マネーボイス メニュー

コラム:売り圧力増すポンド

英中銀による金融引き締め方針の後退を受け、ポンドの売り圧力が強まりそうです。英国経済の減速懸念やストライキの拡大によるポンド売りも本格化し、ドルだけでなく他の主要通貨に対しても軟調気味です。不支持率が上昇中のスナク政権は事態を打開できるでしょうか。

ポンド・ドル相場は1月下旬にかけて米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ休止観測によるドル売りで、1カ月超ぶりの高値圏である1.24ドル台半ばに一時浮上。ただ、2月に入り冴えない値動きが続いています。英中銀は1-2日に開催した金融政策委員会(MPC)で政策金利を10会合連続で引き上げ、2008年以来の高水準としました。ただ、利上げはピークに達したとの見方から、ポンド買いは強まっていません。

英中銀は同国の消費者物価指数(CPI)は前年比で10%を超え、インフレ圧力が高まれば一段の引き締めが必要としました。その上で、利上げの効果により今後のインフレ鈍化を見込み、年末には4%を割り込むと予想。声明では積極的な利上げについてピークが近づいていると示唆(しさ)しています。これによりポンド売りが進み、ドルや円のほかユーロ、スイスフランなどに対しても下げが加速しました。

英中銀の政策決定に先立ち、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しを発表、そのなかでイギリスについては-0.6%と前回10月の+0.3%から大幅に下方修正しました。ウクライナ戦争によるガス価格の高騰や2021年12月以降の英中銀の利上げがその大きな要因と指摘しています。ユーロ圏も同じような状況で23年は低迷するものの、想定ほどには悪化しないとの観測です。主要先進国のマイナス成長予測はイギリスだけです。

英国内に目を向けると、生活費の高騰を受け、賃上げを求めるストライキの動きが拡大しています。交通機関や医療サービス、最近は公務員も加わり約50万人とこの20年では最大規模に拡大しました。そうした抗議活動により、10%程度の賃金上昇が実現しているもようです。ただ、消費の回復でかえってインフレを高めるため、英国経済の混乱は深まるばかりでしょう。

スナク英首相は発足当初こそ増税や歳出削減を柱とした財政再建策を打ち出し、金融市場での信認を得ました。ただ、その後は精彩を欠き、支持率調査では野党・労働党のスターマー党首にリードを許しています。スターマー氏は先のダボス会議で経済界から高評価を受けました。与党・保守党の支持が低迷するなか、ストライキの拡大と労働党のアピールが結びつけば政局流動化が警戒され、一段のポンド売り要因となりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。