長い目で見れば、再び追い風が吹く?
となると論点としては大きく2つです。
1つは、NVIDIAのアニュアルレポートに取引先としてアドバンテストが書かれていて、NVIDIAが伸びればやがてアドバンテストも伸びることが期待されますが、本当にそれが発生するのかということです。
もう1つは、もし発生するとしてそれがいつ発生するのかということです。
実際にアドバンテストはテスター分野で約57%のシェアを占めていると言われていて、少なくともこの分野では安泰です。
重要なのはマクロ的にそこに対する需要が盛り上がるかということです。
NVIDIAのGPUを作るためにはアドバンテストの商品が必要であると断言でき、AIの需要が高まることを当然とするならばアドバンテストへの需要が高まることも確実と言えます。
しかし、今期の決算を見ると、まだそれが必ずしも発生していないです。
AIを動かすための半導体を作る設備をいつ増強するのかということが今の論点です。
半導体各社は半導体の冷え込みと同時に世界経済の冷え込みも警戒していて、大型の設備投資をしても売れなければ財務が苦しくなってしまうので、設備投資には慎重になってしまいます。
様々な要素があり、いつ工場に投資をするのか見通せない状況になっています。
昨年一昨年までは各国が補助金を出したりして各社が非常に大きな工場投資を行い、今は当然その反動が来ています。
それがいつになるかは分からないですが、長い目で見れば再び盛り上がっていくであろうとは思われます。
今後の株価は?
では、これからの株価はどうなるのか、という話に入ります。
生成AIブームで株価に火が付かなければ、今の減収減益はある程度予想できていたことでした。
それを反映して2022年はずっと低迷していましたが、生成AIという”かく乱要因”が入って株価が大きく上がりました。
それさえ無ければ、株価は6,000円~10,000円のあたりをうろうろしていたような状況ではないかと思われます。
もしその状況で今回の決算だったならば、もう織り込み済みということでもしかしたら株価が上がっていたかもしれません。
しかし、期待が先行して株価が大きく上がったがゆえに、今回のある意味当然の決算がネガティブサプライズと受け取られる可能性が高いと考えられます。
株価で見て、大きく上がっている時に買ったような人たちはおそらく短期的な投資家で、彼らは今回の決算を見て抜ける可能性が高いと思っています。
それを踏まえると、短期的には15,000円くらいまでは下がっても不思議はなく、もし高い時に買ってしまったのならば一旦逃げるということも選択肢となり得るでしょう。
もっとも、長い目で見れば、AIが世の中に浸透すればするほどアドバンテストの商品に対するニーズも高まると考えられ、そこに長期的な期待が持てて、細かい売買がしたくないのであれば下落に目を瞑るのもアリと言えばアリです。
一旦は下がる、ということを踏まえて判断していただきたいです。
バリュエーションを見てみましょう。
PERは46.8倍で表面的には高く見えますが、これは今回の減収減益予想を受けてのもので、前期の1株あたり利益が700円くらいで今の株価が20,000円くらいなので、前期で見るとPERは30倍くらいということになります。
株価が15,000円くらいになったとすると、最高益に対するPER水準は20倍くらいになり、今の業績から見た時の落とし所としては穏当ではないかと思われます。
業績のボラティリティが高い会社でもあるので安定してPERが高いというわけでもないと感じています。
バリュエーション的にも株価の動き的にも当面は15,000円くらいが1つの目安になるのではないかと考えます。
ぜひ参考にしていただければと思います。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年7月31日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。