高市政権が強調する「保守」を突き詰めた先に待つ米国の逆鱗
さて、こうした状況を踏まえてタイトルの「新型軍国主義」批判について考えてみたいのだが、日本ではこうした中国の批判を、現実的ではないと、冷笑する専門家が多いこともあってか、日本社会で中国側の批判をまともに受け止めようとする動きはない。
もちろん現在の日本人が戦争を望んでいるとか、戦争をできる国になることを求めていると批判されても、ピンとくる日本人は多くはないだろう。
だが一方で中国の「脅威」が政治家の発言やメディアを通じて強調されてきた結果、少なくとも防衛力の急激な増強にも抵抗のない社会に変わってしまったのは事実だ。
そしてそうした空気を利用しているのが、過去の戦争を反省するどころか肯定的にとらえる言論を繰り返してきた現在の首相なのである。そうであれば中国が、日本の「過去への回帰」を懸念しても不思議ではない。
そもそも中国が日本を批判する際に使う「軍国主義」は、政治体制を定義するためのものではなく、過去の大戦を引き起こした主体を批判するための言葉だ。
だから過去の日本が戻ってくるという意味で「新」とつけられているのだ。
高市首相はかつて「(過去の戦争を)反省などしない」と公言したこともある。
日本の現状は、軍国主義と批判されるような体制とはいえない。しかし加速度的に防衛力重視の考え方に傾いていることも確かだ。
AI(ジェミニ)の回答で恐縮だが、2022年からの防衛費の伸びを並べると、21年から22年が1.1%だったのに対し、翌年からは26.3%、16.5%という驚異的伸びを示している。対GDP比の防衛予算も2%を目標(アメリカからの圧力のためだが)として着実に増えている。
ちなみに日本が批判する中国の国防予算は対GDP比で概ね1.5%程度で推移してきているのだから何をかいわんやである。
さらに問題は、日本の現政権が強調する「保守」が過去の日本の行いを肯定する意味を含んでいて、例えば靖国神社への参拝にこだわるような姿勢を貫いていることだ。
多くの日本人はこれを中国に対抗する政権の意思だと受け止めているようだが、もしこの道を進めば中国からの反発だけでは終わらなくなるという現実は見えていない。
靖国問題などの歴史問題は、突き詰めていけば日本の敗戦にたどりつき、いずれアメリカの逆鱗にも触れる問題だからだ。
事実、靖国神社は、敗戦後の日本に乗り込んできた占領軍が真っ先に問題視し、取り潰そうとしたことで知られている。
また日本が犠牲者数をめぐって中国と対立する南京大虐殺も、元をたどればたどり着くのは極東軍事裁判所だ。この裁判がアメリカ主導で行われてきたことはいまさら述べるまでもない。
つまり今回の米中首脳会談で垣間見えたアメリカの変化は、中国との関係次第で日本の「保守」批判にまで及びかねないという、そんな不都合な事実を日本に突きつけた会談だったと言えるのである。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年9月27日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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