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地元の人があまり教えたがらない、沖縄の穴場パワースポット

沖縄を旅行するとき、たまには気分を変えてパワースポット巡りをするのも楽しいですよね。沖縄県宜野湾市には、天女が生んだ子が初代琉球国王になったという「羽衣伝説」が残されています。現在はパワースポットとなっている泉を、写真家の伊波一志さんが訪れました。

森の川(ムイヌカー) 宜野湾市真志喜

みなさんは、羽衣伝説(はごろもでんせつ)ってご存知ですか?きっと耳にしたことはあると思います。

羽衣伝説は日本各地に存在する伝説なのですが、今回ご紹介したいのは沖縄の羽衣伝説ゆかりの地、森の川(もりのかわ、ムイヌカー)です。

森の川

森の川とは、沖縄県宜野湾市真志喜の森川公園内にある湧水。絶えず水が湧き出る清泉で、沖縄県指定名勝です。沖縄の重要な「カー(琉球方言で泉)」のほとんどがそうであるように森の川は拝所(うがんじょ、信仰の対象)でもあります。

拝所外観

まずは、森の川が舞台の羽衣伝説のあらすじを少々。

奥間大親(おくまうふやー)という貧しい農民が、森の川で手足を洗おうとすると、天女が水浴びをしていました。美しい羽衣をとっさに隠し、困っている天女を自宅へ連れて行き世話をします。やがて、一女一男が生まれます。ある日、娘が、「お母さんの羽衣は倉にある」と歌うのを聞いた天女は、羽衣をまとい、泣き叫ぶ夫や子どもを残して天に帰ってしまいます。

沖縄の羽衣伝説は、実は後日談がありまして・・・その内容はというと。

奥間大親と天女の間に生まれた男の子は謝名ムイといいました。成人した謝名ムイは勝連城の王女が婿探しをしていると聞いて、出かけていきます。貧農の謝名ムイでしたが、徳を認められて王女と結婚。謝名ムイの家へ行くと、庭に黄金が転がっているのを王女が見つけます。謝名ムイはこの黄金を大和の鉄と交換し、農具を作って農民に与え、人々の支持を得るようになります。家来も増え、謝名ムイは按司(あじ)となり、やがて首里に城を造って察度王になりました。

現在の首里城 Nancy Kennedy/Shutterstock

この察度王は、琉球において歴史上実在する(確認されている)最初の王。当時の中国と朝貢関係を結び、進貢船を派遣し、中国と正式な国交を開始(1372年)した初めての王として知られています。

ですから、羽衣伝説は舜天王や英祖王同様、時代を革新する英雄は非凡な運命のもとに生まれるという、いわゆる貴種誕生の伝説なのでしょう。

ちなみに、宜野湾市教育委員会が奥間大親の屋敷跡を発掘調査したところ、地域の有力者であったことを裏付ける服飾品や生活用具などの遺物が出土しているそうなので、貧しかったというのは伝説を美化するための表現として理解したほうがいいですね。

森の川が生活用水だったころ

ところで、伝説によると察度の兄弟は、一男一女となっていますが、奥間大親の系図によると長女、天茶添按司加那志(察度の姉)、長男、察度王。察度と姉、二人の母親の名がないとのこと。

本当に察度王の母は天女伝説で伝えられている天女だったりして!!

察度について伝えられている業績を見ていると、察度は朝鮮と親交があった史実があるので、天女伝説は朝鮮からの渡来人の関係者という説もあるようですが、興味がある方は各々調べてみてくださいね。

拝所内観

天女がどういう人物だったのか、謎解きは置いといて、森の川は奥間大親と女性との生活の場であり、察度にとっては幼いとき、母や姉たちと楽しく過ごした幸せな場であったのはまちがいありません。

察度王と姉には異母弟や妹が存在するので、察度王の実母は察度王が幼い時に亡くなったのでしょう。

察度王は少年期の悲しい体験を、母は天女で天国に帰って行ったという、崇高なロマンに昇華させたのかもしれませんね。

現在残っている森の川の石積みと隣の「西森御嶽」の石門は、奥間大親の末裔である向氏(しょううじ)伊江家の人々が1725年に整備したものですが、沖縄戦でも破壊されることなく今でも往時のままの面影を残しています。そして森の川は、今でもコンコンと清水が湧き出しています。

今でも神聖な場所としての静謐な雰囲気を醸し出すパワースポットと行って過言ではありません。

拝所内部から入口を見上げる

あなたも森の川の木陰でたたずんでみませんか。

きっと、察度王のロマンを体感できるはず。

さらには、羽衣伝説の舞台だけに、天女のような女性に出会える縁をいただけるかもしれませんよ。

『森の川』がある森川公園は、那覇空港から約40分程度でアクセスできます(宜野湾市立博物館となり)。一度足を運んでみてください。

 

伊波 一志(いは かずし)
1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

 


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