マネーボイス メニュー

日中国交正常化50周年、打ち上がるのは花火かミサイルか?中国の包囲演習で“有り得る”レベルを越えた台湾有事=山崎和邦

米国のペロシ下院議長の訪台に激しく反発した中国は台湾包囲演習を行った。もはや台湾有事発生は“有り得る”のレベルを越えた。この緊迫した状況にも日本には具体的な策が用意できていない。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年9月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に購読をどうぞ。

中国の台湾包囲演習が意味するもの

米下院議長が台湾を訪問することは過去にもあったことであり、大騒ぎするほどのことではないと筆者は思っていたが、今回は違った。

中国当局が例の台湾訪問は「座視しない」と公言したために、米中開戦の端緒かとまで緊張が走った。「中国当局は別の目的があって、この騒ぎを誘導したはずだ」と言うのは、益尾知佐子・九州大学准教授である(週刊東洋経済誌9月3日号)。

何故に習近平は、ここで騒ぎを起こそうとしたのか?7月末に中国の中央省庁の主要幹部を集めて開かれた専門部会では習近平は「闘争意識を堅持せよ」と幹部にハッパをかけたそうだが、数百人の参加者は誰もメモをとらずに聞き流した感じだったそうだ(前掲誌の「中国動態」による)。

中国共産党の幹部たちは、習近平の非科学的なゼロコロナ政策や経済政策に、反感を募らせているという。よって、習近平は、党大会に向けて求心力を高めるために、大衆の支持を集めなければならないから、外部に敵を作って世論に火をつけるという、ナショナリズムの常套手段をとったのだろう。

今年は中国と日本の国交正常化50周年の年になる。ところが、国交正常化50周年の現実は、非情に重苦しいものとなるであろう。今後、中国は東シナ海でも日本が主張する中間線を否定するような動きをするであろう。日中防空識別圏の重複地域と、南西諸島の南方地域が、日中対峙の最前線になるのであろう。

台湾有事は日本にも当然、影響を与える

中国が台湾を侵略した場合、日本では“有事へ巻き込まれ論”が出て、米軍を支援しなければ日米同盟は崩壊することになる。日米同盟が崩壊すれば、日本の安全保障は事実上なくなる。台湾有事の場合の日本の対応を、現実に考えなければならない時期に来ている。ロシアという核保有国によるウクライナへの侵略が、半年前に現実に起きている。台湾有事も「あり得るというレベル」ではない。

ロシアのウクライナ侵略は、台湾有事に直結する。安倍元首相は二十数回もプーチンに会って親ロ方針を外見上は示したが、今は対ロ経済制裁の主力な一員となっている。中国に対しても貿易上は最大顧客であるが、安全保障上は日米同盟を重視しなければならないことが当たり前であるから、台湾有事の場合に、日本にも当然に経済的影響が及ぶ。日本の対応を現実的に考えなければならない。

そうすると前段階として、米国が検討している中距離ミサイルの日本への配備の議論をする必要が出てくる。これを日本に配備すると、引き金に指を掛けさせろと主張すべきなのか、このテーマは安全保障の議論の最も上位に存在する。

現実には中国が南西諸島に攻撃を仕掛けてきた場合の島民の避難計画は今のところない。中国のミサイル発射を想定して、沖縄にシェルターがあるかというと、それも今は無い。核保有に関する議論は非現実的であるから、それよりも先に避難計画やシェルターを配備するという議論が最優先である。人口当たりの核シェルター保有数は、日本は西側諸国の中で最も少ない。

中国は常に軍事力で領土を拡大して来た

中国は二千数百年にわたって、全ての王朝を通じて統一問題に苦しみ、領土的野心を実現できない時代の方がずっと多かった。紀元前の殷周の時代から今日までの約3000年間の中で、中国全土が統一された期間は、その期間の3分の1以下しかなかった。

そして中国が統一を達成し、領土を拡大した期間は、それは全て軍事的な力によるものだった。漢民族には団結する一体感がなく、異民族を統合する。今日でいうところのソフトパワーも全く無かった。

西洋の場合は、その帝国は中国の場合よりも、民主的で自由な体制に移行したが、中国はそういう体制に移行しなかった。そのため表面的には統一を達成して、領土拡張した後も、力による支配が続いていた。現在でもチベットやウィグル自治区にはそういうことが続いている。第二次世界大戦後のサンフランシスコ講和条約で、台湾の地位を曖昧にしておいたのは、この複雑な歴史に負うところが大きいと筆者は思う。

Next: 日本は邪魔な屏風。中露が台湾・尖閣諸島・北方領土を狙う理由



なぜ中露は台湾・尖閣諸島・北方領土を狙うのか

ロシアは何故に、北方領土を手放さないのか?理由は簡単である。冬でも凍らない北方四島の海から太平洋に出るためだ。中国は何故、尖閣諸島にこだわるのか?その理由も簡単である。太平洋に出るための拠点として、そこを自国の領土にすれば戦闘機の滑走路を建設できる。そこで巨大な滑走路を敷くことは空母を何隻も常駐させておくことに等しい。台湾有事になれば、日本に石油が入りにくくなる。場合によれば大幅減少する。

日本列島は地政学上、ロシア・中国・北朝鮮にとっては最も邪魔な存在となり、太平洋に出るための「邪魔な屏風」として現存する障壁である。ロシアも中国も北朝鮮もこの「邪魔な屏風」を何とかしたい。

習近平は4期目を決めるだろう。この年に世界を大きく変えたがることになるかもしれない。そうすると具体的には2027年の台湾有事である。4期目の習近平が動くからでる。

ウクライナの要請を断り、武器輸出の機会を逃した痛手

河野デジタル相、は防衛装備を海外に供与し、実戦で有用であることを証明して、輸出を拡大することの重要性を強調している。「反撃能力」のことを自民党が「敵地攻撃能力」と言っていたのを名称変更した。

これについて河野氏は「そんなことに議論を費やすよりも、そんなことはただ“抑止力”と言えばいいのです」と言っている。抑止力は必要である。ただし、それはどう使って何を抑止するのか、対外的にそれをどう説明するのかということは欠かせない。それを決めた上で、どんな装備が必要かを議論しなければならなくなる。筆者も全くその通りだと思う。

何故そういう表層的な議論になってしまうのか?これは専守防衛という意味のない議論を長年やってきたからだという。投資によって生産性を上げたり、技術力を高めたりするためには、防衛産業はどうしたらいいのか?そのためには発注を平準化すべきだし、発注量を増やしてやらなければいけない。企業任せにするのではなく、競争力を強めるための政策を打っていく必要があると河野氏は主張する。

そうでないと防衛関連事業が撤退する必要が相次ぐことになる。これが実態である。防衛装備の生産量を増やすには輸出が欠かせないとも説いている。筆者もそう思う。

続きはご購読ください<残約15,000字>。

<山崎和邦の投機の流儀vol.535 9/4号>

第1部:当面の市況
(1)市況コメント:一足一刀の間境で、相場と対峙したい
(2)海外勢、8月第4週に日本株売り越し
(3)4日続落、諸株一斉に安い中で、東電だけが10%高をした背景
(4)8月市況を振り返れば・・・
(5)米国に比べて日本株は底堅い
(6)再び、FRBの動向について惑う
(7)遣隋使ならぬ遣唐使、これをもじって岸田氏は「検討使」と揶揄されかねない。この岸田首相は国政選挙空白の「黄金の3年間」を使い切れるか?
(8)FRBの使命は、通貨価値の安定と雇用発展である。株式市場の安定ではない
(9)FRBが追加利上げに踏み切れば、株式市場は最近の上昇分を全て失う恐れがある
(10)「恐怖指数」が急騰した月末、構造的には割安

■ 第2部:中長期の見方
(1)FRBは今後、どういう行動をとるか?
(2)「国策に売りなし」─「貯蓄から投資へ」
(3)原油価格は下落に向かう
(4)世界経済は1970年代のようなスタグフレーションに向かっているのか?
(5)プーチンの人柄形成について要約する
(6)中国の台湾包囲演習が意味するもの
(7)台湾有事は日本にも当然、影響を与える
(8)中国の台湾との問題
(9)台湾・尖閣諸島・北方領土の問題
(10)ウクライナの要請を断り、武器輸出の機会を逃したと河野デジタル相は言う
(11)「安倍元首相の国葬」について

■ 第3部;超長期の見方
(1)超長期に見れば、日本株は決して高過ぎはしない。モノの見方には(A:循環的な見方)と(B:構造的な見方)とがある
(2)世の中が「不況シナリオ」に染まりつつあることへの用心

[ 来週号に回す項目 ]

〇「会社は誰のものか?」というおかしな議論
〇「人材」「人財」「人罪」「人在」

※これらの項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →購読!

<購読ですぐ読める! 9月配信済みバックナンバー>

※2022年9月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2022年9月配信分
  • 山崎和邦の投機の流儀vol.535(9/4)
  • ★★★2022年9月分一覧 週報『投機の流儀』-PDF形式-(9/4)

いますぐ購読!


※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年9月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます。

2022年8月配信分
  • 山崎和邦の投機の流儀vol.534(8/28)
  • ★★★ 2022年8月分一覧 週報『投機の流儀』-PDF形式-(8/28)
  • 山崎和邦の投機の流儀vol.533(8/21)
  • ★★★ 2022年8月分一覧 週報『投機の流儀』-PDF形式-(8/21)
  • 山崎和邦の投機の流儀vol.532(8/14)
  • ★★★ 2022年8月分一覧 週報『投機の流儀』-PDF形式-(8/14)
  • 山崎和邦の投機の流儀vol.531(8/7)
  • ★★★ 2022年8月分一覧 週報『投機の流儀』-PDF形式-(8/7)

2022年8月のバックナンバーを購入する

【関連】安倍元首相の死と共に終わる自民党。いよいよ国民の「消極的支持」すら失う日が来た=鈴木傾城

【関連】国葬費用2.5億円に抑えるも警備費30億円超?法的根拠なき“なんちゃって国葬”で世界に知れ渡るカルト国家ニッポン=今市太郎

image by:Hamara / Shutterstock.com

山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2022年9月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

山崎和邦 週報『投機の流儀』

[月額1,500円(税込) 毎週日曜日(年末年始を除く)]
大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。