国際社会の“ウクライナ離れ”で一身に浴びる注目。イスラエルが開始した「存続のための大きな賭け」 

 

デリケートなバランスを崩したウクライナのサプライズアタック

このようなトルコの特異な存在感は、実際に各紛争がエスカレートしないように留める最後の砦となっていると私は見ていますが、それはまた国際安全保障の非常にデリケートなバランスを保つ最後の砦でもあると考えています。

そのデリケートなバランスは、6月1日のウクライナによるロシア・シベリアなどへの同時攻撃をもって崩れ、ロシアとウクライナをアクティブ・コンバットの状態に引き戻すことになってしまいました。

サプライズアタックは確かにロシアのミサイル戦略を崩す効果はあったと思われますが、それがロシア政府と軍内の強硬派の目を覚まさせ、対ウクライナ攻撃の本格化、そしてレベルアップを促す結果になってしまいました。

「一応、直接的な協議を行っている最中だから…」と全土への攻撃は控えていたロシアですが(もちろんウクライナ東南部4州の完全掌握に向けた戦闘は継続していましたが)、報復の牙は容赦なくウクライナ全土に及び、それと並行してロシアの地上部隊の進撃が再開されて、ウクライナを蹂躙する構えを見せています。

プーチン大統領に対しても非難を繰り返し、ゼレンスキー大統領にも話し合いを促してきたトランプ大統領は、今回のウクライナのサプライズアタックを事前に相談されていないことに怒り、ロシアの報復に一定の理解さえ示す状況まで、ウクライナ離れを加速することになっています。

ホワイトハウスの安全保障関連の補佐官曰く、「ゼレンスキー大統領とウクライナはトランプ大統領とアメリカが提示していたレッドラインを越え、ロシア領内奥深くにまで奇襲を実行し、プーチン大統領が抑えてきた強硬派の目を覚まさせてしまった。こうなったらもうとことん戦わせるしかなく、それはまたアメリカの撤退を意味することになる」とのことですが、確かにトランプ大統領自身の関心がウクライナから離れ、その関心がイランに向いていることからも、強ち妄想とも言えない状況になってきています。

その表れとして、イランとのディールを作るために、ロシアのプーチン大統領を引き入れ、イランにある濃縮ウランをロシアが引き取り、その見返りとしてロシアがイランの安全保障を確約することを強要し、アメリカは対イラン制裁を撤廃するという合意を作ろうとしています。

ロシアがこのディールに参加し、イランを説得する見返りに、アメリカはウクライナに対するロシアの攻撃を黙認し、ロシアが求めるように、ウクライナのNATO加盟交渉を永久に凍結すると同時に、すでにロシアが支配を確立したクリミアと東南部4州についても、ロシアへの帰属を支持するという荒業に出るという情報が入っており、もしこれが成立した際には、ウクライナが“消滅”する可能性が出てきます。

この情報の真偽については、最近のロシア側の首席交渉官であるウラジミール・メディンスキー大統領補佐官の発言が日に日に強気になってきていることから、ロシア側がある程度、アメリカとの取引が成立する可能性が高いと認識しており、それを阻もうとする欧州各国を牽制し、同時にゼレンスキー大統領とウクライナを絶望の淵に追いやる算段が整いつつあるのではないかと感じさせます。

もしこの読みが適切であるとしたら、ロシアとウクライナの“戦争”は、元々はロシアによるウクライナへの“侵攻”であったにもかかわらず、欧米諸国とその仲間たちによる支援も甲斐なく、ウクライナはロシアの手に落ち、プーチン大統領はベラルーシと合わせ、旧ソ連の再興のためのコアとしてのロシア・ベラルーシ・ウクライナのトライアングルを手に入れることになり、プーチン大統領が生きている限りは、ロシアは再び国際社会のパワーハウスの一角を占める立場に復帰することになります。

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