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中国の“支配ツール”デジタル人民元が国際通貨になる日。北京五輪で本格始動、世界経済が監視下に=高島康司

日本がコロナ対策と五輪で手一杯のなか、世界では、米国の覇権後退を含む地政学的な配置転換が本格的に起こっている。その1つが中国による「デジタル人民元」の導入だ。国際決済通貨として力を持てば、中国当局の世界経済“支配ツール”として機能する。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

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日本の外が見えなくなっている

一層進む人民元の準備通貨として拡大と、「デジタル人民元」の本格導入に向けての動きについて解説したい。

日本国内では、コントロール不能となった新型コロナウイルス蔓延の報道と、オリンピックの中継とが重なり、本来最大限の危機感で対応しなければならない状況でお祭り騒ぎをやっているという、超現実的な状況になっている。

ネットでは「おめでとう!日本菌メダル!」などというブラックジョークも広がる始末だ。

これはアルベール・カミュが1947年に発表した小説、「ペスト」の一場面を思い起こさせる光景だ。これは、北アフリカのアルジェリアにある町にペストが流行した話である。ペストの流行で相当数の住民が死んで行くなか、街の老人たちはいつものようにカフェに集まり、ゲームなどに興じながら談笑している。彼らはペストがもたらしている現実をなかったことのように扱い、いつもの変わりない日常を生きることを選んだ。

これを読むと、いまの日本を見るような思いがする。大きな危機に直面しながらも、それがなかったことのようにふるまい、政府の提供したお祭り騒ぎに興じているかのようなような感じだ。

そのような状況なので、日本の外で起こっていることには目が向きにくくなっている。いま世界では、アメリカの覇権後退を含む地政学的な配置転換が本格的に起こっているが、そうした動きが日本で詳しく報じられることはめったにない。

人民元の動き

いま起こっている地政学的な転換を象徴するのが、人民元の動きである。周知のように新型コロナウイルスのパンデミックをいち早く押さえ込みV字回復を果たした中国だが、最近では景気回復は鈍化しつつある。

だが、人民元が将来「国際決済通貨」となる動きは、むしろ加速しているようだ。もちろん人民元が基軸通貨としてのドルの位置をすぐに奪うわけではないものの、人民元決裁圏が将来現れる準備は、確実になされているようだ。これを示唆する報告書がいくつか発表されている。

まず、「OMFIF(Official Monetary and Financial Institutions Forum)」という金融政策シンクタンクの調査だ。「OMFIF」は世界の中央銀行の動向を綿密に調査し、金融政策の方向性を分析する著名なシンクタンクだ。この調査では、世界の中央銀行の30%が今後1年から2年の間に保有する人民元の割合を増やすとしている。これは、昨年の10%から大幅な増加だ。

また、中央銀行、政府系ファンド、公的年金基金の関係者100人を対象とした調査では、人民元の保有率の上昇に合わせて、中央銀行はドルの保有を18%、ユーロの保有を16%削減する計画であることが分かった。

これは、各国の中央銀行が中国経済の高い成長率に注目し、将来的に人民元が決済通貨として使われるケースが増えると見ているからだ。

人民元に軸足を移す傾向は、世界的な金融サービス業界の業界団体である「国際金融協会(IIF)」の調査でも裏付けられている。先週、「IIF」は、第1四半期の中国債券への海外からの資金流入のうち、海外の中央銀行が占める割合が60%と、前年同期の33%から大幅に増加したという調査結果を発表した。中国の債権は人民元建てで販売されている。これを買うために中央銀行は、人民元の準備金を増やさなければならない。

このような動きを受けて、「ゴールドマン・サックス」は、今後5年間で世界の外貨準備高に占める人民元の割合は7%にまで上昇するとしている。これは、2030年までに人民元が、ドル、ユーロと並ぶ国際決済通貨のトップ3になるというシティグループの調査結果と一致している。

おそらく一帯一路の参加国を中心にしてだろうが、国際決済の主要な基軸通貨として人民元が使われる人民元決裁圏が、遅くとも2030年までには出現する可能性は非常に高い。もっと早まり、2025年くらいには実現するとの観測もある。

Next: 「デジタル人民元」2022年2月の冬季オリンピックで本格デビューへ

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