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アメリカの戦略転換と「第2次麻生太郎内閣」誕生の真実味=斎藤満

最近の米国には無視できない大きな変化が随所に見られます。米国が変われば、これに盲従する日本の在り方も当然変わらざるを得ません。一体米国に何が起きているのでしょうか。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

CFR(外交問題評議会)が台頭するアメリカの世界戦略を読み解く

変わる米国の勢力図

これまでの米国に慣れてきたものには、おや?と思える動きが続いています。

まずは、石油王と言われたロックフェラー・グループが、石油などの化石燃料から手を引き、傘下の石油会社エクソンの株を全部売る、と言い出したことです。彼らは新エネルギーに転換するようですが、ロックフェラーが手を引くと原油価格はどうなるのか、など様々な疑問が沸きます。

次に、今年の米大統領選挙は、ネオコン主導ヒラリー・クリントン氏で決まり、と見られていたのが、民主党内では民主社会主義者を自認するバーニー・サンダース氏がまさかの健闘をみせ、一時クリントン候補を脅かしました。逆転は無理としても、クリントン氏の政策にも少なからず影響を及ぼしています。

同様に「泡沫候補」と言われ、本人も大統領になる気はないと言っていたトランプ氏が、他の候補を圧倒し、共和党の指名を獲得しそうなことです。

【関連】「クリントン相手ならトランプが勝つ」アメリカ大統領選 票読みの結論=子貢

彼は私財を投じて選挙キャンペーンをビジネスとしてやるのかと思いきや、実際には選挙資金はあまり使わず、むしろゴールドマン・サックスやCFR(外交問題評議会)のサポートでのし上がりました。

結局、ネオコンのクリントン対CFRのトランプの対決という形になり、当初のネオコン・クリントン陣営の圧勝というシナリオが崩れ、最終結果はわからなくなりました。

CFR主導なら6月以降も利上げ困難に

そしてこのトランプ候補が、金融政策に関し、イエレン議長を交代させ、低金利での景気支援を続けさせるといいます。そしてFRBはここまで追加利上げを見送る羽目となっています。

FRBが利上げを見送った理由は、昨年暮れの利上げ以来、世界の金融市場が不安定になり、それが米国経済にも影響しかねないとの批判が高まったこと、原油価格下落により、米国のシェール企業も含めたエネルギー関連の債務借り換え不安などがあり、これらが一段落すればまた利上げ再開とみられています。

しかし、CFRの意向となると6月以降も利上げは困難になります。

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アメリカ外交の強硬路線にも変化~ロシア、中国、北方領土問題

外交面でも、従来のネオコン主導の強硬路線に変化が見られます。

ウクライナやシリア問題ではロシア攻めから協調路線に変更し、イランとの核協議もCFR主導で進みました。対中国でも、これまでのあからさまな反中国路線から、少なくとも李首相とは手を組む形が見え、対話型に緩和しています。

そしてCFRのケリー国務長官が、日本の岸田外相と広島の原爆記念碑を訪問、献花しました。そればかりか、原爆投下国米国の大統領としては初の、オバマ大統領の広島訪問への道筋を付けました。岸田外相の裁量で進められたはずはなく、安倍、菅両名は苦虫を噛み潰したような反応と聞いています。

この裏では、明らかにCFRが動いたとしか思えません。

そればかりか、日ロ外交にも米国の柔軟な姿勢が見えます。これまで何度も日ロ首脳会談のもとで北方領土問題が進展しかけたのですが、その都度米国から横やりが入り、まとまるものもまとまりませんでした。

それがこの連休に、安倍総理がロシアのソチを訪れ、プーチン大統領と会談、経済連携から領土問題、平和条約への道筋をつけようとしています。

これを従来の米国なら黙って見逃すことはありません。現に今回も、オバマ大統領からは、サミット前の訪ロは控えるように、圧力がかかっていました。しかし、実際にはこれを押し切ってロシア訪問となりました。

ここにも明らかにこれまでとは違う米国があります。つまり、米国のリーダーシップがネオコンからCFRへとシフトした可能性が伺えます。

これは米国べったりの日本政府に、大きな問題を投げかけます。ある意味では外交を広げるチャンスでもありますが、やり方を間違えると、米国からの支援を失い、政権自体が揺らぐ可能性を秘めています。

Next: かつて「安倍おろし」に動いたCFR、麻生総理再登板の可能性も



かつて「安倍おろし」に動いたCFR、麻生総理再登板の可能性も

特に、トランプ大統領となれば、日米安保の見直し沖縄基地問題日本の核問題など、突然多くの宿題を突き付けられます。

もちろん、うまくやれば、ロシアとの経済協力と北方領土問題の進展、日中関係の改善で多極化外交の道も開けますが、CFRはかつて安倍おろしに動いた経緯があります。下手をすれば、安倍政権の存立基盤が失われることになり、アベノミクス相場は大転換となります。

米国財務省の為替報告書によれば、日本まで為替監視国の一つに入れられ、円高でも介入ができないなど、手足が縛られました。これはネオコンの「お友達」に頼んでもらちが明かない問題です。

米国でのCFRの台頭が一時的なものか、トレンドとなるのかによって、世界経済も日本の外交、経済戦略も大きく変わってきます。

日本としては、その辺の情報収集を怠らず、合わせて米国の体制変化に対応できるよう、柔軟かつ早急な準備が必要になります。因みに、CFRは「麻生総理」をより好ましく見ている可能性があります。

【関連】「パナマ文書」が政局の火種に 7月参院選を前に国民世論はどう動く=斎藤満

マンさんの経済あらかると』(2016年5月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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