国際社会の“ウクライナ離れ”で一身に浴びる注目。イスラエルが開始した「存続のための大きな賭け」 

 

中国が香港に「国際紛争調停機構」を設立した意味

そしてこの曖昧さが自国の利益に繋がると考えられるのが、中国です。

ロシア・ウクライナ戦争が長期化し、イスラエル絡みの中東での緊張の高まりが続く限り、国際社会の非難の矛先や注意が本格的に中国に向くことはありません。

中国政府は一応、繰り返しロシアに対しても、ウクライナに対しても、そしてイランやイスラエルなどに対しても“対話による解決”を訴え、停戦を促してはいますが、本心は恐らくこれらの紛争が長期化することで、中国が軍事的な強国になるための長期戦略を完成させるための時間が稼げると考え、停戦のチャンスをあえて見過ごすという策を選択するかもしれません。

台湾以外に対して自ら攻めて出ることは考えづらいのですが、中国にとっては自国の覇権エリアとしてのアジア太平洋地域での絶対的優位を獲得することを阻むいかなる攻撃に対しても対応できる軍事力を築くことを目指しています。

様々な説がある中で、最も有力と考えられる説では2026年にはそのレベルに達するとされており、それまでは外交面で策を講じつつ、軍のために時間を稼ぐという戦略を取るものと思われます。

そのために5月31日に香港に国際紛争調停機構を設立し、中国以外に35か国をfounding memberとする国際組織を立ち上げています。

これは、これまで紛争調停と言えばWestern Standardと見られてきた慣行を覆し、新しい国際ルールを中国とその仲間たちが作るという外交的覇権国としての影響力の拡大と、欧米との決別を意味します。

すでにイランとサウジアラビア王国との外交関係樹立や、パレスチナにおける諸機構をUnited Palestineにまとめあげた実績があり、中国流の調停が受け入れられ、実績を残していることをアピールし、国際社会における新しい極を作り上げるステージに進もうとするツールと考えられます。

インドの影響力が強いグローバルサウスでもなく、欧米系でもなく、ロシアや中東各国、アフリカ各国を加えた新しい極を作り上げ、その極の核として君臨するという動きです。

その実現のためには、非常に残念ながら、戦争が継続しており、世界の目と注意が逸れていることがとても大事なようです。

アメリカは、トランプ大統領という非常に稀なキャラがある分、余計に目立つとしても、放置していても、望むと望まないに関わらず目立ち、最近になって影響力の衰えが目立つとしても、世界はまだアメリカの一挙手一投足に注目します。

ロシアは旧ソ連の呪縛から一旦解き放たれ、苦しい年月を経た後、プーチン大統領の登場によるロシアの再編が急ピッチで進められて、今ではまた国際情勢におけるパワーハウスの座に返り咲いていますが、その座を守るためには戦争による目くらませが欠かせないという、なんとも質の悪い悪循環を繰り返しています(そして国際社会はそのようなロシアの行いを非難し制裁を加えますが、またしばらくすると忘れ、プーチン大統領の罠にかかってロシアとの付き合いを重視し始めるという繰り返しを続けることになります)。

友人のロシア人が言ったことがありますが、ロシアの再興とプーチン大統領に必要なのは時間であり、そのために必要な犠牲は一切厭わない傾向があるようです。

ロシアは今、自らが戦争の当事者になっていますが、アメリカや中国と同じく、他国・他地域の戦争・内戦の背後に控え、その国や地域の内政を操り、勢力圏を拡げています。

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