人は何を持って前向きになれるのか? 震災復興の鍵を握る「希望オペレーション」

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このとき、私は『オペレーション希望』を提案しました。

やはり大人たちが『希望』を抱いていないと、復興に向けて歩もうにも元気が出ない。大人が前向きに生きていなければ、子どもたちが明るく育つわけがない。『オペレーション希望』は子供たちの未来を切り開くための取り組みなのです。

巨大地震の惨禍から再生した日本を、より素晴らしい国にしていくのは子どもたちです。厳しい復興途上の生活であろうとも、大人たちが安定した精神状態を保ち、笑顔でいないと、子どもたちも不安になる。それが良い結果につながるわけがありません。『オペレーション希望』は、単なる復興計画を超えた展望のもと、まずは大人が『希望』を失わないようにする5カ年計画として考えました。貧しくとも普通の生活をしてもらえるようにするというわけです。

具体的には、対象は自宅や事業所を失った被災者のすべてとし、5年間にわたって生活費を支給します。最低限度の生活を目標にしているという生活保護の水準を参考に、18歳以上が月額12万円、18歳未満5万円くらいでしょうか。大人ばかり4人家族なら月額48万円になる。これなら、住居が無料や低家賃であれば、生活するだけでなく再起のための活動も少しはできるようになるでしょう。希望を失わないために必要なことは、再起に向けた手がかり、足がかりですから。

そして、仮設住宅より広い間取りの大型集合住宅を建設し、被災地のみなさんには集団移転をしてもらいます。居住地は再起していくための仕事の場所の近くとします。医療、教育、福祉関係については原則5年間無料とします。

仕事に関しては、農業に従事されていた方々には集団農場を整備し、再出発の基盤を作っていただく。漁業は再建された港へ集合住宅から通えるように配慮する。商業は集団農場、漁港、集合住宅などに隣接する商業団地で活動を開始する。職場を失った勤労者については、そういった職場に就職を斡旋するというものです。

そのようにして生活基盤を固め、1~2年をメドに次の段階へと展開していくのです。

大災害直後に政府がやるべきことは、『オペレーション希望』のような、誰もが『希望』を失わずに済む具体的な施策です。

官僚に任せると、キリがないからといって反対するでしょう。しかし、キリがないほどの支出が必要とされるときに無理を言う国民はいません。困ったときに頼りになる政府でなくして、なんであろうかということです。明日は我が身。被災していない国民の多くも賛成するはずです。

被災者が希望を失うことは、日本全体の衰亡を意味しています。いまこそ、このような構想を実現してほしいと思います。

 

『NEWSを疑え!』第378号より一部抜粋

【第378号の目次】
◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
◇◆データが教える沖縄米軍基地
◆地主数と賃借料は…
◆基地経済は続く
◆米海兵隊サイトはアピールする
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
・ウクライナは今後も西側の重荷
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
・「天声人語」も歴史的事実を誤認(西恭之)
◎編集後記
・いまこそ『オペレーション希望』を

著者/小川和久(軍事アナリスト)

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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