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戻り鈍いドル円【フィスコ・コラム】

ドル・円の戻りの鈍い値動きが目立ちます。1月後半の株安は一服し、リスク回避の円買いはいったん収束。米連邦準備理事会(FRB)の金融正常化を背景としたドル買いも継続しています。ただ、年明け直後に比べ、ドルの値動きに勢いが感じられません。

NY株式市場でNYダウとS&P500が年初に相次いで過去最高値を更新し、2022年は好スタートとみられましたが、1月下旬にかけて波乱が待ち受けていました。経済指標からインフレ高進は鮮明でも、個人消費は低調に。市場はタカ派色を強めるFRBの政策スタンスから景気への影響が懸念され、米10年債利回りが1.8%台に上昇するとハイテク株売りが優勢となり、ナスダックを中心に大きく下げます。

NYダウなども追随し、S&P500の1月の下落幅は2008年のリーマンショックに並ぶ大きさでした。この間、ドル・円は株安を嫌気した円買いに下押しされたものの、米金融正常化を背景とした金利高・ドル高が優勢となり、1月24日の113円半ばを大底に上昇へ転じます。アップルが四半期決算で過去最高の業績を発表すると、株価の反発で円買いは縮小し、ドルは一時115円60銭台に浮上しました。

ただ、その後は上昇が続かず、再び114円台に失速。FRBが世界の主要中央銀行のなかでは金融正常化の先頭を走り、今後もドルの選好地合いに変わりはないでしょう。3月に政策金利を引き上げた後、バランスシートの縮小が見込まれます。市場では政策金利の引き上げについて年内7回、1回につき0.5%幅などの見方が浮上。ただ、足元の当局者発言からタカ派色が薄められ、強いドル買いは一服しています。

目先も主要中銀の金融政策がテーマとなり、英中銀は2月2-3日に開催した金融政策委員会(MPC)で追加利上げに踏み切りました。また、欧州中銀(ECB)もラガルド総裁が理事会後の記者会見でインフレ高進に警戒感を示し、昨年12月の会合と同様、想定以上にタカ派的なスタンスを示しています。金利差縮小により、欧州通貨買い・ドル売りでドル・円には下方圧力がかかりやすくなりました。

今週発表の1月消費者物価指数(CPI)がコア指数も含め高水準を維持すれば、早期正常化を後押しする手がかりになり、再びドル買い地合いが見込まれます。また、ミシガン大学消費者信頼感指数は低水準ながら、回復傾向を維持できれば成長持続への期待から株式相場を支える要因になりそうです。ただ、決算発表や年金基金などによるリバランスの通過後は株価が失速し、ドルの上値を抑える展開とみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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