新型コロナウイルスの感染症法上の分類が大型連休明けの5月8日に「5類」に移行される。とはいえ、新型コロナウイルス感染症情報が示すデータから分かるのは、コロナにかかる確率や、重症化、あるいは死亡に至る危険性が大幅に減少したわけではないことだ。つまり、今回の引き下げは、国民の立場にたったものというより、行政側の都合である可能性が高いのだ。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)
※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2023年1月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
5月8日から新型コロナ「5類」へ
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が大型連休明けの5月8日に「5類」に移行される。
変更後は感染者や濃厚接触者らの待機期間は撤廃され、医療は段階的に通常の体制に移る。診察を受けられる場所は現在、都道府県が指定している発熱外来が中心だが、一般の病院などにも広がる。
同時に、診療報酬の上乗せや病床確保のための財政措置は段階的に縮小する。
現在、コロナの検査や入院の医療費は「公費」で賄っている。こうした措置は当面維持しつつ、段階的に縮小する。
今後は「自己負担」に移行する時期が焦点となる。
危険性が下がったワケではない
とはいえ、新型コロナウイルス感染症情報が示すデータから分かるのは、コロナにかかる確率や、重症化、あるいは死亡に至る危険性が大幅に減少したわけではないことだ。
つまり、今回の引き下げは、国民の立場にたったものというより、行政側の都合である可能性が高いのだ。
新型コロナウイルス感染症情報(出所:データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-)
5類への移行について、東洋経済に専門医の見解があるので、以下に引用する。
新型コロナは感染力が非常に強いので、決してインフルエンザと同等ではありません。実際、死亡率は低いにもかかわらず、全体として死亡者が増えているのは、感染者が増えたためです。どうしても体力が落ちているお年寄りを中心として、コロナによって持病が悪化して亡くなってしまっています。<中略>
5類になると行政による病床確保や入院調整がなくなるため、自分で受診先を見つけなければならなくなり、今まで以上に受診の際には混乱が生じる可能性があります。
また、治療費が公費から1割~3割負担になるため、感染者が検査や治療を控えて受診が遅れ、重症化につながる恐れもあります。<中略>
これからは強制力がなくなりますから、翌日出歩いてもとがめられません。だから、隠れた感染者が増えて感染する機会が増えてしまうでしょう。自分は感染したくないという人は、自分で自分を守るしかありません。<中略>
病院側から見た場合、これまで新型コロナ病床を確保していた医療機関には政府からの補助金が給付されていましたが、5類になることで給付が打ち切りになれば、民間病院を中心にほかの病気を診るために病床を埋めてしまい、積極的に新型コロナの診療を行う医療機関は減るでしょう。
5類になるということは自己責任になるということだ。これまでは行政の命令に従っていれば、例え感染しても「公費(国民が支払っている税金と社会保険料)」から賄われていた。
しかし、今後は自己負担となる。おまけに、自分で受診先を見つけなければならなくなるが、受け入れる医療機関は必ずしも多くはないようだ。
つまり、これまで以上に、「自己防衛」が必要となる。
Next: これまでも自己責任。「公費」を負担しているのも私たち国民
これまでも自己責任。「公費」を負担しているのも私たち国民
とはいえ、これまでも政府が国民を守っていたわけではない。
例えば、ワクチンの追加接種を受けながら感染し、死亡した多くの人々の命が返ってくることはない。また、ワクチンの副反応で入院したと思われる人々の治療費が「公費」で賄われたわけではない。副反応はコロナではなく、既往症の悪化や、別の病気の発症だからだ。
加えて、ワクチンの副反応だと認めてもらえたかどうかも分からない。
行動制限で心身ともに健康を害した人々。コロナが恐くて病院に行かず既往症を悪化させた人々。コロナでも入院先が見つからず自宅療養などで死亡した人々。これらの被害者たちも「公費」で賄われることはない。
それどころか、コロナ対策自体が総合的な国民の健康や利益に、あるいは医療機関の健全な運営に叶っていたかどうかの検証もなされない。
確実だったのは、行動制限によって多くのビジネスが危機的になったことだ。
つまり、自分で意識しているかどうかは別として、政府が自分の命や健康に責任を持ってくれることなどないのだ。
そもそも「公費」を負担しているのも自分だ。2類であろうが、5類であろうが、常に自己責任であることには違いがない。
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』(2023年1月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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