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新興市場見通し:インフレ・引き締め懸念再燃で来週は反動安に警戒、ANYCOLORが新規上場

 

■ナスダックの大幅高が追い風に

今週の新興市場では、日経平均が1000円近く上昇するなか個人投資家心理も改善し、マザーズ指数は週間ベースで反発。前の週末にかけてナスダック総合指数が大幅に3日続伸した流れを受けてマザーズ指数も週初から急伸。その後は米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言や米長期金利の上昇が重石となり、一進一退の展開が続いた。それでも週末3日は2日の米株市場でナスダックが大幅反発したことを追い風に米5月雇用統計前の買い戻しが進み、上伸。なお、週間の騰落率は、日経平均が+3.66%であったのに対して、マザーズ指数は+3.90%、東証グロース市場指数は+3.63%だった。

個別では、メルカリが東証プライム市場への鞍替えを発表し週間で+10.5%の大幅高。ほか、弁護士ドットコムが+13.4%、フリーが+10.0%、ウェルスナビが+5.5%、Appier Groupが+6.3%と全般堅調に推移した。臨床試験の進捗が好感されたキャンバスは東証グロース市場の値上がり率トップとなり、メタバース関連として人気化した東京通信が2位と続いた。旅行需要の回復期待から5月頃から動意づいているHANATOURは上値追いの展開で続急伸。一方、Birdman、ヒュウガプライマ、QDレーザなど高値圏にある銘柄が利益確定売りに押され、東証グロース値下がり率上位に並んだ。

■FRB高官のタカ派発言で金利は再び上昇

来週の新興市場では、マザーズ指数の反動安が予想される。今週末に発表された米5月雇用統計では雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回り、FRBの金融引き締めが警戒されるなか、週末の米株市場ではナスダックが大きく反落した。このため、週明けから下落を強いられそうだ。

今週は週間で大幅に上昇したものの、FRBのウォラー理事やブレイナード副議長、クリーブランド連銀のメスター総裁からは9月以降も0.5ptの利上げの可能性を示唆するタカ派発言があり、5月下旬にかけて一部で高まっていたFRBのハト派転換への期待は早々に解消される方向にある。低下基調にあった米10年債利回りも今週末に2.94%と1週間で0.2ptも上昇してきた。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ(BEI)もやや遅れて上昇してきたことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は今週末にかけてやや低下したが、金利と期待インフレ率が揃って上昇を続ければ、実質金利が変わらなくても、投資家心理に悪影響を及ぼしそうだ。そうした中、来週末には米5月消費者物価指数(CPI)を控えており、特に週末にかけて神経質な展開が予想される。

FRB高官らのタカ派発言、米長期金利や原油先物価格の上昇などの悪材料に再び目線が向くなか、新興株全般に逆風が吹くことが想定される。そうした中、相対的に安心感があるのは、諸外国に遅れてやってきた国内での経済活動再開の恩恵を受けるリオープン関連だ。今週は小休止したが、格安航空券の予約サイトを運営するアドベンチャーや、来期からは活発化するイベント需要の取り込みも期待されるコンテンツプロデュースのブシロードなどが注目されよう。

IPO関連では、6月20日に東証スタンダードに上場予定のヤマイチ・ユニハイムエステートの仮条件が900~950円となり、目論見書の想定発行価格である950円を上限とするレンジで決定、今週からブックビルディング(BB)期間入り(~6月8日)となっている。軽量感に欠ける公開規模であるほか、人気の高まりにくい不動産セクターということもあり、BBの積み上がりが順調かどうかを注視したい。8日にはVTuberマネジメント企業のANYCOLORが東証グロースに新規上場予定だ。

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