世界トップのモーターメーカーであるニデック<6594>(日本電産)を分析します。一代で築き上げた永守会長の手腕は素晴らしいですが、結論から言うと私はあまり評価していません。今後の成長性に疑問があります。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
コスト削減の限界
世界トップのモーターメーカーであるニデック<6594>です。
一代で築き上げた永守会長の手腕は素晴らしいですが、結論から言うと私はあまり評価していません。
手法としては、オペレーションのコストをとにかく下げて、M&Aにおいても業績が苦しいところをあえて買ってそこもコストを下げて、利益を積み上げて大きくなってきました。
しかし、そのやり方では成長性に疑問があります。
きついコスト削減を延々にやっていると現場は疲弊してきます。
業績を見ても雲行きが怪しいところがあります。
ニデック<6594> 業績(SBI証券提供)
何年かに一度、カクンと利益が下がっています。
これは「構造改革費用」によるものです。
事業の中でおかしな部分が溜まってきたから一掃しようということで、損失をまとめて出しているのです。
これを頻繁にやっていると、一見利益は右肩上がりになっているようですが、上と下を均してみるとほとんど成長していないという見方もできます。
会計的にも無理をしているという話もあります。
きつい現状から脱却するには
企業が付加価値を生む方法は2つあって、1つはコストを下げる方法です。
もう1つは「高付加価値戦略」です。
ニデックほど規模が大きくなってしまうと、永守会長の目が届くところでコスト削減を続けることには限界があると思います。
私は高付加価値戦略を行うべきだと思いますが、永守会長はそうしようとしません。
ニデックの平均年収は500万円くらいとかなり低く、これでは優秀な人材が集まるとは思えません。
退職者も増えているようです。
そういったところが今の不安定な業績に反映されているのではないかと思います。
Next: 一時期よりかなり割安も、いまが適正な株価?世代交代が成長のカギ
一時期よりかなり割安も、いまが適正な株価?
ニデック<6594> 週足(SBI証券提供)
一時期は永守会長のM&A等の手法がもてはやされて株価がかなり高かったです。
PERも平均しても40倍程度あったものが、今は23倍程度となっています。
割安になったようにも見えますが、これまで説明してきたように、今が良い状況とは思えず、むしろ今が適正な数字ではないかと思います。
株価チャートも一時期は良かったものの今は落ちてきていて、結局2015年くらいからほとんどプラスにはなっていません。
業績的にもこれが適正な評価だと思います。
今後、世代交代が進むのかというところは注目ですが、現時点では投資したいと思える対象ではありません。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年5月8日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。