物価高や生活費の上昇を背景に、トランプ政権への逆風が伝えられるアメリカ。かような状況下で行われる中間選挙は、共和党と民主党の勢力図だけでなく「大統領弾劾」の可能性にも関わる重要な局面となっています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では作家で米国在住の冷泉彰彦さんが、連邦上院の過半数を巡る攻防に焦点を当て、勝敗のカギを握る7州の選挙情勢を分析。さらに各州の世論調査や候補者の動向を比較しつつ、民主党が議席を上積みできる可能性について独自の予測を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:連邦上院過半数の行方(中間選挙直前情勢)
注目はとにかく上院。「アメリカ中間選挙」直前情勢
現時点での連邦上院の議席数は、共和党53に対して民主党が47となっています。この関係が逆転するかどうかが、今回の中間選挙における最大の焦点といえます。連邦下院については多くの調査の結果として、民主党の過半数奪還は揺るがないという情勢のようですから、注目はとにかく上院になります。
もっとも、本当の焦点は選挙後に「大統領弾劾」が進むかどうかであり、その場合は上院の単純過半数では全く足りません。定数100の中で3分の2にああたる67を確保しなくてはならないわけで。これは民主党にとっては不可能です。そうではあるのですが、共和党からは相当数の造反が見込まれると言われており、弾劾の可能性は否定できません。
では上院の共和党議員団の一定数が造反して弾劾に賛成するのなら、上院の選挙結果の細かな部分は意味合いが薄いのかというと、これも違います。まずもって、共和党サイドの造反に期待するとしても、民主党が1議席でも上乗せしていくということは弾劾に関しては、確実に近づくことになります。
更に、今後の人事を考えると上院の過半数は極めて重要です。例えば、1月以降に閣僚交代や、最高裁判事の入れ替えが発生した場合、また、トランプ氏が弾劾もしくは辞任した場合に、ヴァンス政権の副大統領を選任する場合などです。こうした場合には、上院の過半数の同意が必要だからです。
さて、先ほど申し上げたように、上院は現在共和党53対民主党(無所属含む)47で、民主党が多数派を奪うには差し引き4議席の上積みが必要です。副大統領は共和党ですので、50対50ではダメであり、野党の民主党としてはどうしても51議席が必要です。この「プラス4議席」というのが、民主党にとって可能かどうかということを今回は検討して参りたいと思います。
そこで、本稿では、上院の多数派を左右する激戦州として、メイン、ノースカロライナ、ジョージア、ミシガン、オハイオ、テキサス、アラスカの7州を取り上げてみました。この7州の改選議席に関しては、共和党の現有が5議席(メイン、ノースカロライナ、オハイオ、テキサス、アラスカ)、民主党の現有が2議席(ジョージア、ミシガン)です。
大枠としてのストーリーは、民主党側から見て現有(ジョージア、ミシガン)を確保して、残りの5州の中で「1つは落とすが、残りの4は勝つ」ということになります。そうすれば、51対49で過半数に達します。ちなみに、アメリカの大手メディアがしきりに主張しているのは「民主党55議席」という説です。この説が実現するには、今回検討する7州を全て民主党が取り、更に「アイオワ+カンザス+ネブラスカ」を取るシナリオになります。
全体の空気は民主党に追い風だと言われています。イラン戦争などによるガソリン高+灯油高騰、関税による物価高、生活費の上昇でトランプ大統領の支持率は20~40%台に落ち込み、政党支持も民主党が7ポイント前後リードしています。大手のメディアはこうしたムードを基調として報道を続けています。
そうは申し上げても共和党寄りの州では過去に世論調査が民主党を過大評価した例が多く、特に2016年以降はその傾向があります。ですから、以下の考察ではその偏りも加味して考えるようにしています。ちなみに、投票日は11月3日(火)に迫っています。
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