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「公道マリオカート」も瞬く間に復活。インバウンド急回復の裏で深刻化する「観光公害」。中国からの団体旅行“解禁”後のカオスを今から恐れる声も

都心の公道をカートに乗って疾走する、いわゆる“公道マリオカート”と呼ばれるアクティビティが、すっかりコロナ以前の盛況に戻っていると話題になっているようだ。

日本の街中をマリオの気分になって走れるという、スーパーマリオブラザーズ好きあるいはジャパニーズカルチャーのマニアなら堪らない体験ができ、また一部を除く国々の自動車免許を持っていれば乗車可能という手軽さ、さらに世界各国を見ても、大都市においてここまでラフな雰囲気で楽しめる公道アトラクションは稀だということで、外国人訪日客の間で人気が定着している感のある公道カート。

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以前は、カートといえばマリオカートということもあって、マリオやルイージのコスプレをして乗るのが定番だったのだが、そういった点も含めてキャラクターの画像や映像を許諾なしに宣伝・営業に利用していたと、2017年にキャラの権利を持つ任天堂が公道マリオカートの運営会社を訴える事態に。最終的に5,000万円もの高額賠償を命じられる結果となった運営会社は、その後各地にあった支店を次々と閉め、実質上廃業状態となっていたようだ。

ただ、この任天堂に訴えられたところとは異なる公道カート運営会社が、以前から複数存続し、それらがここに来て外国人観光客の間で大いに利用されている模様。

そのうちのひとつの会社のサイトを見てみると、「任天堂や「マリオカート(マリカー)」(Mario Kart)とは無関係で全くの別物です。(任天堂「マリオシリーズ」のコスチュームのレンタルを行っておりません。)」との一文が。そのためか、最近街中で見かけるというその手のカートの集団は、以前と比べ“マリオ要素”がかなり薄まっているとの声も。いっぽうで、その存在をあまり好ましく思っていない向きからは「コロナで潰れて清々してたのに!」などと嘆く声もあがっているようだ。

ドライバーからの評判が殊に悪い公道カート

コロナ禍によって長らく続いていた日本への入国制限も、昨年10月に解除となったうえに、このところは未曾有の円安ということもあり、世界各地の旅行好きたちの多くが、日本に注目しているといった今の状況。

今月19日、日本政府観光局が発表した3月の訪日外国人数(推計値)は、前年同月比で約27倍の181万7,500人と、先月の約147万人と比べても大幅増に。コロナ前の66%の水準までいよいよ回復してきたということなのだが、この公道カートに関しては、昨年のインバウンド解禁直後から問い合わせや利用者が多かったようで、さすがは人気のアクティビティといったところである。

ただ、この公道カートに関しては、利用する外国人観光客らが日本の交通ルールを順守しないどころか無謀運転を行いがちという話が、以前から取沙汰されていたところ。また、カートは車高が低いため周囲の車からは見えにくいのにくわえ、信号待ちの際に写真を撮るためなどで、車を降りるといった浮かれた行為も見受けられるということで、特にドライバーの間からはすこぶる評判が悪く、もはや一種の観光公害(オーバーツーリズム)だとの声も多い。

日本における観光公害といえば、例えば外国人からの人気も高い京都では、急激な観光客の増加によって路線バスが混雑し、通勤・通学の地元民が乗車できないという事態が相次いだほか、映える写真を求めて街歩きする者たちが個人宅の敷地まで入り込む、さらに深夜早朝に住宅街でスーツケースを引く“騒音”被害を訴える声も。

また、漫画『スラムダンク』の聖地として人気の鎌倉でも、週末などになると地元を走る江ノ電に観光客が殺到し、こちらも地元民の利用に差し支える事態となっているほか、作品の舞台となった例の踏切周辺には、写真撮影をしようとする者が大挙訪れ、なかにはドローンを飛ばす者も現れるなど、賑わいを通り越して一種の混乱状態になっていることも、よく知られるところだ。

以前から大いに問題視されていたこの手の観光公害なのだが、世界的にコロナが流行りだしてインバウンドがほぼゼロになってしまったことで、それらの問題は一時的に解決……というか一旦棚上げされる格好に。公道カートに関しても、ここ数年はとんと見かけなくなかったわけだが、それがここに来て復活しているように、各地における観光公害の問題も再び浮上しているといった状況なのだ。

中国からの団体旅行“解禁”でさらなるカオスに

もっとも、こういった観光公害の問題以前に、このところ急激にインバウンドが増えている状況に対し、観光地では宿泊施設の多くで深刻な人手不足に陥り、人材確保に大わらわとなっているほか、さらに各地の空港でさえも、受け入れ態勢が整わず混乱が起きているよう。

なかでも、このところは入国審査にとにかく時間がかかっているようで、最長待ち時間が1時間以上となっているところも。政府が過去に第1次観光立国推進基本計画で定めた「待ち時間20分以下」という目標を、大幅にオーバーしている状況だ。

このように、今の段階でも空港や観光地はすでにキャパオーバーに近いといった様子なのだが、それでも中国から日本への団体旅行に関しては、未だに解禁されていないという事実がある。日本側が中国からの渡航者に対して、水際対策を実施したことへの“報復”とされるこの対応なのだが、それもいずれは解禁され、多くの中国人団体が訪れる日もそう遠くはなさそうだということで、SNS上ではそのことを恐れる声も多くあがっているところだ。

政府もそんな観光公害の解消を目的に、今後は訪日客数に依存せず一人当たりの消費額を伸ばす、要は“量より質”への転換を目指すとして、富裕層を標的にしたモデル観光地を選定や、滞在日数や消費額も多くなりやすい「アドベンチャーツーリズム」などといった体験型旅行商品の開発を支援するといった政策を打ち出している。ただ、それらの話が仮に実を結んだとしても当分後のこととなりそうで、それより前に観光地が相当な危機的状況を迎えることは、どうやら避けれなさそうにない情勢のようだ。

Next: 「これで中国から押し寄せられたら完全に生活が脅かされる」



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Image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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