自維連立は早くも崩壊か？維新・藤田代表「衆院定数の削減不成立なら解散」が“バカな話”でしかない4つの根拠

2025.11.11

吉田松陰のように「狂え」と？

藤田は、連立合意が成って国会が開幕した10月21日の会見で、吉田松陰の「狂愚誠に愛すべし」という言葉を引いて連立協議の場で高市に「狂って下さい」と迫ったという逸話を語った。

この言葉が知られるようになったのは、10年ほど前のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』で松蔭役が「狂愚誠に愛すべし、良才誠に虞るべし。諸君、狂いたまえ」と言ったとかによる。「諸君、狂いたまえ」というのはドラマの台詞で、松陰の言葉ではない。

オリジナルは『松蔭詩集』下巻に「狂愚」と題して「狂愚誠可愛。才良誠可虞。（以下略）」とある。狂愚はまことに愛すべし、才良〔良才すなわち良識人〕はまことに恐るべきものだという意味だが、この書物全体が詩集というより日々の思いつきを記したメモ帳のようなもので、またこの詩は素人の私が見ても不出来で、幕末から明治になると中国語の素養がないが故に韻を踏むことが出来ずにただ漢字を並べただけのものが横行した部類の典型。これを有り難がって人生訓に掲げている松陰信者がいるが、嘆かわしいことだと思う。

松陰は確かに「狂愚」の一面を持つ口先ばかりのテロリストで、水戸藩士が井伊大老を殺ったのなら長州はそのNo.2の間部老中を殺れと叫んだ。本当に殺る気なら人知れず同志を集め密かに計画を進めるだろうに、微罪で逮捕された際に大物ぶって暗殺計画を“自白”して死刑に処せられた。

藤田はこの松陰に学んで、直情径行、「衆院定数の1割削減」の一点に賭けて、容れられなければ連立合意もへったくれもなし、解散・総選挙で全てをガラガラポンで一から出直せばいいじゃないかという捨て身に出ていると言える。

維新がいい加減だと思うのは、今でこそこれが連立の「絶対条件」だが、高市との合意前日までは「副首都構想」と「社会保障改革」が「絶対条件」とされていた。が、なぜそれが簡単に入れ替わったのかの説明はなされていない。それでいながらそこに命を賭けるみたいな話になってきて、聞き苦しい限りである。

自分が狂うのは勝手だが、国民を巻き込んで馬鹿騒ぎを起こすのだけはやめて、大阪に戻るのなら戻る、政界から引きたいのなら静かに去って頂きたい。

（メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年11月10号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です）

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