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4月も底堅いドル円【フィスコ・コラム】

ロシアとウクライナによる停戦交渉はある程度進展したもようで、過度な懸念は一服しつつあります。1カ月で10円超も上昇したドル・円の急激な値動きも収束。今後はロシア軍の撤退を見極めながら、主要中央銀行による政策方針を注視する展開となりそうです。

3月のドル・円は4日に114円65銭を付けた後に値上がりし、11日に年初来高値の116円35銭を上抜けると一気に騰勢を強めていきました。14日に118円、22日に120円、24日に122円と次々に心理的な節目を突破し、28日には2015年以来6年超ぶりの125円台に浮上。「黒田シーリング」の125円86銭も一時は射程圏内に入りました。3週間あまりの値上がり分は、実に1年分の値幅に相当します。

この記録的なドル・円の上昇ペースは前半がドル買い、後半は円売りが主要因です。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長をはじめ当局者から利上げ幅の50bpへの拡大など一段の引き締めに前向きな姿勢が示され、ドルを押し上げます。また、ロシアとウクライナの協議は不透明感が増し、有事のドル買いも強まりました。その間、ユーロ・ドルは1.12ドル台から1.08ドル台に急激に値を下げる展開となりました。

後半の円売りは、日銀の円安誘導が背景にあります。黒田東彦総裁が日本経済における円安のメリットを改めて強調。また、インフレ上昇圧力にもかかわらず、緩和的な政策を堅持する方針を述べると円は下げ足を速めます。さらに年度末に向けた指値オペは長期金利の上昇抑制、市場への円資金供給の役割を果たしました。この円安は、鈴木俊一財務相の「悪い円安」を警戒した発言でいったん収束しました。

3月高値の125円09銭を付けた後の急激なドル安・円高から、目先の値動きを読み取れるのではないでしょうか。120円の大台を上抜けてからは高値警戒感が広がっていましたが、その後の下落基調でも121円台では下値の堅さを確認できます。大台回復によりドル・円は当面上昇基調が続くとの見方から、押し目買いが強まったとみられます。目先は122円付近が居心地の良い水準になるのかもしれません。

ウクライナ情勢は非武装化など新たな安全保障の枠組みの協議が注目されるなか武力紛争が続き、不透明感が広がればリスク回避の円買いが有事のドル買いを下押しする可能性もあります。ただ、FRBの引き締め加速は織り込まれるものの、5月3-4日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、経済指標が堅調なら金利高・ドル高に変わりはないとみられます。日銀の円安容認も、引き続きドルを支えるでしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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