マネーボイス メニュー

「黒田ライン」後のドル円【フィスコ・コラム】

ドル・円は「黒田ライン」を突破し、約20年ぶりの高値圏に一時浮上しました。その後も日米金融政策の違いから、上昇基調を維持。ただ、材料は出尽くし、重要イベント満載のゴールデンウィークに向けてはいったん落ち着いた値動きとなりそうです。

4月12日に発表された米3月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.5%と、2月の+7.9%から伸びが一段と顕著になりました。これは1981年12月以来40年超ぶりの高水準で、改めてインフレ高進を示しています。連邦準備理事会(FRB)は次回5月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ幅の0.25%から0.5%への拡大や保有資産の縮小など引き締めを加速させるとみられ、金利高・ドル高に振れました。

翌13日もドル買いの継続でドル・円は「黒田ライン」として意識されていた2015年6月の高値125円86銭付近でもみ合った後、ストップロスを巻き込み一時126円30銭台まで値を切り上げました。2002年5月以来、実に20年ぶりの高値圏です。黒田日銀総裁がこの日の午後に異次元緩和の継続に言及したことが直接的な要因とされます。ただ、その後は達成感や材料出尽くしにより失速しました。

ドル高・円安の大きな流れに変わりはないものの、目先は4月下旬から5月上旬に予定される重要イベントを見極める展開が予想されます。日本の4月コアCPIは日銀が目標としてきた2%前後に達するとみられます。ただ、政府から「悪い円安」をけん制する発言が相次ぎ極端な円売りは抑制されるものの、日銀は出口政策論議を時期尚早とし異次元緩和を堅持する方針です。つまり円安基調は続くでしょう。

FRB当局者は5月3-4日のFOMC前のブラックアウト期間に入るため、金融政策に関しては経済指標から推測することになります。その際には、米CPIのうち変動要因の食品とエネルギーを除いて算出したコアCPIが前年比+6.5%と2月の+6.4%を上回ったものの、予想の+6.6%を下回ったことが改めて材料視されるかもしれません。米インフレはピークを越したとの見方が広がれば、ドル買いは弱まりそうです。

4月27-28日の日銀金融政策決定会合では、展望レポートで異次元緩和を維持するかが焦点。それと前後して取りまとめられる岸田政権による総合緊急対策で政府・日銀の方針に食い違いが生じれば「日本売り」再開の可能性もあります。また、米1-3月期国内総生産(GDP)速報値で物価が鈍化した場合、インフレのピークアウトへの思惑から、これまでのドル買いは巻き戻されるでしょう。

そのほか、フランス大統領選の第2回投票やロシアによるウクライナ東部への攻撃激化でユーロ売りが優勢になれば、ドルの強い押し上げ要因にもなります。強弱の材料が混在するなか、今年のゴールデンウィークは当面のドル・円相場の道標になるかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。