富士山の弾丸登山者が夜間に野宿し登山道を塞ぐという迷惑この上ない事態が、このお盆休みに続出していると報じられている。
報道によれば今月11日、山梨県の吉田口8合目(標高3,100メートル)の山小屋付近の登山道沿いには、保温性の高いシートに身を包み、仮眠を取る約100人の登山者がいたとのこと。夏でも山中の夜間は冷え込むため、巡回指導員が「寝る場所じゃないから動いて。外で寝ると危ない」と声をかけたところ、「別に寝てないんだよ!」と声を荒らげる者もいたという。
また別の報道でも、同11日夜に山小屋の予約をしていない“弾丸登山者”が登山道で仮眠したり、山小屋前のベンチで眠ったりするなどの行為が多発したと報じており、仮に悪天候時の8合目で規制をした場合、生命の危機にもつながるということで、山小屋経営者らでつくる旅館組合が、混雑時に行う登山者の規制をクルマでたどり着ける5合目で行うよう、山梨県に要請したという。
台風接近時でも登山を強行する者も多数
それこそ江戸時代の「富士講」といった大昔から、一般大衆のレジャーとして親しまれて来た富士登山。最近ではインバウンドなどの外国人らにも注目されるに至ったことで、より多くの人々が山頂を目指すようになり、今回のようなカオスな状況となっているようである。
また富士登山といえば、あまりにもポピュラーであることと、実際5合目まではクルマで行けるという好アクセスもあり、いうなれば“舐めてかかる”素人登山者が多く見られるのも、以前から多く指摘されていたところ。
ここ最近でも台風7号が日本へと迫っている最中にも関わらず、それでも富士登山を強行しようという者が多かったといい、登山家の野口健さんもSNS上で「台風情報が報じられている中、それでもあえて決行するのならば救助する必要なし」と苦言を呈したことが、大いに話題になったばかりだ。
そんななか、今回取沙汰されている富士登山者による登山道での仮眠問題だが、どうやらこのお盆の時季に弾丸登山や野宿をしていく者らの多くが、東南アジアなどから来た技能実習生だというのだ。
というのも、どういう経緯でそうなったのかは不明なのだが、日本の各地に存在する技能実習生の間で、お盆休みの期間に富士山への弾丸登山を行うことが、近年いわばブームとなっているよう。ただ彼らのほとんどが、登山におけるルールやマナーをほとんどわきまえていないようで、なかには仮設休憩所のプレハブの下に雨宿りのため潜り込み、さらにそこで火器を用いるといった危険な行為を行う者もいたとのこと。
そういった技能実習生の救助事例も多いようで、今月12日にも静岡県富士市在住のベトナム国籍の技能実習生が、新7合目付近で座り込んでいたところを救助されたとのことだが、その服装は長袖シャツにスニーカーといった軽装で、食料なども持ちあわせていなかったというのだ。
安価で任意、富士山の入山料
このように単純に登山者が激増している状況にくわえ、その多くがルールやマナーを分かっていない者だということで、さらにカオスぶりに拍車をかけているといった富士登山を巡る状況。
とくに“悪目立ち”している格好の技能実習生らに対しては、受け入れ先の企業などが登山のルールやマナー、さらにその危険性に関して周知させて欲しいといった要望もSNS上ではあがっているようだが、それ以外の意見としてあがっているのが、今後、より高額な入山料を取るべきでは……といった意見。
富士山の保全協力金、いわゆる入山料だが、現在はひとり1000円でしかも任意。ちなみに、入山料の徴収が本格的に始まったのは2014年からだということだが、2022年のデータだと山梨県側からの入山者の協力率は72.8%、静岡県側からは57.3%に留まっているという。
トイレの新設・改修や救護所の拡充など、本来は山の環境を保全する目的に徴取される入山料であるが、富士山の場合はあまりにも増えすぎた入山者を“調整”するためにも、今よりも高額な入山料を、しかも強制的に徴収することで、いわゆる富士山を“舐めてかかる”ような層は排除できるのでは……といった見立てのようだ。
実際、入山料の強制徴収に関しては、その適正価格はいかほどか、またいかにして徴収漏れを防ぐかなど、課題は多いようなのだが、今回のような“弾丸登山”“大量の野宿者”といったカオスな事態を報じられているのを受けて、賛成する声が広がっている状況のようだ。
Next: 「5合目から先は料金取っていいと思う」
ツイッターの反応
※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。
Image by: MADSOLAR / Shutterstock.com