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54億ドルで買った会社を1ドルで売り、78億ドルで転売される…東芝の大失敗は日本の縮図か=田中徹郎

54億ドルで買った会社を1ドルで売り、買った側はその会社を78億ドルで売る……こんなバカな話があっていいものでしょうか。実際に「東芝」がやって大損したディールです。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

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プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

高く買って安く売った東芝の大失敗ディール

「54億ドルで買った会社を1ドルで売り、買った側はその会社を78億ドルで売る」……こんなバカな話があっていいものでしょうか。

東芝は2006年に原子力発電を手掛けるウェスティングハウス(WH)というアメリカの大手企業を買収しました、買値は54億ドルでしたので、当時のレートで6,000億円ほどでした。

2011年に起きた東日本大地震の影響もあり、WH社は2017年に破綻しました、東芝は保有していたWH株をアメリカの投資会社に売りましたが、その売価は1ドルでした。

その後WHは、カナダのファンドの元で原子力関連サービスに注力し、企業価値を高めました。

そして昨年10月、カナダのウラン生産会社カメコがWH社を買いました。その時点の買値は78億ドル(当時のレートで1.16兆円)です。

つまり、東芝は6,000億円で買ったWH社を11年後に1ドルで売り、1ドルで買った側の投資会社はWHを再生して5年後に1.16兆円で売ったことになります。

この間の出来事は複雑ですが、まあ枝葉を取っ払ってまとめるとこんな感じになるでしょう。

手放した事業がことごとく復活している

東芝といえば明治の偉人、からくり義衛門こと田中久重の系譜につながる名門企業です。この出来事を日本にたくさんある会社の1つの失敗と、軽く考えていいものでしょうか。

そういえば大学の同じゼミにいたA君は38年前に東芝に入社しました。僕と違って勉強のできるマジメなやつでした。

A君だけではありません。当時の東芝は大学生の人気企業でしたから、特に理系の優秀人材をずいぶんと吸収したに違いありません。

その優秀な人たちは、その後の38年で能力を十分発揮できたのでしょうか。

僕にはそうは思えません。

東芝はほかにも問題を起こしました。2015年には不正会計がバレて、その問題は今だに同社の評判を下げ続けています。

一方で2018年に中国の会社(ハイセンス)に売ったテレビ事業(レグザ)は、その後順調に販売を伸ばし、昨年、日本国内のシェアNo1でした。

2016年に中国の企業(美的集団)に売った白物家電事業も黒字化し、順調に売り上げを伸ばしているようです。

Next: 東芝の凋落は「日本の縮図」か。経営者が本当に大事にすべきことは…



東芝の凋落は「日本の縮図」か

こんな風に考えてまいりますと、東芝の凋落は単に東芝という一企業の問題を通り越し、やや大げさながらおカネや人材の面でも、日本にとって損失だったのではないかと思います。

さらにこの東芝問題を考えていくと、これは東芝だけではなく、ほかの大手企業もまた、多かれ少なかれ同様の問題を抱えていることがわかります。

たとえば、僕が新卒で入社した三洋電機です。電池や冷凍機の技術部門には優秀な技術者が大勢いました。その後、松下に買収されましたが、彼らが松下のもとで能力を十分発揮できたとは思えません。

会社の経営者が短期的な企業価値を高めようとするのは当然ですが、おカネの有効活用や人材の育成という点でも、その責任の重さを感じながら経営してほしいものです。

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image by: yu_photo / Shutterstock.com

一緒に歩もう!小富豪への道』(2023年6月2号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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