランへの攻撃があった場合、イランもイスラエルの核施設への攻撃を行う。また地域のアメリカ軍基地はすべてイランの弾道ミサイルなどの射程圏内にあり、アメリカがイランへの攻撃を直接または間接的に行った場合には攻撃を辞さない」と応戦しています。

このような状況下では、何らかの偶発的な衝突が起きた場合には、一気にエスカレートすることが予想され、それが核を含む内容であった場合、中東地域のデリケートな安定は崩壊し、地域全体を巻き込んだ戦争が勃発して、中東地域が世界戦争の発火点になることが予想されます。

気になるのは15日の協議を前に、トランプ大統領が「もう我慢の限界が来ている。今回の協議が物別れに終わったら、他の手段を考えないといけない」と述べていることです。

お決まりのTACO(Trump always chickens out.)ならばいいのですが、トランプ大統領も国内外の評判を保つためには、どこかで有言実行の人であることを示す必要があり、その場合、限定的なものかもしれませんが、イランへの攻撃はこれまで歴代の政権が一貫して主張してきたカードであるため、何らかの形でイランへの攻撃に踏み切る可能性は否定できません。

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