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なぜ米国株に暴風?ナスダックを強烈に下げた3つの元凶。FOMCの「オブラートに包んだ」会見に要警戒

昨晩の米国市場ではNASDAQの下げが目立った。ダウは売り戻しが入ったが、この動きに惑わされるとテクノロジー・半導体の本格下げ相場入りを見逃すことになる。(『新天地の株式投資日記』)

※本記事は有料メルマガ『新天地の株式投資日記』2022年1月25日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。実際に配信されたサンプル号もお読みいただけます。

プロフィール:新天地
祖父の影響で子どもの頃から株の売買を行う。証券会社で自己売買業務を経験後に退社、現在はデイトレーダー。メルマガでは主に脱初級・中級者向けに、東証・NYの市況(市場雑感)、相場の考え方、取引手法などを解説。一般に書かれることが少ない空売り戦略や取引アルゴリズムに関してもプレーヤーの立場から丁寧にフォローする。

各指標

NYダウ:3万4,297ドル −66ドル(−0.19%)
NASDAQ:1万3,539ドル −315ドル(−2.28%)

アメリカ国債10年利回り 日足(SBI証券提供)

アメリカ国債5年利回り 日足(SBI証券提供)

NYダウ日足(SBI証券提供)

NASDAQ 日足(SBI証券提供)

日足は下げ渋った足なんだけど、中身は結構悪い。

NYダウ日中足(SBI証券提供)

NASDAQ 日中足(SBI証券提供)

比較的戻したダウに対して、ナスダックは「売りなおされた」。またマイクロソフトが時間外でさらに売られているのも気になる。

「テクノロジー売り」で暴風の日

25日のアメリカ市場は、ダウだけを見ればまちまちの動きながら、機関投資家がベンチマ-クにするS&Pが1.2%安、ナスダックは引けにかけて売り直されて2%を超えて下げた。「テクノロジー売り」と言い切っていいかもしれない。業種間で下げの幅にかなり差がある。

あとで書くけど決算ガイダンスを受けて、マイクロソフトが時間外でさらに売り叩かれるなど、指数の数字以上に弱い。日本株先物は昨日下げてるから「戻った」けど、アメリカ株は今日の数字以上に(結構苛烈に)弱いのは注意して。実質的に株価4%くらい下がったんだと覚悟して。

半導体が総崩れ、EV安、GAFAMの一角が結構な下げになってて、見てる銘柄によっては「どしゃぶり」とか暴風って感じの1日。ギャンがよく著書の中で「明らかに何かがおかしいのだ」と書くことがあるがそんな1日。

ダウの数字だけを見て安堵してはいけない。

Next: なぜ暴風が吹き荒れる?閑古鳥が鳴く薄商いに「EV関連株」は全面安へ



なぜ暴風が吹き荒れる?

日経平均夜間先物はダウの上下動に連動して一時2万6,900円割れまであって2万7,300円まで急速に戻したけど、なんで戻したんだろう?っていう…。

1つには「将来の利益」の値段が下がったように見える。投資家は今現在お金を稼いでいることを評価していて、未来の利益を買うことをリスクが高いと考えたと。

あるいはもう1つ、去年末から書いているけど、GAFAMやエヌビディア、AMD、テスラさらにフォードといった「個別株コールオプションの活況がコールの売り手のデルタヘッジの現物株買いを呼び込んで株価が上昇加速」していた銘柄たちに先安バイアスが掛かることで「コール買い」が減り、つり上げられていた価格が剥落しているようにも見える。

今日の象徴は毎度おなじみハイテク株ETFのARKK3.5%安。一昨年その強力な上昇力で最も注目されたファンドの不調が今のアメリカ市場の「変調」の縮図と言っていい。

「THE Street」の記事によれば、ハイテク株が半数を占めるナスダック指数が最高値をつけた11月以降、18%下落している。しかし「18%の下落で済んでいる」のは、比較的時価総額の大きな銘柄が「値段をまだ保っている」からであって、ナスダックの3,000以上の銘柄のうち、約4割の株が株価が半値近くまで下落したという。

この辺は日本の新興市場(ナスダック市場と違ってテックジャイアンがいない)が総崩れしているのと似ているね。

米EV銘柄は全面的に下げる

今晩決算発表(ナスダックの引け後予定)のテスラは結局1.2%安。時間外ではそこから0.7%下げてて、EV銘柄安の流れに逆らえず。一時900ドル割れ寸前まで下げる場面もあった。

今日はフォードが売買代金16位で2%安。ニーオが4%安、リビアンが7%安とEVは全面的に安い。 「物凄く売られた」というより「閑古鳥が鳴いてて買い手がいない中を見切り売りでずるずる下げていく」という感じかな。

テスラこそ圧倒的な人気があるけれど、 未だ売上が立っていない(EV関連とされるフォードもまだ実績はあまりない)部分について、投資家が参加意欲を急速に失っている象徴だと思う。

僕がよく書くけど「椅子取りゲームの参加者が多いと椅子の価値が上がる」。今までは単に参加者が多いから、という理由でプレミアム価格がついてたEVだけど、人々が興味を失ったことで薄商いの中を下げていく構図になってる。

リビアン 日足(SBI証券提供)

熱狂がIPOに酔った出来高の異常な大きさと共に、そして今の下落が出来高の減少と共に起こっているのがわかる(銘柄は違うけど今の海運株にも通じるものがあるかもね)。

Next: ソニー1社分の時価総額を溶かしたMicrosoftの下げ。今後の展開は?



ソニー1社分の時価総額を溶かしたマイクロソフトの下げ

ナスダックの下げを主導したのが決算を前にしたGAFAM。 マイクロソフトが2.7%安。時間外ではそこから3.7%安と「普段ならマイクロソフトショック」と言っていいほどの売られ方してる。今日、ナスダックは「2%安」ですんだけど、マイクロソフトだけ見てたら5%は楽に下がったような体感の下げ。ちょっと洒落にならん。

去年、ヤフーファイナンスは最優秀銘柄にマイクロソフトを選んだ。しかしその巨人は アナリスト予想を上回る決算を出しながら、いま(原稿執筆時点:1月26日6:40)時間外で終値からさらに5%売られてる。通常取引と合わせて8%くらいの急落になる。 簡単に8%って言うけど時価総額が18兆円ぐらい消えた計算。これは去年の「サードパーティクッキー騒動」でアメリカのIT銘柄が売られた規模に匹敵する。ソニー丸々一個分以上の時価総額が溶けたわけね。

過去数字はよかったけど、今後を担うべき企業向けエンタープライズソフトセグメント(まあ「クラウド」と一言で言っていい)が伸び率鈍化することをアナリストはかなりネガティブに評価してる。まだ株価格付けは出てこないけど、バロンズとか見てると目標株価下げの方向でアナリストリポートが出てくるんだろう。

ビックGAFAMの2つの不安

Amazonが3%安。時間外でさらに2%安であわせて5%の下落。ここでも7兆円分時価総額が溶けた。

あとはメタが2.7%安時間外でさらに1.6%安。グーグルが2.8%安、時間外で1.3%安。時間外も合わせれば軒並み5%安と言う感じでGAFAMだけで時価総額何十兆円溶けたんだろう。

GAFAMの下落には「クラウドが伸び率落ちた」という側面と「アップルによるサードパーティクッキー制限」による広告収入減少という側面2つが今決算によって再びクローズアップされてきていると言っていい。

要するに人々が「これからはビジネスモデルが変わってこんなに儲かる!と思ってた部門が「あれ?こんなはずでは?」と同時にクエスチョンマークがついてしまった。今まで値段を保っていたビッグテックの変調はかなり痛い。

IT銘柄の将来性に対して評価修正

11月から大きく下げたナスダックだけど「下げ成分」は未だ売上が立っていない若い銘柄たちの「将来性」部分に対する評価修正の下げだった。でも今日のナスダックの下げは「ビッグテック」というすでにある程度ビジネスを確立している銘柄の「収益伸び減速」を嫌う下げ。今月前半までの下げとちょっと意味が違う。

いわば今までの下げが日本の新興市場のようなまだ大きくなっていない銘柄の下げだったのに対して、今日の(そして時間外の)下げはすでにビジネスを確立したIT銘柄への楽観的見通しを修正する下げだ。日本で言えばソニーや任天堂、Yahooとか楽天の伸びに疑問を呈する流れと言っていいかもしれん。

Next: 「FOMCの発言はオブラートに包まれたものになる」



見えてきたサブスク銘柄の限界

広告収入モデルだけではなく、「サブスク」に収入を依存するネットフリックスも5.3%安と下げが止まらず。時間外でも1%安。結局僕らは「無限にお金がIT銘柄に収入として入ってくるんじゃないか?」と思ってたけどその総量にも限界があることに気がつき始めたんだと。

グロースの定義として年率20%の成長を上げる人も多かったけど、みんなが大きくなった結果、取り合うパイの大きさが有限であることに気がついた。みんなが20%成長を永遠に続けることは無理なんだと。

大きな材料なく半導体下げる

でもって、下げの主役3つ目が半導体。ソックス指数は3.71%下げと、せっかくの昨日の上昇を簡単に打ち消してしまった 。各社の決算とガイダンスを前にリスク縮小の売りが相次いている。年初いきなりのポジティブサプライズ(需給いいよ!)で高値をつけた半導体株だが、それ以来機関投資家は利食い売りを継続している形。

AMD4.6%安、エヌビディア4.5%安とロジックツートップが反落。エヌビディアはソフトバンクGからのアーム買収を諦める方向とも伝わる。AMDは時間外でもそこから2%下げててめためた。AMAT4.5%安など製造装置もダメダメ。 大きな材料がないだけに「ちょっときついなあ」というのが正直な感想になる。

FOMCの発言はオブラートに包まれたものになる

今日、SOXで書くことは少ないんだけど、それだけにちょっと深刻!ということも書いておきます。

連日の1,000ドル超の値幅、合わせてVIXは一番高いところで31を超えた。高値圏でのこういうボラの高まりは一般論としてはあまりいい話ではない。まずはFOMCを注目することになるけれど。

これまた一般論としてはFOMCも相場を急落させたくはないから、オブラートに包んだ言い方をするはず。だからそれ自体が下げ爆弾になる可能性は低い。

ただ僕らとしては「オブラート入りだ」ということを考えて…。

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(筆者注:このメルマガは新天地の考え方を書いたもので、特定の銘柄及び指数に関する商品の売買を推奨または指示するものではありません。銘柄の値動きについては想定と違う場合もあります。投資される場合は読者の方独自の責任で行われるようお願いします。)


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新天地の株式投資日記』2022年1月25日号より一部抜粋
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