中国証券監督管理委員会は7日、1月4日に導入したばかりの株式サーキットブレーカー制度を一時的に停止すると発表しました。金融アナリストの久保田博幸氏はこれについて「素早い対応と言える」とする一方で、実情は「停止するほかはなかったのではなかろうか」との見方を示しています。(『牛さん熊さんの本日の債券』)
中国がサーキットブレーカー制度を「停止するほかなかった」理由
サーキットブレーカーが株式市場のブレーカーに
2016年は株式市場や外為市場にとって波乱の幕開けとなった。
サウジアラビアとイランとの国交断絶や北朝鮮による水爆実験とされる核実験による地政学的リスクも材料視されたが、それ以上に人民元安や原油安が波乱材料となった。
中国の人民元の引き下げによる株価の急落は昨年8月にも経験しているが、今回は中国の「サーキットブレーカー」制度の導入が市場を混乱に陥れた格好になってしまった。
サーキットブレーカーそのものは日本の債券先物市場などでも導入されているシステムであり、特に目新しいものではない。しかし、中国の現在の株式市場には適さなかったようである。
中国のサーキットブレーカー制度は、CSI300指数が5%下落したことでサーキットブレーカーが発動されて、中国のすべての株価指数および株価指数先物は15分間、取引が停止される。
再開後に7%下落すると、その日の取引は停止される仕組みとなっている。
1月4日に早速、サーキットブレーカーが稼働し、再開後に7%下落して当日の取引が停止された。
年末にむけての米国株式市場の下落もあったが、12月のFRBの利上げによる世界的な資金の流れに変化が現れ、さらに中国経済の減速傾向も顕著となり、年初に中国株が下落し、サーキットブレーカーが稼働したことで、さらに不安感を募らせた。

上海総合指数 15分足(SBI証券提供)

上海総合指数 週足(SBI証券提供)
1月7日の10時15分に中国人民銀行が人民元の基準値を1ドル6.5646元と2011年3月以来の元安水準で設定した。通貨安による中国からの資金流出が意識され、通貨安そのものが中国経済の悪化を示すことにもなり、これが不安視された。
10時30分にスタートした中国株式市場は売りが先行し、再びサーキットブレーカーが稼働し、再開後に7%下落して、取引開始からわずか30分後に当日の取引が停止されてしまったのである。
つまり売りたくても売れない状況が形成されてしまったことで、さらに不安感を募らせるという悪循環を招くことになった。
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