米とイスラエルのみならずテロ組織までが選択する賭けの内容
そしてロシア・ウクライナ戦争が“落ち着く”と、国際社会の目は一気にイスラエルによる悪行に注がれ、イスラエルの孤立が鮮明化し、結果としてイスラエルの存続をかけた賭けがスタートすることになります。
その賭けとは、国内においてネタニエフ首相の排除が加速し、同時にユダヤの力のような極右政党の力を削ぎ、一旦、ガザ地区に対する軍事攻撃と、周辺国に対する威嚇および攻撃を停止して、表向き2022年10月7日以前の状況に“戻して”、アラブ諸国との共生・共存の道を探るという“イスラエルの自浄策”です。
しかし、6万人、7万人とも言われるガザ市民の犠牲を目の当たりにし、イスラエルが、かつてユダヤ人がホロコーストで経験したようなことをガザ市民に行ったことは、決して忘れられることはなく、いつ大きな衝突の火種になってもおかしくない状態を残したままになりますし、もしこの賭けにアメリカが乗ってくれなかったら、これまでのような“特別なステータス”をイスラエルが享受することは今後起こりえないものと思われます。
もう一つの賭けは、今、ネタニエフ首相がずっと行っているように、トランプ大統領およびアメリカ政府を中東地域に再びフルコミットさせ、自国の行動をとことんサポートさせたうえで、“民主主義の保護のため”とでも正当化して、ガザを破壊し尽くし、ヨルダン川西岸も完全制圧したうえで、これまでのように、イスラエルの存在にチャレンジしてくる国に対しては迎え撃つという内容かと思われます。
ただし、これが成立するための必須条件は、アメリカおよび欧州各国によるフルサポートですが、そのホロコーストの魔法は、自らの蛮行によって切れ、ホロコーストの実行国であったドイツでさえも公然とイスラエル非難を押さえられない状況が生まれているため、今後、欧米によるイスラエル擁護という特殊な状況は期待できないものと考えます。
もし賭けに失敗した場合、まるで北朝鮮を示すような響きですが、核兵器をもって暴発し、周辺国を巻き込んでしまうことも視野に入ってくるかもしれません。
少なくとも知っているネタニエフ首相はこのような愚行には走らないと信じますが、軍と極右勢力からの圧力に彼がどれだけ耐えることができるか、またはそもそも生き残ることができるかどうかによって、結末が変わってくるものと思われます。
この悲劇を防ぐことができるのは、アメリカ合衆国のみなのですが、果たしてアメリカ政府は、イスラエルとの関係において、究極の決断を下すことができるかどうかが大きなカギになります。
そこで出てくる、でもあまり望ましくない賭けが、のらりくらりと戦争を長引かせるというものです。
これは、言い換えると、アメリカを含め、優柔不断のまま、決断を遅らせて戦争を長引かせ、一般市民の多大な犠牲の上に、デリケートなバランスを保つという内容です。
現在進行形の選択肢は、悲しいことにこの賭けの内容に近い気がします。誰も決断を下さず、いたずらに時が過ぎ、偶然、“望ましい状況”が生まれて、自ずと戦争が止まると祈るしかない状況とも言えます。
イスラエルも、アメリカも恐らくこれを推し進めますし、raison d’etreを必要とするハマスやヒズボラなどのテロ組織もこの賭けを選択するように思われます。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ









