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株価4割下落でも“お家騒動”に揺れるクックパッドはまだ割高だ=栫井駿介

創業者と前社長の対立により株価がピークから4割下落したクックパッド<2193>ですが、私の感覚ではまだ高い水準。今後、現在のPER40倍水準を維持できるかは疑問です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

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PER40倍を正当化する2つの道筋――創業者の答えは「待った」

ビジネスモデルは非常に優秀

クックパッドは、ユーザーが投稿したレシピをまとめて掲載しているサイトを運営しています。月間利用者数は約6,000万人と、国内人口の半数が利用しています。有料会員数は180万人と、これまで順調に伸ばしてきました。

レシピを投稿するのはユーザーですし、閲覧者を有料会員に引き込めば安定的な収益が見込めるので、ビジネスモデルとしては非常に優秀です。営業利益率は50%近く、とんでもない数字を誇っています。

現在の時価総額は約1,600億円

規模感は売上高150億円、当期純利益40億円と比較的小ぶりにとどまっています。それに対し、時価総額は現在でも約1,600億円あります。PERで換算すると40倍にもなります。

クックパッド<2193> 日足(SBI証券提供)


クックパッド<2193> 月足(SBI証券提供)

PERが高いということは、それだけ成長性が見込まれているということです。

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クックパッドの成長に暗雲。PER40倍の維持は難しい

クックパッドの顧客は料理をする人であり、その中でも有料会員になるような人は毎日料理をする主婦であることが多いでしょう。対象となりそうな30~40代の主婦の数は約1,000万人です。

それに対して有料会員が180万人ですから、すでにかなり高い有料会員率を持っています。逆に言えば、国内における成長余地は限られていると言えます。

ここから成長するためには、クックパッド以外の分野に事業を拡大するか、日本を出て海外へ本格進出する必要があります。

しかし、創業者の佐野氏は、前社長の穐田氏を中心に進められたM&Aを活用した事業の拡大路線に待ったをかけました。これまで買収してきた企業も売却する方針を示しています。

佐野氏の方針では、クックパッドが今後何で成長していくのが見えにくくなっています。料理を中心とする事業展開を掲げていますが、それだけでPER40倍を維持できるか疑問です。

仮に順調に有料会員が倍増し、純利益が2倍になったとしても80億円、甘く見ても時価総額1,000億円がいいところでしょう。

これまでも株価は下落を続けていますが、私の感覚ではまだ高い水準です。少なくとも今後の成長性に関して、市場は冷静に見ていると思います。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年5月18日号)より

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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