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2050年予測~米中覇権争いの「次」を見据えるバフェット、ソロス、ロジャーズ=東条雅彦

ジム・ロジャーズ、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス。世界三大投資家の投資スタイルを考察しながら「今、世界で起きていること」と米中覇権争いの行方を考えます。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

2050年の覇権国は?バフェットがアメリカに賭けた理由

アメリカ vs 中国 今、世界で起きていること

20世紀、世界の覇権はイギリスからアメリカに移りました。アメリカはソ連(ロシア)からの圧力を跳ね返し、覇権国であり続けました。ところが、21世紀に入って中国が急速に力をつけてきて、世界の覇権国になろうとしています。もちろん、アメリカはそれを阻もうとします。

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中国は、AIIB(アジアインフラ銀行)を設立して、新シルクロード経済圏を作る計画を発表しました。中国からヨーロッパまでのインフラを整備して、ユーラシア大陸全体で大きな経済圏を作ろうとしています。

一方、アメリカは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)で太平洋を囲む形で大きな経済圏を作って、対抗しようとします。

世界地図で確認すると、とてもわかりやすいです。

AIIB 参加国(出典:世界経済新聞

TPP 参加国(出典:nippon.com

ちょうど日本を境に西側の大陸組がAIIB陣営、東側の太平洋組がTPP陣営という構図になっています。今のところ、TPPもAIIBもとても不安定な情勢で、どうなるかわかりません。

ジム・ロジャーズがアメリカを飛び出して、シンガポールに移住したのは、覇権国がアメリカから中国に移行することを確信したためです。ただ、事態はそう簡単には遷移しません。ジョージ・ソロスは中国経済の先行きを不安視しています。

マクロ経済に関して、ウォーレン・バフェットが何かコメントすることは今までもなかったし、今後もないでしょう。ただ、バフェットはアメリカ経済にとても前向きな姿勢を示し続けています。もし本当にアメリカの企業がダメだと判断したら、バフェットは他国の企業に投資するはずです。バークシャーの資金は、ほぼアメリカに突っ込んでいます。

バフェットが最も愛するウェルズ・ファーゴは、アメリカ本土を専門に営業している銀行です。ウェルズ・ファーゴは国際業務にほとんど力を入れていません。まさにアメリカ経済の成長と共に、大きくなっていく銀行です。

このことから、バフェットはアメリカに票を入れていると見るべきです。

●中国・・・・・ジム・ロジャーズ
●アメリカ・・・ウォーレン・バフェット、(ジョージ・ソロス)

ジョージ・ソロスは2008年1月のダボス会議にて「ドル基軸通貨体制崩壊」に言及していました。2016年1月のダボス会議では「中国経済崩壊」を断言していました(2016年4月にも同様の発言を繰り返しています)。ソロスのスタンスは少しわかりにくいのですが、「中国もアメリカもゆっくりと衰退する運命にある」と言っているように聞こえます(諸説あり)。

中国の挑戦が成功するのかどうか…今の政治体制のまま突き進むのか?今の時代は歴史的にとても不安定なタイミングなのです。挑戦国の中国が勝利するにせよ敗北するにせよ、どちらの道に進んだとしても、それなりに大きな衝撃を世界に与えると思います。

Next: BRICsに抜かれる日本/2050年に覇権を握るのはアメリカか中国か?



バフェットの予想はゴールドマン・サックスの予想と一致している

20世紀、アメリカはソ連(ロシア)との冷戦を制して、覇権国となりました。21世紀に入り、中国が台頭してきました。2007年にゴールドマン・サックスが次の予想レポートを発表しています。

2010年 GDPランキング

1位 アメリカ
2位 中国
3位 日本
4位 ドイツ
5位 イギリス
6位 フランス
7位 イタリア
8位 ロシア
9位 ブラジル
10位 インド

2050年 GDPランキング

1位 中国
2位 アメリカ
3位 インド
4位 ブラジル
5位 メキシコ
6位 ロシア
7位 インドネシア
8位 日本
9位 イギリス
10位 ドイツ

日本とドイツはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に抜かれてしまいます。アメリカは2050年時点において、中国に抜かれるものの、第2位という地位を維持するという予想です。

ゴールドマン・サックスが発表した資料には、GDPの金額も記載されています。

参考資料 2050年時点の主要国予想GDP

中国経済がアメリカ経済の2倍の規模になると予想されています。一人当たりのGDPは、この表ではアメリカがトップになっていますが、ルクセンブルクやスイスの方が上です。
(ゴールドマン・サックスが作った表は、主要国のみしか掲載していません。一人当たりのGDPランキングは、世界経済のネタ帳が参考になります)

アメリカと中国、それぞれの一人当たりGDPは次の通りです。

2010年⇒2050年 一人当たりGDP ※単位:USドル
アメリカ:47,014⇒91,683 (2.0倍)
中国:3,463⇒49,650 (14.3倍)

今年に発表した「2015年度版 バフェットからの手紙」の中で、バフェットはアメリカが今後も重要な国であり続けることに変わりはなく、未来は明るいと宣言していました。ウォーレン・バフェットの見方は正しいと思います。

21世紀に入り、中国が台頭してきているというのは事実です。しかし、一人当たりGDPではアメリカが中国の約2倍の差をつけています。全体のGDPでは、中国が70,710、アメリカが38,514となっています(単位:10億USドル)。

全体では約2倍の差で負けますが、反対に一人当たりGDPでは約2倍の差でアメリカが中国を上回ります。こうした予想を元に考えると、ジム・ロジャーズとウォーレン・バフェットとでは、見ている視点が異なると言えるでしょう。

ウォーレン・バフェットは「2015年度版 バフェットからの手紙」の中で、一人あたりGDPに着目していました。アメリカ国民の一人当たりGDPは次のようになると予想していました。

2015年 56,000ドル(約616万円)
↓25年後↓
2040年 75,457ドル(約830万円)

概ね、バフェットの予想はゴールドマン・サックスの予想と一致しています。

また、ウォーレン・バフェットは次のように発言しています。

マクロに関する見解をこしらえたり、他人によるマクロや市場の予測に耳を貸したりするのは時間の無駄です。実のところ、危険なことです。

売上高が1000万ドルで利益率が15%の会社Aがあり、売上高が1億ドルで利益率が5%の会社Bがあるとします。私なら、Aをとります。

この2つの発言からわかることは、バフェットはあくまで規模の大きさは関係なく、利益率の高さ(ROEの高さ)を重視しています。一方、ジム・ロジャーズは、「21世紀は中国の時代」として、国全体のGDPに着目しています。

なぜなのでしょうか?実はジム・ロジャーズは株式よりも、商品や通貨などマクロ経済に連動する投資の方が得意だからです。

●ウォーレン・バフェットの得意分野
株式

●ジム・ロジャーズの得意分野
商品、通貨、株式

どちらが正しいとか間違っているという話ではなく、「二人とも自分の得意分野に投資しているだけ」という話なのです。

Next: 米国も中国も超長期的には衰退?だが挑戦国が覇権国と入れ替わったことはない



アメリカも中国も超長期的には衰退?

ゴールドマン・サックスの予想によれば、2050年にはアメリカと中国が入れ替わります。このことは、ジム・ロジャーズのマクロ分析と一致しています。

しかしながら、注目すべき事実があります。過去の歴史を振り返って、「挑戦国が覇権国と入れ替わったことはない」という事実です。

      覇権国   挑戦国
16世紀 ポルトガル スペイン
17世紀 オランダ  フランス
18世紀 イギリス  フランス
19世紀 イギリス  ドイツ
20世紀 アメリカ  ソ連

16世紀はポルトガル、スペインの時代でしたが、17世紀に入ると、両国ともに衰退しています。16〜20世紀の覇権国、挑戦国を見ていくと、挑戦国が覇権国になっているわけではありません。ここがとても面白いところだと思います。普通、第2の国である挑戦国が覇権国に勝利すると、入れ替わるのかな!?と思いきや、まったく別の国が台頭してきています。

この歴史的事実から、中国がアメリカに挑戦している状況から両者がひっくり返ったり、入れ替わったりすることはなさそうです。

ケース1:
      覇権国   挑戦国
21世紀 アメリカ  中国

ケース2:
      覇権国   挑戦国
21世紀 中国    アメリカ

ケース1もケース2も過去の歴史からは考えにくいのではないでしょうか。入れ替わるのではなく、「別の国がやってくる」というのが今までのパターンでした。新世紀では、今のガチガチの資本主義ではなく、もっと違った形の秩序が生まれるのかもしれません。

ここで思い出されるのが、ジョージ・ソロスが2008年1月のダボス会議で発言していた「ドル基軸通貨体制崩壊」について。

著名投資家のジョージ・ソロス氏は23日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、世界的にドル離れが進んでいるとの認識を示した。

同氏は「金融市場には保安官が必要だ。世界はドルを買い増すことに消極的だ」と発言。「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。

出典:ロイター「世界はドルの買い増しに消極的=ジョージ・ソロス氏」2008年1月23日

今、私たちが生きている時代は過渡期です。ジョージ・ソロスの発言から、アメリカの相対的なパワーバランスは落ちつつあります。中国やインドという人口の大きい国が力をつけてきたためです。

ところが、これらの国が「覇権国」と入れ替わる可能性は低いという歴史的事実は、頭の片隅においておきましょう。

今のところ、「新しい秩序」が生まれる気配はありません。新しい秩序が生まれるまでは、21世紀もアメリカが覇権国の地位をキープしたまま、そのまま突っ走るでしょう。今の秩序(アメリカ式資本主義)はアメリカが作ったもの。だから、当然、アメリカの企業がやはり強いのです。米国株に投資するという戦略は正しいと思います。

あれ?結局、「米国株に投資するという戦略は正しい」ということを言いたかっただけ?いえいえ、違います。

一番、伝えたかったのは100年、200年という超長期的には、「アメリカも中国もゆっくりと衰退している」という解釈が最もしっくりくるということを言いたかったのです。

しかし、今の秩序ではやはりアメリカが強いです。通常、覇権国は1世紀しか持たないと言われているのに、アメリカは20世紀も覇者で、21世紀も重要な国(全体のGDPでも世界第2位)であり続けることは確実です。ゴールドマン・サックスの長期予想とウォーレン・バフェットの発言が一致している点に、私は注目しています!

Next: 今回のまとめ~当面アメリカの覇権が続くと考えられる2つの理由



今回のまとめ

理由その1

今の秩序(=グローバル資本主義)はアメリカが作ったものであり、中国が作った秩序ではないため。

理由その2

歴史的に挑戦国の中国が覇権国のアメリカと入れ替わる可能性が低いため。

【関連】アメリカの戦略転換と「第2次麻生太郎内閣」誕生の真実味=斎藤満

ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2016年5月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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