マネーボイス メニュー

「激安の国」日本に暗雲。平均年収は韓国以下、経済縮小スパイラルで行政サービスが劣化する=田中徹郎

日本の物価は約20年に渡ってほとんど変化していません。その間に諸外国の物価は上がり、日本だけが安い国として置いてきぼりにされています。いま日本の経済は「縮小スパイラル」という泥沼に陥っているのです。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

【関連】日本人は、死ぬまで働く。貯金なし年金なし「高齢労働」社会をどう生き残るか=鈴木傾城

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

21年間、ほとんど日本の物価は変わらない

食料品・交通費・レジャー・旅行と日本の物価はほとんど変化していません。その間に諸外国の物価は上がり、日本だけが安い国として置いてきぼりにされました。

日本経済は「縮小スパイラル」に陥っているのです。

たとえば、今から21年前の2000年、日本とアメリカのそれぞれ以下の価格でマクドナルドの定番メニュー「ビッグマック」が販売されていました。

・日本:294円
・アメリカ:2.51ドル(※編注:当時の為替レートで約266円)

あれから21年が経ちましたが、もしこの間、日本の物価がほとんど動いておらず、アメリカでは年率2%で物価が上がったとすればどうでしょう。

年率2%の上昇とすると、21年間では1.02の21乗で、約1.52倍に価格が上昇します。僕はビッグマックを食べませんが、だいたい傾向としてはこんな感じになっているのではないでしょうか。

(※編注:日米のビックマックの価格差は、現在は以下となっています)
・日本:350円
・アメリカ:5.65ドル(約621円)

※参考:世界のビッグマック価格ランキング – 世界経済のネタ帳(2021年7月27日配信)

つまり、日本ではほぼ21年前の価格のまま、アメリカでは2倍以上に値上がりです。だとすれば、これは日本に住んで生活する私たちにとって、悪い話ではありません。

なぜならビッグマックは私たちが日々消費するモノやコトの値段を象徴しており、私たちはそれだけ低コストで生活できるからです。

実際に食料品・交通費・旅行・レジャー・100円ショップで売っているものの値段など、国内で消費するモノやコトの価格は、この20年というものほとんど変わっていません。

日本は外国人にとって「物価が安い国」

思い起こせば、僕がまだ若かった1980年代から1990年代にかけて、日本を訪れる外国人の最大の不満は物価高でした。

当時、僕は神戸で大学生やサラリーマンをやっていましたが、街でよくケチケチ外国人に出会ったものです。そのせいか、外国人といえばケチというイメージが抜けるまで、ずいぶんと長い年月がかかりました。

それが、いまではどうでしょう。東京ディズニーランドの入場料は世界で最も安くなり。ワンコインでそこそこ旨いランチが食べられる唯一の先進国といわれています。

北海道のスキー・リゾートは外国人に買われてしまい、(コロナ禍以前は)銀座の中央通りが中国人に占拠され、今や完全に立場が逆転。

日本を訪れる外国人から見れば、日本はすっかり「物価が安い国」になってしまいました。

Next: 縮小スパイラルに陥った日本。平均年収はこの20年で3位→23位に転落



日本経済は「縮小スパイラル」に陥っている

日本で住んでいる限り、物価安は喜ばしいことではありますが、本当にこんなことでいいのかと不安になります。

モノやコトが安いから、企業の利益が少ない。
  ↓
会社が儲からないから、社員の給料が増えない。
  ↓
給料が増えないから、消費が増えない。
  ↓
消費が増えないから、会社はがんばって安売りする。
  ↓
モノやコトが安いから、企業の利益が少ない。

このループは、「日本経済の縮小スパイラル」といってよいのではないでしょうか。

平均年収はこの20年で世界3位→23位に転落

OECDの調べによると、2000年時点で日本人の平均年収は世界で3番目でしたが、昨年時点では23位まで下がっています。

この間、お隣の韓国は逆に23位から21位まで順位を上げています。このままいけば、数年のうちに逆転されてしまうでしょう(※円換算した金額で比較しています)。

「韓国に抜かれても、中国やインドネシアの富裕層に抜かれても、いったいどこに問題があるのか。私たちは物価が安い日本で幸せに生きているじゃないか」。こう言われれば、確かにそのような面もあると思います。

しかし、もしこの傾向が向こう10年・20年と続くと、日本はどうなるのでしょうか。

税収がなくなり、行政サービスが低下する日本の未来

もっとも心配なのは「税収」です。

日本の会社は海外でも営業活動をしていますので、ある程度の業績拡大は可能だと思いますが、それでも運輸・レジャー・小売りなど内需で稼ぐ会社もたくさんあります。

今の財政の規模を維持していくために、法人税率を上げたり、所得税・消費税率を上げるという手はありますが、やり過ぎると法人の海外逃避を誘発しますし、消費税もせいぜい20%が限界です。

相続税の引き上げという手もありますが、そもそも相続税の税収は税収全体の4%ほどしかありません。

これ以上、財政赤字を増やさないためには、歳出を抑えるしかありません。しかし、それは行政が提供するサービスの低下を意味します。

その結果、大きくなりすぎたインフラの規模縮小、年金や社会保障の水準の抑制、公的教育の質の低下、などを受け入れざるを得ないでしょう。

受け入れないなら、財政の崩壊です。

経済がスパイラル的に縮小するということは、このようなことではないかと思いますし、私たちはこの問題をもっと深刻に受け止める必要があると思います。

【関連】ビットコイン急落で韓国の若者らが借金地獄に。無謀な投機の裏に損失回避バイアス=栫井駿介

【関連】副業の勝ち組は「節税」で儲ける。サラリーマンの特権をフル活用する3つの方法=俣野成敏

【関連】中国の“支配ツール”デジタル人民元が国際通貨になる日。北京五輪で本格始動、世界経済が監視下に=高島康司

image by:Meeh / Shutterstock.com

一緒に歩もう!小富豪への道』(2021年7月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

一緒に歩もう!小富豪への道

[無料 毎週火曜日+号外あり]
富裕層むけ、富裕層入りを目指す方むけの究極の資産防衛メルマガ!一国だけに資産を集めておくのは危険な時代がやってきました。海外ヘッジファンド、貴金属、不動産からアンティーク・コインまで、金融不安に負けない世界分散ポートフォリオを、経験豊富なファイナンシャル・プランナーが誠意をもってご案内します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。