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なぜ電通“五輪談合”で起訴も株価は上がる?長期投資家から見た本当の企業価値とリスク=栫井駿介

東京五輪の談合事件で話題の電通ですが、今回は電通を株式投資の観点で見てみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

なぜ事件は起こった?電通の闇

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東京五輪のような公的な案件で、電通のような会社が采配することは法律上禁止されています。

しかし、実際は電通の裁量で決まっていって、裏ではお金が動いていた、という事件です。

多くの逮捕者が出て、法人としての電通も起訴されました。

なぜこのような事件が起こってしまったのでしょうか。

<なぜ『電通依存体質』は作られたか?>

そもそも電通はどのような会社で、どのように成長してきたのでしょうか。

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元々電通は広告代理店でした。

テレビ局などから「広告枠」を買い取り、その広告枠と広告を出したい企業をマッチングさせ、マージンを電通が受け取るというビジネスです。

つまり、テレビ局等と企業の両方につながりを持っていることとなり、それが電通の強みとなります。

その後電通はビジネスモデルを発展させていきます。

まず、CMの制作も行うようになりました。

芸能人などを起用して”良いCM”を作り、CMごと企業に販売するというものです。

テレビ局は広告枠が売れるし、企業にとっても、電通に任せるだけで良い宣伝ができます。

電通はそれだけに飽き足らず『イベント運営』にも進出しました。

「モノを売るには世の中を熱狂させた方が良い」ということで、大きなスポーツイベントなどを取り仕切り、盛り上がれば、テレビ局は広告枠が高く売れるようになり、企業はそのイベントに協賛することでイメージアップできます。

そうやって、電通は”世の中を動かす力”を持つようになりました。

テレビ局や企業は、大きなことをやろうとすると”電通無しでは始まらない”という状況になったのです。

<電通の力の源>

電通も、ここまでの仕事をやるには相当なパワーが必要になります。

そのパワーというのは、『マンパワー』ということになるのではないかと思います。

電通マンを突き動かしていたのがこの”鬼十則”と呼ばれるものです。

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この鬼十則の元、電通はここまで大きくなっていきました。

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広告代理店のシェアとしては圧倒的です。

電通の闇

大きな力を持った電通ですが、時代の変化もあり、様々な歪みが生じてきました。

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過酷労働による社員の自殺、力に溺れた社員の不正、また、ネット社会となり不都合な情報を抑えつけることもできなくなりました。

広告もネット広告が主流となりつつあり、従来のやり方が通用しなくなってきています。

そもそも日本のGDPが成長しておらず、広告の成長もGDPに比例するので電通も厳しくなっている側面もあります。

その結果、就職人気ランキングも右肩下がりとなっています。

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人気が下がって、優秀な人材も集まりにくくなっています。

Next: 業績は右肩上がり。長期投資家にはどんな企業に見える?

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