上級国民のための安倍政治、上級国民のためのTPP=九州大学准教授・施光恒

政府与党は12日、野党が求めている臨時国会の召集見送りを決定しました。「TPPなどに関する議論は出尽くした」との見解ですが、これに異を唱えるのが九州大学准教授の施光恒氏。議論は出尽くしたどころか、全体で2000ページ以上とされるTPPの「暫定案文」すら日本語訳された「概要」は97ページに過ぎず、これではまるで「TPPは英語が達者な上級国民だけで決めるから、一般国民は黙っとけ」と言っているようなものだと批判します。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年11月13日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

なぜ英語圏の国が一方的に有利になるルールを飲むのか

「TPPの議論は出尽くした」「臨時国会は不必要」の国民軽視

TPPについて政府は、どうも逃げの一手のようですね。ここ数日、話題になっていますが、臨時国会は結局、開催しないようです。

臨時国会召集見送りへ、週内にも判断=政府・与党筋(ロイター、2015年11月12日)

リンク先のロイターの伝えるところによると、政府は、11月10日、11日の2日間に開催した衆参両院での「閉会中審査」で、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などをめぐる議論は「出尽くした」と判断したとのことです。

臨時国会を開かないのは、2005年以来10年ぶりですので、とても稀なことです。上記のように、政府は、「議論は出尽くした」とか、あるいは「わざわざ臨時国会を召集までして議論するテーマがない」「安倍首相の外遊が多く、日程が合わない」なとど言っています。

これ、残念ながら国民軽視、民主主義軽視ですよね。(-_-;)

TPPは、先月初めに「大筋合意」に至りましたが、合意内容や、TPPが国民生活に及ぼす影響など、不透明なことばかりです。また、自民党が、2012年12月の衆議院選挙のときに掲げていた公約は守られていないように見えますが、その検証の必要も大いにあるでしょう。

どう考えても、臨時国会を召集して、大筋合意の内容や国民生活への影響についてきちんと説明すべきです。

TPPを国民に説明する気がない政府、日本語訳は「概要」のみ

TPP問題に詳しい弁護士・岩月浩二氏が、最近ご自身のブログ(『街の弁護士日記』政府は日本語訳を開示せよ TPP「暫定案文」2015年11月8日)で指摘していますが、政府は合意された条文(「暫定案文」)をきちんと翻訳していません。日本語では大幅に短縮された「概要」が読めるだけです。

「暫定案文」の全体は、2000ページ以上あると言われていますが、日本語訳された「概要」は97ページしかありません。政府のHPには、「暫定案文」については、ニュージーランド政府のホームページに英語で全体が出ているからそちらを参照せよとリンクが貼ってあるだけです(内閣官房「TPP政府対策本部」のHP「TPP協定暫定案文等の公表について」)。

これもおかしいですよね。TPPについてきちんと国民に説明する気がないとしか思えません。

「暫定案文」全体を、正確かつ読みやすい日本語に翻訳し、公開するというのが、TPPをめぐる国民的議論を深める大前提ですが、政府はそれを怠っています。

TPPの正文は英語、スペイン語、フランス語。日本語は排除される

先日発表された今年の「流行語大賞」の候補なかに、「上級国民」という言葉がありましたが、「これからの政治は、英語が達者な上級国民だけで決めるから、一般国民は黙っとけ」ということなのでしょうかね。(+_+)

日本語訳ができていないということは、おそらく、おおかたの日本の国会議員も、自分の関心のある分野であっても、「暫定案文」にほとんど目をとおしておらず、理解もしていないでしょう。

また、岩月弁護士のブログでも指摘されていますが、TPPの正文は、英語とスペイン語とフランス語となるようです。日本語は排除されます。これも大問題だと思います。

経済規模からみて、日本はTPP域内で米国に次ぐ第2位の地位を占めています。なぜ、日本語が排除されてしまっているのでしょうか。政府は、「日本語も正文に含めるべきだ」という当然の交渉をしなかったのでしょうか。

控えめを美徳とする日本人には「日本語も正文言語に含めるべきだ」と主張することがはばかられるというのであれば(国際交渉でそういう遠慮は必要ないと思いますが)、せめて、EUのように、多言語主義を採用すべきだと主張し、TPP交渉参加国12カ国のすべての公用語をTPP域内の公用語として認め、全部の言葉で正文を作るべきだというぐらいの主張はできなかったものでしょうか。

なんか情けないですね…。(´・ω・`)シカーリシロオ…

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