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戻りを試すベトナム株【フィスコ・コラム】

ベトナム株は8月以降の急激な下げがようやく一服し、主要株価指数は持ち直しつつあります。背景にあるのは米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策の転換。ベトナム経済の中長期的な成長が見直され、2年ぶり安値圏からどこまで戻すか注目されます。

ベトナムの代表的な株価指数VN指数は11月末に心理的節目の1000ポイントを回復した後、方向感の乏しい値動きでした。そのまま持ち直すか、あるいは再び軟調地合いに沈むのか注目されましたが、このところ上昇基調を強め1100ポイントを目指す展開となっています。売買代金も増加し、活気を取り戻しつつあります。特に海外勢が買いを膨らませ、銀行や不動産、エネルギーが相場をけん引しています。

VN指数はコロナ禍からの回復を背景に今年3月には過去最高値の1500ポイント台に浮上しました。ただ、その後は下げに転じ、8月には一時1300ポイント付近に持ち直したものの、買いは続かず失速。投資家に慎重姿勢が徐々に広がり始めました。10月には大規模な売りが下げを主導しました。3月高値から50%程度の値下がりとなった1000ポイント割れの際には「メルトダウン」などとも報じられました。

ベトナム株の回復は米金融政策と無関係ではありません。ベトナムの消費者物価指数(CPI)は中央銀行の目標上限である4%を最近上回ったほか、通貨ドンの記録的な下落によってインフレ圧力が強まり、企業の借入れコストの増加が収益を圧迫するとの思惑が株価を押し下げてきました。地合いが好転した背景には、米FRBによる金融引き締め方針の転換があります。

株価指数への寄与度の大きい不動産の買戻しも足元の株高の主要な要因です。今年に入り、不動産大手のFLCグループの会長が自社株取引に絡む株価操縦の容疑で逮捕されたほか、バンティンファット・グループでも社債取引で不正行為が発覚しました。同グループと関係が深いサイゴン商業銀行で取り付け騒ぎまで発展しました。不動産セクターの相次ぐ不祥事は、株式市場の収縮をもたらす要因となっていました。

ベトナム政府は不動産取引の規制を強めた後に支援に乗り出し、市場に安心感を与えました。こうした動きも足元の回復に寄与しているようです。一方、ベトナム国会は前月、主要15項目で構成する2023年の社会・経済目標を採択しました。GDP成長率を+6.5%に、また、1人当たりGDPは4400ドルにそれぞれ引き上げました。同国の成長余地は大きく、改めて見直されれば、株価はさらに大きく持ち直すことが期待されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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