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コラム:ドル124円台の攻防【フィスコ・コラム】

日米金融政策の違いに着目したドル買い・円売りで、ドル・円相場は125円後半の「黒田シーリング」が視野に入りました。長年にわたり安定を維持した通貨ペアがさらに動意づく可能性もあり、124円台の攻防が続きそうです。

3月末にかけての円独歩安で、ドル・円は一時125円03銭まで急伸。実需による年度末のまとまった取引が収束し、その後はいったん失速しました。ただ、121円台で下げ止まるケースが多く、投資家は間違いなく上昇基調を想定しています。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め加速と日銀の緩和継続で、足元のペースが続けば125円86銭の「黒田シーリング」の上抜けは時間の問題かもしれません。

4月上旬はそれを予感させる相場展開です。FRB当局者のなかで最もハト派とされてきたブレイナード理事は直近の討論会で追加利上げとバランスシート縮小の開始に踏み込んでいます。同氏は2016年の米大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝利した場合、民主党政権下での財務長官就任が確実視されていた人物です。現在はバイデン政権のインフレ対応を強力に後押しする立場から、タカ派に転じています。

3月15-16日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、ロシアのウクライナ侵攻で不確実性が高まったため利上げ幅を0.50%ではなく0.25%としたことが議事要旨から明らかになりました。また、保有資産は1カ月当たり950億ドルを上限に縮小していく方針で一致。タカ派的な内容から5月3-4日の次回会合では正常化の推進を示すとみられ、金利高・ドル高の基調に変わりはないでしょう。

アメリカとは対照的に、日本は政府と中央銀行の政策スタンスにやや綻びが目立ち始めました。黒田日銀はアベノミクスを支える立場で異次元緩和を推進してきたにもかかわらず、諸外国のような物価上昇はみられませんでした。コロナ禍からの回復過程でのインフレ圧力でようやく目標に近づきつつありますが、出口政策は時期尚早との見解。放置すれば景気腰折れにつながる「悪い円安」と指摘されます。

岸田政権から円安けん制が出始めると、黒田総裁は4月5日の国会答弁で最近の為替の変動について「やや急ではないか」と発言。円安はいったん巻き戻されたものの、その後は再び円売り方向に。総裁発言は実質実効レートのレベル感でなかったことから、実質円安容認と受け止められました。「黒田シーリング」を上抜ければ、ドル・円は2002年以来、実に20年ぶりの高値水準になります。

現時点では124円前半で下押し圧力が強まっていますが、政府と中銀のスタンスの違いに目を付けた投機筋の円売りにも警戒しなければならないでしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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