マネーボイス メニュー

戻りが弱い日本株、欠陥指標「日経平均」に頼る投資家たちが元凶に。夏の大荒れ相場に要警戒=江守哲

日本株は何度も上値を試しているが、なかなか戻らない。戻り切れなければ、夏場の軟調相場に入る可能性もある。日経平均株価の寄与度の高いファーストリテイリングとソフトバンクグループのポジションがとにかく解消されないと、次の展開はないのだろう。このような日本株の「構造問題」は、株価の上昇を抑制する。残念ながら、多くの投資家やメディアが日経平均株価を基準にしている。この構図が変わらないのであれば、日経平均株価そのものをまともな指数に組み替えなければ、いつまでたっても日本株は上昇しないとの見方になるだろう。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2021年8月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリファンドマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

日本株の「構造問題」が上昇抑制

日本株は何度も上値を試しているが、なかなか戻らない。戻り切れなければ、夏場の軟調相場に入る可能性もある。

また、当メルマガでは繰り返しお伝えしているが、信用期日が問題になる。8月は鬼門になるだろう。

日経平均株価の寄与度の高いファーストリテイリングとソフトバンクグループのポジションがとにかく解消されないと、次の展開はないのだろう。

このような日本株の「構造問題」は、株価の上昇を抑制する。

日本経済新聞社は、早く自身の指数構成の問題を公に認め、できる限り継続性を担保できる形で構成を大きく変えるべきである。残念ながら、多くの投資家やメディアが日経平均株価を基準にしている。

この構図が変わらないのであれば、日経平均株価そのものをまともな指数に組み替えなければ、いつまでたっても日本株は上昇しないとの見方になるだろう。

いまがまさに、プライドを捨てるときであろう。

8月は大荒れ相場か

30日時点の騰落レシオはまだ割安感はない。空売り比率も高すぎる水準ではない。これらから、株価の一段安の可能性は日的でない。8月に入るが、2日新甫(月曜日から始まる月は荒れるというアノマリー)である。荒れるとの定説があるが、実際にどうなるだろうか。

いずれにしても、8月は海外市場が荒れるときがある。そうなると、日本株も逃れることができないだろう。中国株も依然として不安定であり、これもグローバル株式の不安材料である。

短期トレードが吉

日本株の考え方だが、基本は短期トレード戦略である。

日経平均株価は長期投資に向かない指数である。どうしても日本株に投資したい場合には、TOPIXまたは個別株勝負であろう。

長期投資の場合には、全体の資産に対して最大10%までとし、基本的に現物あるいはETFを利用して「TOPIX連動」の資産を買い下がるのがよいだろう。毎日あるいは毎月の積立投資も組み合わせるとよいだろう。日本株はグローバル投資では主軸ではなく、あくまで全体のうちの1つである。

ちなみに、現在の市場全体の信用倍率は5倍を超え、評価損率もまだ10%以下である。これが調整されないと、ポジション需給面から相場の上昇は見込みづらい。

ソフトバンクグループは収益確保に奔走しているようだが、それだけ中国に依存しているということになる。いまの状況で中国異存はきわめて危険である。このような銘柄を扱うのであれば、ほかに良い投資先は数多くある。

好みで選ぶのではなく、実態や将来性、さらに企業収益の安定性で選択すべきであろう。海外にはいくらでも素晴らしい投資先がある。そこに目を向けたほうがよい。

Next: 日本株の独自材料「信用期日」が上値を抑える?今後の投資戦略



信用期日とソフトバンクグループ

日経平均株価は2万7,500円が重要だが、この水準を維持できるかは不透明である。

一方で、日本株独自の材料がある。それは、ここ数日繰り返し指摘している、信用取引の期日到来である。期日が到来する1〜2カ月前に損切りの売りが多くなる傾向がある。これが上値を抑える可能性が高い。高値期日から判断すると、7月下旬から8月上旬にかけて需給面が一番厳しくなるだろう。

日経平均を見ていくうえで、やはりソフトバンクグループ(SBG)の株価動向からは目が離せない。同社株は連日の年初来安値更新となっている。中国当局の規制強化の動きが引き続き警戒されており、8カ月ぶりの安値水準で推移している。規制強化の動きは、将来の投資先企業の上場などに対する不安につながる。中長期的なテーマになる可能性があり、株価の重石になりやすい。これに逆らうと必ず失敗する。つまり、SBGは政治との戦いをしていることになる。

ビジネス上の競争ではなく、政治や規制との戦いでは勝つ見込みはない。今後、SBGの成長性はどうなるのか。日経平均株価の方向性を見るうえで、きわめて重要なポイントになる。

もっとも、1つの銘柄で日経平均株価の方向性が決まるということの方が大きな問題である。いまだに日本経済新聞社がこれを見直さないことに驚くしかないのだが、プライドがあるのだろう。もっとも、いまの状態の方が市場は操作しやすいため、海外勢にとってはむしろ歓迎すべき状況であろう。

夏後半から秋にかけて修正高に向かう可能性

いずれにしても、高値期日を通過し、これら仮需の整理が進むことが相場反転の最低条件になりそうである。最近の下げで、ポジション整理がどの程度進んでいるのか、最新のデータでも確認したい。整理が進んだ結果、需給が改善されれば夏後半から秋にかけて修正高に向かう可能性はある。

無論、そのためには企業業績の上方修正と海外勢の買い、さらに米国株の上昇がセットにならないと難しいだろう。今年の夏場の相場展開に注目しておく。

いずれにしても、今後は今年の2-3月の株高時に高値を付けた銘柄の信用取引期日が8月から9月にかけて到来する。これが上値を抑える可能性がある。ソフトバンクグループ(SBG)やファーストリテイリングなど指数寄与度が大きい銘柄が含まれており、日本株の上値を押さえる需給要因として警戒しておく必要がある。

今年の年初来高値は、日経平均が2月16日の3万714円、TOPIXは3月19日の2,013.71ポイントである。

その後は下落トレンドに入り、それぞれ高値から10%安、5%安となっている。この時期に年初来高値を付けた銘柄は多い。2〜3月は東証1部の売買代金が3兆円前後で推移した日も多く、その後の下落によって高値圏で取り残された信用取引の買い建て玉は少なくないと推定されている。

信用取引を利用した売買は、決められた期限内に反対売買をする必要がある。無期限の信用取引もあるが、多くの投資家は返済期限が6カ月の制度信用取引を利用している。

したがって、高値を形成した場合、高値を付けた日から6カ月後の信用期日が「高値期日」として意識される。一般的に、期日が到来する1〜2カ月前に「やれやれ売り」や「見切り売り」が多くなる傾向があることから、今回は「高値期日から判断すると、7月下旬から8月上旬にかけて需給面が一番厳しくなるとの見方が多い。株価下落局面で逆張りをねらった信用取引の買いが増え、買い残が売り残を大幅に上回る状態となっている銘柄も多い。

SBGは年初来高値を形成した週には884万株だった信用買い残が直近では1,793万株まで倍増している。信用倍率は2.82倍から13.40倍に悪化した。ファーストリテイリングも26万株から58万株に増加している。

この2銘柄は指数のみならず、市場全体のセンチメントに及ぼす影響が大きいため、両銘柄の上値が重くなれば日本株全体にも悪影響を与えかねないといえる。

ただし、信用高値期日を通過し、これら仮需の整理が進むと相場が上昇に転じるケースが多い。期日を控えて前倒しで反対売買が進んだ場合は「期日向かい」と呼ばれる戻り相場となることもある。

このため、市場では日本株は過小評価されているとの見方が強まると、需給が改善されれば夏後半から秋にかけて修正高に向かう局面が訪れる可能性もあるとの指摘も聞かれる。

今回はどのような展開になるか、要注目である。

Next: 【国内経済指標】時計など高額商品が好調、百貨店売上は減少へ



【国内経済指標】時計など高額商品が好調、百貨店売上は減少へ

日本百貨店協会が26日発表した6月の全国百貨店売上高は、総額3,715億円だった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で、土日休業や時短営業を余儀なくされた店が多く、既存店ベースの伸び率は前年同月比1.6%減と4カ月ぶりに減少した。

6月下旬の宣言解除で客足は回復傾向に転じたが、前年同月の実績に届かなかった。コロナ流行前の2019年6月との比較では20.6%減と、依然として厳しい状況にある。

商品別の売上高は、衣料品が4カ月ぶりに減少。前年は夏のセールを月初から実施していたのに対し、今年は宣言解除後に遅らせたケースが多かったことが響いた。

一方、株高の影響で時計など高額商品は好調。総菜や菓子、酒類も巣ごもり需要で堅調だった。今年上半期(1-6月)の伸び率は、前年同期比10.3%増。19年上半期との比較では27.3%減だった。

国際通貨基金(IMF)の主席エコノミストは27日、新型コロナウイルス対策で規模が縮小された東京五輪に関し、2021年の日本経済に影響する「大きな要因になるとは考えていない」と明言した。ゴピナート氏は世界経済見通しの改定に合わせた記者会見で、日本の五輪関係投資は「大半がすでに行われ、過去のGDPに作用した」と説明。五輪会場の多くが無観客となることへの経済的な影響は極めて小さいとした。

一方で、コロナ感染拡大が収まらず、東京都などを対象に発令された4回目の緊急事態の影響は経済見通しに考慮していないと指摘。「成長が今回の見通しを下回る恐れがある」とした。IMFは今回の見通し改定で、日本の21年の成長率を4月時点の3.3%から2.8%に下方修正した。

5月の景気動向指数CI(コンポジット・インデックス)の一致指数の改定値は、前月値から3.2ポイント低下の92.1だった。速報値(92.7)から下方修正となった。先行指数の改定値は前月値から1.2ポイント低下の102.6で、速報値(102.6)と同水準だった。CI一致指数を踏まえた基調判断は速報の「改善を示している」で据え置いた。

自動車大手8社が発表した2021年上半期(1-6月)の国内生産台数の合計は、前年同期比16.0%増の399万台だった。前年同期に新型コロナウイルス禍を受け大規模な工場の操業停止が相次ぎ、生産が落ち込んだ影響でプラスとなった。ただし、世界的な半導体不足などで各社とも減産を強いられ、コロナ前の19年上半期(約470万台)には及ばず、回復のペースは鈍い。

国内生産は、8社中7社がプラス。14.3%減と唯一マイナスだったホンダは、5月に鈴鹿製作所の稼働を5日間停止するなど、半導体不足による相次ぐ生産調整が響いた。最近は各社ともコロナ感染再拡大による東南アジアからの部品供給難も目立ち、引き続き状況を注視する必要があるなどと慎重な見方が多い。海外生産の合計は38.1%増の830万台で、国内外を合わせた世界生産は30.0%増の1229万台だった。

同時に発表した6月の国内生産台数は、8社合計で前年同月比41.4%増の69万台だった。 一方、トヨタが29日発表したグループ全体(ダイハツ工業、日野自動車を含む)の上半期世界販売台数は過去最多の546万台。フォルクスワーゲンの497万台を上回り、上半期として2年連続の首位が確実となった。

6月の有効求人倍率は、前月比0.04ポイント上昇の1.13倍だった。3カ月ぶりのプラスとなった。有効求人数は横ばいだったが、有効求職者数が3.6%減少したことから、微増となった。新型コロナウイルスのワクチン接種を終えてから求職活動をしようとする動きがあるとみられる。6月の完全失業率は前月比0.1ポイント低下の2.9%と、3カ月ぶりに改善。有効求人倍率は、ハローワークに申し込んだ求職者1人当たりの求人数。景気の先行指標とされる新規求人数は4.9%のプラスとなった。

6月の鉱工業生産指数速報値(2015年=100)は99.3となり、前月比6.2%上昇した。上昇は2カ月ぶり。世界的な半導体不足に伴う減産で前月に大きく落ち込んだ自動車が急回復し、全体の指数を押し上げた。コロナ拡大前の2020年1月の99.1を上回るのは、今年4月に続いて2度目。生産の基調判断は「持ち直している」に据え置いた。

生産は、全15業種中11業種で増えた。自動車が22.6%上昇と大きく改善。普通自動車を中心に持ち直した。生産用機械も海外向けの半導体製造装置などが増加し、8.9%のプラスだった。出荷は12業種で増え、全体で4.3%のプラス。在庫は7業種で増加し、全体では2.3%上昇した。

生産予測は7月が1.1%の低下、8月は1.7%の上昇を見込んだ。ただし、経産省は「足元のコロナ拡大による経済への影響や半導体不足が反映されていない可能性があり、注意が必要」と指摘した。4-6月期の生産は1.0%上昇し、4四半期連続で増加した。

6月の新設住宅着工戸数は、前年同月比7.3%増の7万6312戸だった。4カ月連続のプラス。新型コロナウイルス感染拡大で下落した前年の反動などで、持ち家や貸家が押し上げた。 持ち家は10.6%増の2万6151戸。住宅展示場への来場者数などが戻ってきているという。貸家は11.8%増の2万9802戸。マンションなどの分譲住宅は1.5%減の1万9877戸。足元の感染急拡大による影響について、国交省は「見通しが不透明となっており、市場動向を見守る必要がある」としている。

続きはご購読ください。初月無料です

米国市場動向~FRBの株価下支え策が奏功か

欧州・中国市場~ユーロ圏の金利低迷が継続、中国は株安が止まるかを注視

日本株はやはり弱い展開

為替市場~ドル円はレンジ相場を抜け出すか

コモディティ市場~金は反発、銅は膠着状態、原油は堅調に推移

今週の「ポジショントーク」~8月相場をどう対処するか

ベースボール・パーク~「五輪をテレビ観戦」

※これらの項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →いますぐ初月無料購読!

2021年8月配信分
  • 「膠着相場の次の展開を探る」Part3(8/2)
  • 「膠着相場の次の展開を探る」Part2(8/2)
  • 「膠着相場の次の展開を探る」Part1(8/2)

いますぐ初月無料購読!


本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2021年8月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場日本株、為替原油ほか各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

【関連】LINE・ヤフー統合は日本復活の起爆剤。孫正義の打倒GAFAに現実味、鍵を握る4分野とは=馬渕磨理子

【関連】テスラが家庭の電気代を半額に?蓄電池パワーウォールの革新的ビジネスモデル=中島聡

【関連】ビットコインは年内1000万円も。昨年末時点で500万円到達を言い当てた専門家の展望。3つの急落材料とDeFi・NFTの最新動向も解説=大平

image by:yoshi0511 / Shutterstock.com

江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2021年8月2日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

[月額3,300円(税込) 毎週月曜日(祝祭日・年末年始を除く) ]
株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。