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高成長インドにも減速懸念【フィスコ・コラム】

欧米のスタグフレーション入りが懸念されるなか、インドの国内総生産(GDP)は2ケタの伸びを記録。ただ、インフレ高進でインド準備銀行(中銀)が引き締め姿勢を強めており、インド経済は失速する見通しです。議会選の前哨戦となる州議会選挙への影響も注目されます。

8月31日に発表されたインドの4-6月期GDPは前年比+13.5%と、1-3月期の+4.1%から成長が加速しました。2ケタの伸びは昨年4-6月期以来。新型コロナウイルスまん延に伴う制限措置のダメージが薄れるにつれ内需が押し上げられ、製造業、サービス業とも大幅に改善したことが寄与しました。テクニカル・リセッションのアメリカをはじめ先行き不透明感が深まる主要国とは対照的です。

GDPに続いて9月1日に発表された製造業PMIは56.2と、好不況の境目50を上回る水準を維持しており、製造業の好調ぶりを裏付けています。企業業績も上向いているとみられ、株式市場も活性化しています。NYダウはロシアのウクライナ軍事侵攻で大きく下げ、その後は下げ止まったものの戻りが限定的です。それに対し、インドの主要株価指数SENSEXはすでに3月時点の水準に持ち直しました。

ただ、インド経済の先行きはそれほど明るくはありません。7-9月期GDPは伸びの鈍化が見込まれています。2022年は通年で7%超の成長が期待されているものの、専門家の間では金利高が経済活動を弱めるとみているようです。消費者物価指数(CPI)は4月の2014年以来の高水準となる前年比7.79%をピークに低下したものの、7月は6.71%と高止まり、成長の足かせになっています。

中銀は2022年5月から引き締めサイクルに入り、それまで維持していた4.00%の政策金利を段階的に引き上げています。GDP発表前に開催した定例会合では50bp引き上げ、直近は5.40%となりました。ドル高を背景とするルピー安は物価上昇要因で内需主導型のインド経済にとって痛手になるため、中銀は9月と12月の追加利上げにより年末時点で6%程度としたい考えです。

インドのシンクタンクによる雇用情勢の調査で、8月の失業率は8.28%と前月から悪化し、過去1年間の最高を記録。PMIの調査でも新規雇用は縮小しており、経済活動の拡大のわりに労働市場の停滞が目立ちます。今年に入って行われた州議会選挙ではモディ首相率いるインド人民党(BJP)が5州のうち4州で第1党となりましたが、経済情勢次第で今後の選挙結果も変わるでしょう。

足元の高インフレと減速への懸念は、2024年の総選挙に向け弾みを付けたいモディ政権にとって試練になるかもしれません。
(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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