李大統領は2025年6月11日、韓国軍による対北拡声器放送を中断させた。また同月14日には、脱北者団体などが北朝鮮の軍人や住民に向けた情報提供を目的に宣伝ビラを大型風船に括り付けて飛ばす対北ビラ散布について「処罰を指示」(大統領室)し、与党「共に民主党」も「現行法上の違反素地が極めて高い」という見解を示した。
これを受け統一省が対策に乗り出した。拡声器放送中断の翌日、北朝鮮からのいわゆる「騒音放送」が聞こえなくなったが、政府・与党はこれを「平和政策の成果」と評価したが、これは北朝鮮国内に真実を伝え、民主化を促す主要なルーツを自ら放棄すれば、金正恩独裁政権の容認に等しいとの批判を受けるものであった。
また政府・与党は対北ビラ散布について、風船飛ばしに使うヘリウムガスがガス管理法違反に相当するのをはじめ複数の違反行為があると主張しているが、ビラ散布禁止は「憲法で保障された表現の自由と全面衝突する」と韓国紙は伝えた。
また、金正恩総書記の妹、与正氏の要求を受け、当時の文在寅政権が作った「対北ビラ禁止法」も憲法裁判所が違憲判断を下しているのに、李政権はビラ散布に圧力をかけているのである。拡声器放送の中断、ビラ散布への圧力に加え、さらには7月初めには国情院が行ってきたとされる北朝鮮向けのラジオやテレビ放送を停止していたことが分かった。
この放送は半世紀以上にわたって韓国の歌や天気予報、ドラマのダイジェストを流し、韓国の発展ぶりや「自由」「人権と言った言葉を北朝鮮国内に拡散させてきた放送である。脱北者らは、多くの住民が影響を受けたとも証言している。米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」によると、1973年から国情院が運営してきた「希望のこだま」などのラジオ放送は、南北関係に関わらず、これまで一度も止まったことはなかったという。
これに加え、米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカなども、トランプ政権が規模縮小を命じたことを受けて放送を止めており、38ノースは北朝鮮向けラジオ放送が大幅に減ったと指摘した。李在明政権の対北融和政策に対し、金与正朝鮮労働党副部長は2025年7月28日、朝鮮中央通信を通じた談話で、「関心はなく、韓国と向き合うことも、議論する問題もない」と述べ、対話を拒否する立場を鮮明にした。韓国の知人は支援しているビラ散布の団体に、「このような状況だからこそビラ散布は重要だ。宮塚さんも協力を願いする」と言って来た。
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