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秋冬もドル買いトレンド継続【フィスコ・コラム】

ドル・円の方向感の乏しい値動きが目立っています。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め方針を受けて上昇に向かうかと思いきや、その後の慎重姿勢でドル買いは一服。ただ、世界的な緩和長期化で、秋以降もドルは下げづらい展開が見込まれます。

足元のドル・円はFRBの金融政策を巡る思惑に振らされる値動きです。7月27-28日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)は、新型コロナウイルス・デルタ株が成長の腰折れリスクとする半面、雇用情勢の改善とインフレ高進により金融政策の支援を弱めるタイミングが近づいていると指摘しています。ただ、パウエルFRB議長は緩和策を縮小する状況へ達するまで時間を要するとの見立てです。

その直後に発表された米4-6月期国内総生産(GDP)は前期比年率+6.8%となりました。水準としては高い方ですが、市場予想が+8.6%だったことから減速感が目立ち、パウエル議長の発言を裏付けるような内容でした。7月以降の経済指標は強弱まちまちながら、サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数やミシガン大学消費者態度指数、耐久財受注など重要指標は予想を下回るケースが目立っています。

テキサスやフロリダなどで新型コロナ感染が再拡大するなか正常化期待は遠のく場面もあり、長期金利の低下でドル売り基調に振れやすい展開が続いています。半面、8月6日発表の7月雇用統計は非農業部門雇用者数が予想以上に増加したほか、失業率はコロナ禍後の最低レベルに低下し、雇用の力強い回復を示しています。そうした状況下でドル・円はなおトレンドを形成できず、先行きは不透明です。

直近の取引では、雇用統計や高水準のインフレ指標を受け、FRBの資産買い入れの段階的縮小(テーパリング)への思惑がドル買いの要因です。FRBは6月のFOMCで引き締めに舵を切ったことに変わりなく、8月26-28日に米ワイオミング州で開催されるジャクソンホール会合でテーパリング開始に言及すると期待されます。そのため、ドル・円は心理的節目である110円の水準を維持していると言えそうです。

FRBのタカ派転換の後、他の主要中央銀行もそれに追随するとみられましたが、現時点で政策金利の引き上げを明らかにしているのはNZ準備銀行とカナダ銀行ぐらいにとどまっています。豪準備銀行は2024年まで政策金利を据え置く方針を崩しておらず、欧州中銀(ECB)もパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を維持。英中銀も緩和長期化の方向で、そうした状況もドル売りを弱める要因となりそうです。

ジャクソンホール会合で想定どおりのシナリオにならなくても、FRBによるテーパリングは来年1月からの開始が市場コンセンサス。それに向け今年12月開催のFOMCで開始が通告される見通しで、絶好調のNY株式市場も時間をかけて織り込んでいくことでしょう。米金利の持ち直しのペースが緩慢であれば、株高による円売りがドルを引き続き支えるとみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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