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伸び悩むドル円【フィスコ・コラム】

米連邦準備理事会(FRB)が金融正常化への積極姿勢を打ち出し、目先は金利高を手がかりとしたドル買いに振れやすい地合いとなりそうです。半面、株式市場にとっては流動性が後退するため、株安を嫌気した円買いが主要通貨の上昇を抑えるとみられます。

FRBは1月25-26日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、漸進的に引き締めを進める方針を示しました。今後は3月に政策金利を引き上げ、ほぼ同時にバランスシートの縮小に乗り出す見通し。バランスシート縮小の規模に関しては、最大500億ドルを超えるとみられます。パウエルFRB議長はFOMC会合ごとに利上げを決める可能性に言及し、年3回の市場予想を上回るペースが予想されます。

これを受け、今後はインフレや雇用に関する経済指標がより材料視されそうです。2月4日発表の雇用統計で非農業部門雇用者数の増加、失業率の低下が示されればFRBの積極的な引き締めスタンスを後押しする手がかりになるでしょう。その際には、米中長期金利の上昇がドルをさらに押し上げる可能性もあります。そのため、ドル・円の想定レンジは切り上げられるかもしれません。

半面、金融正常化は株式市場に失望感をもって受け止められています。年明けにかけて弱い経済指標が目立ち、引き締めは経済の腰折れにつながるとの懸念からNY株式市場ではナスダックをはじめ大きく下落。そのためFRBは株価に配慮しタカ派姿勢を弱めるとの期待がFOMC前に広がっていました。結局そうはならず、今後、流動性相場の終えんにより世界的に株安が続けば円買いに振れる場面もあるでしょう。

一方、ウクライナ問題は混迷が深まり、欧米とロシアの関係悪化により地政学リスクが意識されます。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大をやめるよう欧米に求めたものの、米バイデン政権はそれを拒否。今後ロシアがウクライナに侵攻する可能性が高まり、武力衝突が現実味を増しています。それによる欧米株安でリスク回避的な円買いが強まり、ドルの一段の上昇を阻止する要因となります。

企業決算が本格化するなか、業績の悪化が鮮明になれば投資家心理を圧迫しそうです。NY株式市場で強気相場は一服し、株安を嫌気した円買いが主要通貨を下押しする展開に。2月第1週に予定されているユーロ圏のインフレ指標発表や英中央銀行の金融政策委員会(MPC)の追加利上げを受け、欧州通貨の買い戻しが強まればドル・円は上値の重い値動きになるとみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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