拡大し続ける貧富の差は、日本はもちろん世界的な問題となっています。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者、北野幸伯さんによると「世界の貧しい36億人分の資産と、トップの金持ち62人の資産はほぼ等しい」のだそうです。なぜここまでの貧富の差が世界には存在しているのでしょうか? そこには驚くべき米国FRBの構造が関係しているようです。
世界の支配者は誰?
今日は、「この世の支配者は誰?」を考えてみましょう。
ところで、皆さんの会社の支配者は誰ですか? そう、普通は、社長さんだったり、会長さんだったりですね(株主もいますが)。社長さん、会長さんは、一番金があり、地位も高い。そして、他の人の給料を上げたり下げたりすることもできる。誰かがさぼっていても、さぼっていなくても、首にすることもできる。まさに、「会社の支配者」です。
こういう見方をもっと広げてみましょう。
皆さん、アメリカで数年前、「俺たちは99%だ!」という大規模な運動が起こったことを覚えておられるでしょう。意味は、「アメリカ人の1%はますます豊かになり、99%はますます貧しくなっている」というのです。私は、この運動の話を聞いて、「うまいキャッチフレーズだな」と思いました。要するに、「本質はそうかもしれないが、少々大げさだ」と思った。ところが、最近「それは本当なのだよ」という調査結果を知ったのです。CNN.co.jp 1月18日から。貧困問題に取り組むNGOオックスファム・インターナショナルは、最新の報告書を出しました。そこには「驚愕の事実」が明らかにされています。
オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7,600億ドル(約206兆円)だった。
出典:CNN.co.jp「貧富の格差増大、上位62人と下位36億人の資産が同額」 2016年1月18日掲載
どうですか、これ?
上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7,600億ドル(約206兆円)だった。
出典:同上
つまり、トップの金持ち62人の資産は、貧しい方36億人の資産に匹敵する!
また、オックスファムの報告書は、「格差が急速に拡大していること」をはっきり示しています。
富裕層の資産は近年、急激に膨れ上がっており、上位グループの資産はこの5年間で計約5,000億ドル増えた。一方、下位半数の資産は計1兆ドル減少した。
出典:同上
上位グループの資産は、5年間で60兆円(!)増えた。下位半数の資産は、5年間で120兆円(!)減った。さらに、驚きの事実が出てきます
また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。
出典:同上
上位1%の資産は、残り99%の資産額より多い!!!
もう少し広くみてみましょう。
富裕層と貧困層の所得格差も拡大を続けている。1日あたりの生活費が1.90ドル未満という極貧ライン以下の生活を送る下位20%の所得は1988年から2011年までほとんど動きがなかったのに対し、上位10%の所得は46%も増加した。
出典:同上
世界には、1日当たり1.9ドル(=228円)、つまり月7,000円以下で暮らしている人が、20%もいる。世界の人口が73億人とすると、14億6,000万人もいる。どうですか、皆さん。私は、かなり驚きました。もう一度。
トップ62人の資産は、下から36億人分の資産と同じ。
トップ1%の資産は、残り99%の資産より多い。
世界には、月収7,000円以下の人が14億6,000万人もいる。
貧富の差は、ますます拡大している。
これを読んで、「俺たちは99%だ!」というのは、「事実なのだな」と知ったのです。
ところで、「36億人分の資産をもつ超富豪62人」って、どんだけパワーもっているんでしょうね?
Next: 世界の36億人分の資産を持つ62人の支配者の力はどこから来るのか?
この世の支配者、パワーの源泉
もう少し、別の観点から見てみましょう。アメリカは、レーガンさんの時代の終わりごろから、
- 世界一の対外債務国
- 世界一の財政赤字国
- 世界一の貿易赤字国
であることは、皆さんご存知です。ところが、30年もそんな状況を維持している。なぜ、そんなことができるのか? そう、米ドルが「基軸通貨」だからです。つまり、アメリカは、「世界通貨」の「発行権」をもっている(近年は、ユーロや人民元に、その絶対的地位を侵食されつつありますが)。
ところで、アメリカの中央銀行は「連邦準備銀行」(FRB)といいます。私のメルマガ読者の皆さんは、ほとんどご存知だと思いますが、アメリカの中央銀行であるFRBは、100%「民間銀行」なのです。
「トンデモ、トンデモ、トンデモ〜〜〜!!!」
そんな新規読者さんたちの大合唱が聞こえてきそうです。そうはいってもホントのことですから、ウソだと思ったら、興味をもって調べてみてください。誰でもアクセスできる情報として、ウィキペディアから引用しておきましょう。
連邦準備制度は株式を発行していないが、連邦準備銀行は株式を発行している。
ただし、合衆国政府は連邦準備銀行の株式を所有しておらず、各連邦準備銀行によって管轄される個別金融機関が出資(=株式の所有)義務を負っている。
また、個人や非金融機関の法人は連邦準備銀行の株式を所有できない。
出典:Wikipedia「連邦準備制度」
こんな短い文章ですが、物事の本質を示しています。
- FRBは、株式を発行している(株式会社である)
- アメリカ政府は、FRB株を所有していない
- 個人、非金融機関は、FRB株を保有できない
- 金融機関(=民間銀行)がFRB株を保有している
もう1つ、ここには書かれていませんが、「株主は非公開である」という事実もあります。ここまでの事実、意味を正確に理解しておく必要があります。
- アメリカは世界通貨の発行権を握っている(いた?)
- 世界通貨を発行しているのは、FRBである
- FRB株をアメリカ政府を保有しておらず、100%民間銀行である
- FRBの株主は非公開である
非公開なのでわからないですが、5〜6の大銀行がFRBの株主だろうと推測されているのですね。「5〜6の大銀行」というと、「銀行員うじゃうじゃ」思い浮かべますが…。しかし、5〜6の銀行には、それぞれ頭取がいて、大株主がいる。そうなると、皆さんの会社と同様、「支配者は極めて少ない」ことになるでしょう?
こういうことです。
5〜6の銀行のトップ → FRBを支配 → 世界通貨ドルを発行 → 世界に多大な影響
こういう構造になっていることは、丁寧に事実を追っていけば誰にも否定できません。
Next: なぜ、少数の人間が支配する構造が出来上がってしまったのか?
なぜ彼らは支配者になれたのか?
民間銀行のトップが、覇権国家アメリカの中央銀行を支配している。どうしてそのようなことが可能になったのでしょうか?
かつて、世界のほとんどの国々は、王によって統治されていました。欧州の商人は平民で、なおかつ「金貸し」は、「キリスト教の倫理に反している!」ということで、蔑まれていた(日本でも、江戸時代の身分は、士農工商。商人は一番下に位置していた)。彼ら(金貸し)たちは、そういう状況に不満で、徐々に権力に侵食していきます。そして、最終的には、覇権国家アメリカの中央銀行までも支配するようになった。どうやって???
この件で最近、面白い本をプレゼントしていただきました。「真の民主社会を創る会」天野統康代表の、『世界を騙しつづけた詐欺 経済学原論』。
天野先生は、真の天才です。今、世界は思想面でも行き詰っています。共産主義が死に、ケインズが死に、唯一残った新自由主義の結果は、
「62人の資産が、36億人分に匹敵」
「トップ1%の資産が、残り99%よりも多い」
「14億6,000万人が、月収7,000円以下で生活」
世界中の人が、「現状はおかしい」と感じている。それで、アメリカでもサンダースさんブームが起きている。しかし、「じゃあ、どうすんの?」と聞かれたら、新自由主義に変わる説得力ある代案を誰も出せない現状。
ところが、天野先生は違います。現状のシステムは何が問題で、どうすれば解決するのかをきっちり論理的に解説してくださる。
ジョン・ロック、
アダム・スミス、
マルクス、
ケインズ
を凌駕する天才といえるでしょう。
そんな天野先生はこの本の中で、世界の支配構造がどうなっているのか? どうすれば、よりよい世界をつくることができるのか?を詳細に解説してくださっています。是非ご一読ください。
『ロシア政治経済ジャーナル』(2016年4月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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