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信用保証協会からの請求は逃げられる?「債権放棄の可能性」と「条件」を専門家が解説

経営が行き詰まり、金融機関からの借り入れを返済できなくなったとき、信用保証協会による「代位弁済」が発生します。その結果、企業や経営者は保証協会から求償権に基づく返済を求められます。この求償権は放棄できるのでしょうか?メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者である吉田さんは、信用保証協会の求償権が放棄される可能性について、わかりやすく解説しています。

信用保証協会の債権放棄はありうるのか?

結論からいうと、ありえます。

ただ、難易度は相当高いというか、相当な条件が揃っていて、かつ、運にも恵まれないと成功率は低いでしょう。

【基本】

信用保証協会に代位弁済された残債務を、保証協会は「求償権」と呼んでいます。

なぜなら、これは「貸したお金」ではないからです。

貸したのは金融機関です。それを債務者が返せなくなって、保証協会が金融機関に対して保証(肩代わり)してあげた。これが代位弁済です。

「肩代わりしてあげたお金を、うちに払ってよ!」という権利を、民法で求償権といいます。

貸した金ではなく、求償権に基づく請求ですから、最初は一括請求で来ます。「当協会が代位弁済した金1億円を、ただちにお支払いください。」「さもなければ年率14.6%の損害金が発生します。」 と。

【よくある交渉】

とはいえ、一括で払えないのは保証協会側も百も承知ですし、保証協会は営利団体ではありません。公的機関です。

中小企業が金融機関から資金調達をする際に、保証人代わりになって支援してあげようという趣旨で設立された公的機関です。

よって、取り立て行為はいたって常識的です。

また、一括で払えなければ、事情を聴き取ったうえで、暫定的に、分割払いに応じてくれます。

よくあるのが、「とりあえず1年間だけ、毎月1万円ずつ払います」 というようなやりとりです。

ずっと固定的に1万円ずつだと、完済までに何百年もかかるでしょうから、あくまで暫定的な扱いです。「1年分の振込用紙をお送りしますから、12か月後に再度、毎月の返済金額を話し合いましょう」と。

尚、ここで1万円ずつ支払った場合、それは元金として扱われます。損害金の14.6%は、完済するまでずっと加算され続けますが、回収されるのは元金よりも後です。

いわゆる劣後のような扱いです。(元金完済間近になったら、話し合いで損害金のかなりの部分を免除されることも多い)

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【不動産を持っている場合】

不動産を持っている場合、上記の流れと異なる場合があるので注意しましょう。というのは、保証協会は昔も今も、不動産処分を通じてより早く債権回収する傾向が強いからです。それも、担保付きだけではありません。無担保でも、です。

たとえば、あなたの会社に1億円の保証協会つき借入金(無担保)があり、それが代位弁済されたとしましょう。ここで、あなたは個人保証しているとします。

あなたはマイホームを持っています。所有権はあなた。住宅ローンの残債なし。家の実勢価格は2000万円程度としましょう。

この場合、保証協会は、あなたのマイホームの謄本を取り寄せて、無担保であることを確認し、さらには路線価や実勢価格まで調べます。そして、かなりの確率でこのようなことを言ってきます。

「自宅を売却して返済に充てることはできませんか?」

「え?できない?では、自宅に根抵当権をつけさせてもらえませんか?」

「それなら長期分割(但し月額10万円~など高め)に応じましょう」  と。

これを拒むのは自由ですが、その場合、結構な確率で「仮差押」をしてきます。裁判所から仮差押決定が送達されてくるのです。

なので、不動産を所有している場合の代位弁済は、いろいろ考えることが多くなります。家を売るか否か?家を守るとしたらその方法は? 毎月の返済額を少しでも安く交渉する方法は? などなど。

【何も持っていない場合】

いよいよ本題の核心に迫ってきます。

保証協会は、収入が著しく少ない場合や、不動産を売却してもう何も残っていない場合などには、かなりやさしい対応をしてくれる傾向があります。

督促状も月1回のハガキ程度になり、電話もほとんどかかって来ず、話し合いも柔軟で、毎月の返済金額も5000円未満も珍しくありません。

さらに言えば、毎月5000円とか3000円の支払いさえもキツいような、言ってみれば非課税世帯や生活保護受給者の生活水準に近くなってきた場合、もっと低くしてくれることも珍しくありません。

毎月1000円とか、落ち着くまで何年か支払いを停めるとか・・・。

そして、このような状態が長く続くと、事実上の「放棄」に至るケースがちらほら出てきます。5年間支払いできない状態が続き、消滅時効で逃げさせてくれたケースも(たまに)あります。

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【放棄のケース】

・会社は休眠状態

・個人保証している社長は、無収入、無資産で、非課税世帯に近い

・これに加えて、難病、高齢などの要素が加わる

逆に言えば、会社がまだ稼働していて、社長もまだ若く、健康で、収入や資産があるような場合は、いくら交渉しても、求償権放棄はほぼ不可能と思われます。

(但し破産や個人再生手続などの法的整理、正規な手続きによる会社の私的整理手続きなどを利用した場合はこの限りではありません)

【その他】

「元本の放棄まで望まない。損害金だけでも無くなってくれればいい」

「代位弁済になった借金を、元の銀行借入のような形に正常化したい」 

とお考えの場合は、それに合った手続きも存在します。

「求償権消滅保証制度」といいます。

これは自力ではできません。中小企業活性化協議会か、認定支援機関の力を借りる必要があります。(私も何件か関与したことがあります)

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image by: Shutterstock.com

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事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。特に倒産寸前の中小企業、零細企業、自営業の自力再生(のサポート)を最も得意としています。著書『震災後に倒産しない法』(サンマーク出版)、『借金なんかで死ぬな!』(朝日新聞出版)、『連帯保証人 なってみたらすごかった でもまだ手はある』(ワニブックスPLUS新書)、『ブラックリストなんて怖くない』(宝島社)、『働けません。』(三五館)ほか多数。1968年東京生。乙女座A型。趣味は自転車、魚釣り等。無類のネコ好き。

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【著者】 吉田猫次郎 【月額】 ¥528/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 10日・20日・30日 発行予定

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