街を歩くと物価上昇を実感できます。消費者物価指数を見ると、原料高騰が反映されて財(モノ)の価格が上がり、サービス(人)の価格は下がっています。これが日本型インフレの特徴なのでしょう。(『徒然なる古今東西』高梨彰)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
近所のラーメン屋も12月から値上がり
街のインフレを実感しています。
日曜日、朝ランニングのゴールである新国立競技場の近くの「ホープ軒」にて朝ラーメン。
自販機をみると「ラーメン850円」。そばに「12月1日から50円値上げ」とあります。ホープ軒といえば、かつては「ラーメンはタクシーの初乗り運賃」とメディアに話していたものです。
しかし、東京のタクシー初乗りは2017年に730円(上限)から410円へと下がります。代わりに加算運賃が随時上乗せ。タクシー料金自体は距離によって変わっただけですが、ホープ軒の基準は揺らぎます。ラーメンを410円にすることはできません。
でも、かえって値上げを気にしなくなったのかもしれません。錦の御旗「ラーメン=タクシー初乗り」が不可抗力により無効となれば、価格の基準も変わります。
確か当時はラーメン1杯700円前後だったかと思いますが、タクシーを気にせず今回も値上げです。
1階がカウンター、立ち食いラーメンなのでタクシー運転手が寄っていくにはちょうどよい店です。新国立競技場周辺は何処となく「ちょっと路上駐車」が許されがちな雰囲気もあります。ホープ軒がタクシー初乗りを基準としていたのも納得です。
それでも値上げ。物価上昇圧力を実感せざるを得ません。
財(モノ)は値上がり、サービスは値下がり
日本のCPI(消費者物価指数:Consumer Price Index)をみると、直近10月分は前年比+0.1%。今年は1-8月がすべて前年比マイナスで、これだけ見れば「デフレ」です。
しかし、財(モノ)とサービス価格をみると、明らかな違いがあります。財は上昇、サービスは下落です。
財価格指数は年初こそマイナスでしたが、10月は前年比+1.9%。9月も+1.8%でした。ちゃんと世界的な物価上昇の波を統計は示しています。
一方、運賃や授業料など人が関係するサービス価格はマイナスが続きます。10月は前年比-1.8%。4月以降、ずっと1%超のマイナスです。
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サービス価格が下がり「人」が割を食う社会
結局「人」が割を食っていることになります。サービス価格が下がっているということは、賃金だって下がりがちでしょうし。
また、「財+1.9%・サービス-1.8%」と妙にプラスマイナスのバランスが取れているところが気持ち悪いです。いつまで経っても、新たな世界が見られないというか。
日銀にしてみれば、「超低金利政策を変更する必要はない」と言うだけです。言い換えれば、金融政策が日本経済の起爆剤となる可能性も低いとも。
モノの価格ばかりが上がるこの現象、今しばらく続きそうです。ラーメン1,000円なんて嫌なんですけど。
今回のまとめ
・街のラーメン価格が12月に値上がりしている
・CPIが示すとおり、財(モノ)価格ばかり上昇しています
・サービス価格の低さが日本経済停滞の象徴にも見える
『徒然なる古今東西』(2021年12月6日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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