何で今更「敵国条項」など持ち出したのか?
なぜなら、9月22日の国連総会での演説で高市は、敢えて国連憲章53条、107条などの日独伊などに対する「旧敵国条項」規定の削除を「日本の誇りと名誉にかけて強く申し上げておきます」と言い放っていた。その口調の強さはいささか常軌を逸していて、あくまで私の推測にすぎないけれども、外務省や官邸の官僚が首相の演説草稿にここまでの表現を盛り込むとは思えないので、高市の「一人芝居」だったのではないか。
ご存知の通り、United Nationsの和訳は1945年10月23日までは「連合国」で、翌24日からは「国際連合」となった。第2次大戦中は、日独伊はじめその同盟国・従属国だったブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドが「枢軸国」=ファシズム陣営で、それに対する米英仏ソ中をはじめ反ファッショ統一戦線が「連合国」である。後者がそのまま国連に移行したので、当初は日独伊などのファシズム復活への警戒心が強烈で、それら旧敵国が第2次大戦の結果として確定した国境などの事項を覆そうとした場合には加盟国は安保理の決定を待つことなく当該国に軍事的・経済的制裁を課すことができると規定した。その後、日独伊などが主権を回復し国連加盟も達成したことにより、それらの条項はすでに実効性を失い死文化したと見るのが国際常識であり、また日本外務省の見解ともなってきた。
このほとんど忘れられていた問題が蒸し返されるきっかけを作ったのも、実は高市自身で、25年11月7日の例の「台湾有事は日本有事」の国会答弁の後、中国の国際法の専門家である孔慶江=政法大学国際法学院副院長が11月16日付の国内テレビでこう発言した。
「国連憲章の敵国条項は依然、有効である。仮に日本が集団的自衛権によって台湾問題に介入した場合、中国はこれを日本による侵略行為であると解釈し、敵国条項に基づき、安保理の事前承認を経ずに直接的な措置・執行行動をとり得る」
こうした見解は、他の中国語メディアでも繰り返され、在日中国大使館も25年11月21日付のX公式アカウントで敵国条項を引用し、「中国は安保理事会の許可を要することなく、日本に対し直接軍事行動をとる権利を有する」と主張したのである。このような中国側の反応に高市はカチンと来て、今回の国連演説で「正面切って反論してやろう」と思い立ったのに違いない。しかし、これはとんだ藪蛇で、習近平だけでなくトランプまでもが、日本がかつて敵国であったことを思い出してしまったのである。
相も変わらず、自由主義 vs 共産主義の20世紀的価値観でしか世界を捉えられない高市の限界がここにも露呈している。
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