国際社会の“ウクライナ離れ”で一身に浴びる注目。イスラエルが開始した「存続のための大きな賭け」 

 

国際紛争の行方を左右することになる米ロ中とトルコの関係

これまで第1期政権時にイラン革命防衛隊のリーダーであったソレイマニ司令官の暗殺を指示したこともありますが、恐らくトランプ大統領は誰よりも報復を恐れることでも知られており、軍事的な行動に対しては、イメージに反して石橋を叩いて渡るタイプと言われているので、アメリカに直接的な危害が及ばず、それでいて効果を出すことができる手段として、これまで自制を要請してきたイスラエルにゴーサインを出すことを選択するかもしれません。

この場合、確実にイランとイスラエルの間での交戦に発展しますが、これまでのケースとの違いは、アラブ諸国が傍観を貫くことはなく、コミットメントの強弱の程度はあるでしょうが、イランの側に付いてイスラエルに長年の積年の恨みを果たすべく牙をむき、地域全体を巻き込んだ大戦争に突入する可能性が高まります。

今週に入って原油先物のWTIの価格が、産油地域のリスクに応じて上昇する事態になっており、刻一刻とXデーが近づいてきているように思われます(ゆえにアメリカ政府と軍は地域からの自主的な退避をスタートし始めています)。

この緊張の高まりを肌で感じ、国際安全保障のバランスの崩壊を危惧しているのがトルコです。

トルコはイランの隣にあり、かつ反対側にはウクライナが存在する稀有な地政学的要衝です。そしてロシアとウクライナの直接協議をイスタンブールでホストし、ロシアともアメリカともほぼ均等の距離感で付き合いバランスを保っています。

同時にイランとは微妙な距離感を保ちつつ、明確な反イスラエルの姿勢を貫き、カショギ氏事件で悪化していたサウジアラビア王国との関係を修復することでアラブ社会における立ち位置を回復したことで、国際社会におけるフィクサー的な立場に復帰し、今では2つの大きな地域紛争を物理的につなぐ存在になっています。

紛争の飛び火が西から降ってきて(イスラエルとイラン、アラブ)ロシア・ウクライナ戦争の火に油を注ぐのか?

それとも東から降ってきて、中東全域を包む紛争の種火に一気に油を注ぎ、引き返すことができない状態になるのか?

その真ん中にトルコが位置するため、トルコの動向も、そしてトルコと米、ロシア、中国との関係が、今後の国際紛争の行方を左右することになると考えます。

トルコには私も紛争調停の仕事で頻繁に訪れたり、オンラインで協議を続けたりしていますが、NATOの核(アメリカの核)がトルコ領内に配備されていることから、トルコが直接戦争の火に巻き込まれる可能性は低いと思われますが、トルコにある核が実戦使用されたり、ターゲットにされたりした暁には、同じく隣にあるナゴルノカラバフ紛争とも繋がり、コーカサスから地中海沿岸にまで至る広い範囲を覆う戦争に発展する可能性が高まります。

それが分かっているからでしょうが、アメリカもロシアもトルコを話し合いの場に選ぶことが多いですし、あまり知られていませんが、カタールが行う調停・仲介も、首都ドーハ以外にトルコのイスタンブールが選ばれることが多くなっています。

衆目から当事者を遮断する施設が揃っており、セキュリティーもしっかりしているため、多くの水面下での話し合いが行われているのも、イスタンブールの特徴です。

ただ、トルコ政府が協議そのものからは一定の距離を置き、あくまでも当事者間の話し合いに重点を置く姿勢を貫くため、どれほど協議の内容に直接的な影響を与えるかは分かりませんが、当事者間のシャトル調停を得意としており、それを実際に行う多国間調停イニシアティブの大事なパートナーとしても存在感を示しています。

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