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期待外れ「アドバンテスト」減収減益で株価下落は買い?半導体銘柄と生成AIブームの今後をどう読むか=栫井駿介

7月26日に半導体のテスターを作っているアドバンテストの決算が発表されましたが、数字だけ見ると非常に悪いものとなっています。これによって、アドバンテスト、ひいては半導体関連企業の今後に不安を覚えた方も少なくないでしょう。しかし、表面的な数字に惑わされるのではなく、適切な企業分析を行っていただきたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

予想外?不調な決算

これがアドバンテストの2023年度第一四半期の決算です。

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2022年度と比べてかなり悪い数字となっています。

前四半期が好調だったがゆえに今四半期の下落が目立っています。

しかし、最近話題になった生成AIに使われるNVIDIAのGPUへの需要が増すにつれて、アドバンテストのテスターへの需要も高まると見られていて、株価は大きく上がっていました。

アドバンテスト<6857> 週足(SBI証券提供)

アドバンテスト<6857> 週足(SBI証券提供)

これだけ期待されていながらこの決算ということで、なかなか厳しいという見方が広がっています。

なぜここまで大きなマイナスになってしまったのでしょうか。

なぜ業績悪化?

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決算説明資料の事業セグメント別売上高を見ると、「半導体・部品 テストシステム事業」のところが前期は1,000億円以上あったものが705億円に萎んでしまっています。

さらにその内訳としては、ロジック半導体を検査する装置である「SoCテスタ」の需要が減っていて、メモリのテスターの需要も大きく減ってしまっています。

たしかに、今は半導体市場が全体として厳しい状況です。

コロナ禍でPCやスマートフォンの需要が非常に盛り上がって、その時に各社が増産のために大きく投資をしました。

今はその反動減となっていて、各半導体会社苦しい状況に陥っています。

一方で、そもそも半導体の需要には波がある(シリコンサイクル)ことは明らかでした。

その中でもアドバンテストへの期待が高かったのは、AI需要によってデータセンターの需要が盛り上がると思われていたからです。

ところがふたを開けてみるとデータセンター投資も減速したということです。

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これまではAIに関するデータセンターの投資需要が盛り上がるということで株価が上がっていたのですが、ここには真逆のことが書かれています。

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そもそもアドバンテストは設備投資事業にかけるものです。

各半導体メーカーが工場を作る時に、そこに設備を納入することで売上を立てています。

しかし、新しく作った工場は少なくとも数年間使うことになるため、一度大きな設備投資があるとその後需要が減退することは当然のことと言えます。

アドバンテストの業績予想としても当初から減収減益の予想がされていましたが、ここまで大きく減るものかということと、GPUを作るための設備に対する需要が発生すると思われていたものの売上を増やすほどは発生していないというのが現状です。

Next: 長い目で見れば、再び追い風が吹く?株価はここからどう動くか

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