先月の雇用統計、非農業部門雇用者数は+51.7万人と衝撃的な強さで、ドル円の流れが大きく変わることになりました。当然ですが、今日の雇用統計もそのポテンシャルを秘めていますので、最大限注目しておきましょう。(ゆきママ)
わずか1ヶ月分の経済指標で手のひらを返したパウエル!今後はインフレ指標ガチャに
先月の超強い雇用統計、そしてCPI(消費者物価指数)の上振れが原動力となって、大きくドル高に傾く展開になっています。これは株式市場にも言えることですが、もはやマーケット全体がインフレ指標ガチャ状態です。
理由としては、誰もFRB(米連邦準備制度理事会)、金融当局を信用していないことが挙げられます。パウエルFRB議長は、インフレは一時的としていたのにも関わらず、手のひらを返したように30年ぶりに0.75%の大幅利上げを断行しました。しかも、4回連続で。
これを受け、市場関係者は1年先、2年先を考えたところでまったく意味がないことに気がついてしまいました。たった数ヶ月で フォワード・ガイダンス(金融政策見通し)が180度変わってしまうなら、もはや先を織り込んで考える必要はないと。
なので、特に重要視されているインフレ指標を見て、それに一喜一憂して過剰に反応する相場状況となっています。
そして、今週行われた議会証言においても、パウエル議長は態度を急変させ、「新たなデータは最終的な金利水準が従来の予想よりも高くなる可能性が高い」とし、「正当化されれば利上げを加速させる準備がある」と、0.5%に利上げ幅を拡大することを示唆しました。
先月まではディスインフレ(物価の上昇率が低下していく状況)に満足していると語っていましたが、先月の雇用統計やCPIを受けて変わってしまったということです。
この手のひら返しは今に始まったことではありませんが、引き続き経済指標のガチャ化は決定的であり、特にインフレ指標においては、その傾向が強いでしょう。
したがって、硬直性が高いとされる賃金インフレの手がかりを考えるうえで、今日の雇用統計で発表される平均時給は、非常に大きな意味を持ちますから注目しておきましょう。
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雇用指標は堅調だが強い数字を期待するのは禁物か
それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望を考えていきましょう。
新規失業保険申請件数など若干悪化した数字も見受けられますが、非製造業部門、サービス業などは引き続き堅調で、通常であれば問題ない数字を期待したいところでしょう。
ただし、非農業部門雇用者数の数字は前月比であり、季節調整が行われている点に注意したいです。何が言いたいかというと、前月が+51.7万人増と極めて強かったことの反動がありそうなこと、そして、2月は労働者が増えやすい傾向があります。
2月は例年気温が上昇する時期であり、冬が明けて労働意欲が高まりやすい時期でもあります。しかし、今年に限って言えば、米国の1月は記録的暖冬でしたから、新たに就職するタイミングが早まったとも言えます。
つまり、1月は労働者が少ない時期なのに、今年は暖冬で季節調整すると例年より多かったため、1月の雇用統計の強さにつながったということです。
裏を返せば、例年2月は労働者が多くて当たり前の時期なので、ここから上積みがあるかはかなり微妙と言えそうです。
0.5%の利上げは織り込み済み
すでにパウエル議長が利上げペースの加速に言及したことで、0.50%の利上げはある程度織り込まれていますから、よほど強い数字が出れば別として、予想並かちょっと強い程度なら、そこまでドル高にはならないように思います。
逆に、弱い数字が出た場合は、パウエルの豹変、金融政策見通しが大きく変化することになりますから、為替相場としてはドル安ショックになりやすいでしょう。ここ最近はドル高一辺倒だっただけに、反動も大きそうです。
非農業部門雇用者数は+20.5万人増と予想されていますが、前月比であることや季節調整を踏まえると、思わぬ悪化、マイナスすらあり得るかと思います。
どうしても初動は非農業部門雇用者数の数字に引っ張られやすいので、これが弱めなら一気にドル円は下に走りそうです。流石に135.00〜135.50円レベルではサポートされるでしょうが、ここもあっさりなら一気に133円も見えます。
また、133円に行くための条件としては、平均時給(賃金上昇率)の方が重要です。予想では前月比+0.3・前年比+4.7%となっています。前月比では横ばいですが、前年比は1月の+4.4%から伸びが加速すると見られており、実際にそうなれば、仮に非農業部門雇用者数の数字が弱くとも、あまり下げないか、むしろジリジリ上昇する可能性すらあります。
なので、初動の値動きに惑わされず、しっかり平均時給も確認した上でトレードしていくことが重要でしょう。前月比でマイナスとなったり、前年比で1月分を下回ったりするようなことがあれば、仮に非農業部門雇用者数が予想を上回ってもドル円は下方向でしょう。
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今夜の想定は1ドル=133.50〜138.00円
トレードアイディアとしては、基本的にショート・戻り売りでしょうか。予想を多少上回る程度では上値もたかが知れていますからね。逆に弱い数字が出た場合、ドル高の巻き戻しが起こる可能性があります。
あとは、雇用者数が強めに出て平均時給が予想を下回っているなら、戻り売りを試したいですね。138円以上はなかなか厳しいように思います。
発表前にポジションを持つなら、136.50〜137.00円以上で軽めにショートして、数字を受けて追加するかどうかを決めたいですね。
結果を見てからの場合は、平均時給が予想を下回って前月比0.0%前後、前年比が+4.4%以下になった時にショートでしょうか。ただ、この場合は135円半ばより上ぐらいで入れると良いかと思います。流石に135.00円は固そうなので、トレードする際はご注意ください。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年3月10日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による