今回は「マンションのことなら長谷工〜♪タラタタッタタ♪」でお馴染みの長谷工コーポレーション<1808>を分析します。キャッチーなCMのイメージ通り(?)魅力的な配当政策を打ち出しています。1株あたり配当金は下限80円と設定。23年3月8日現在の株価水準1,600円を基準にすると配当利回り5%を下回らない計算です。この魅力ある長谷工の強みと弱みは何か?配当は続くのかを解説していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
マンション建設の雄、長谷工コーポレーション
長谷工とはマンション専門の建設会社です。
主に関東・大阪・名古屋など大都市を中心にマンション建設を行っています。

長谷工コーポレーション<1808> 月足(SBI証券提供)
コロナ禍で業績は落ち込みましたが、現在は少しづつ回復しています。回復のペースが遅い理由は原材料高の高騰です。

長谷工コーポレーション<1808> 業績(SBI証券提供)
- 建設関連事業:マンションの企画・設計・施工を行う。新規住宅が主なマーケット
- サービス関連事業:マンション運営に関連するサービス運営。リフォーム・マンション管理業務など。
- 不動産関連事業:マンションの分譲、分譲の統括
主要事業は建設関連です。22年3月期決算では営業利益の7割を占めています。
出典:22年3月期 決算短信より作成
数ある建設会社の中で、なぜこの会社に投資するのでしょうか?長谷工の強みを考えます。
収益効率で競合他社を上回る
マンション建設業界の基本構造は、企画・販売を行うデベロッパーと呼ばれる不動産会社が「マンションを作ります。これを作りたい建設会社はいますか?」と呼びかけ、建設会社がそれに応じるという流れが一般的です。しかし、このような下請け的な構造では、建設会社側が競合し「うちの方でできるだけ安く作ります」と価格競争が起こりがちです。
しかし長谷工は建設会社でありながら、デベロッパーにマンション建設の提案ができる機能を持っているのが特徴です。
長谷工は自らマンション建設用地を探し、デベロッパーに対して「〜と言う良い土地がありますが、長谷工は〜と言うプランでマンションを立てようと思います!ここにマンションを建てたいデベロッパーはいますか?」と提案を行います。
デベロッパー側では「うちも建てたい、私も建てたい」と競争になり、結果としてオークションのイメージで価格が釣り上がっていく仕組みです。
この長谷工のビジネスモデルを特命受注方式、と言います。
このビジネスモデルが成り立つ根本的な理由は、「長谷工が良い土地情報を仕入れているから」です。
IR担当者の話では、そもそもマンション建設他社は土地情報取集部隊がいない可能性がある、とのこと。一方で長谷工は約200名の土地情報取集部隊が、信託銀行や町の不動産屋に足を運び土地情報を得ているのです。
そして土地の契約(地主から土地を買い取る)の段階に入ると、どんなマンションを立てるのか?スケジュールはどうですか?など総合的な提案が可能です。長谷工はマンションに特化していますから、長年のノウハウが蓄積されています。
地道な情報収集とマンション特化という専門性が噛み合い、競合他社よりも高い収益構造を誇ります。
営業利益率 | ROE | |
長谷工 | 9.09% | 13.42% |
大成建設 | 6.23% | 8.36% |
大林組 | 2.13% | 4.15% |
清水建設 | 3.04% | 5.83% |
鹿島建設 | 5.93% | 11.41% |