ゴールドマン・サックスが今後6ヶ月のドル円見通しを1ドル=135円から155円に大幅修正し、大きな話題となりました。ドル買いは一巡感もあるものの、円売りがドル円・クロス円を支えています。今日の雇用統計次第でドル買い機運が高まれば、1ドル=150円の大台も見えてきますので、しっかり注目しておきましょう。(ゆきママ)
️追加利上げの警戒感からドル買い、日銀の緩和姿勢による円売りで一段高
今週は週明け早々に1ドル=147円をつけるなど、昨年11月以来の水準までドル円が上昇する場面もありました。背景としては、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ警戒感からドルが買われていたこと、また、日銀の金融緩和継続観測で根強い円売りがあります。
米ドル/円 15分足(SBI証券提供)
米国はすでに5%以上まで金利を引き上げ、強力なインフレ退治、加熱する経済をコントロールしようとしていましたが、コロナバブルからの金余りが継続しており、個人の旺盛な消費と企業の設備投資が続き、景気の強い状況が続いています。
これを受け、FRBも7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で来年後半の景気後退見通しを撤回し、市場関係者はさらなる利上げ、高金利継続を意識してドルがジリジリと上昇していました。
また、日銀は7月に事実上のYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正を行い、長期金利(10年国債利回り)の上限を0.5%から1.0%に変更しました。
これによって、いよいよ日本の金利が上昇が意識され、日米金利差縮小を見越した円買いもあったのですが、金利が0.6%程度に上昇するとすかさず日銀が国債買い入れの臨時オペを行い金利上昇を抑制。この日銀による臨時の国債買い入れが常態化、金利上昇が抑え付けられていることで、結局、日銀は相変わらず緩和姿勢との見方が広がり、円売りが復活しています。
さらに、直近8月分の東京都区部CPIを見ても、前年同月比+2.8%程度と、日本のインフレは落ち着きつつありますし、加えて中国経済の鈍化が日本経済の下振れ要因にもなりつつありますから、もはや日銀がこれ以上の政策修正を行う可能性は低いとの見方も広がり、円安は継続、冒頭のゴールドマン・サックスの見通しにもつながっています。
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弱い数字が織り込まれているがサプライズには警戒
今週に入って発表された雇用関連指標は冴えない数字が続き、ドル買い機運は鈍りつつあり、ドル円相場もやや反落しています。
特に雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想の946.5万件に対し、882.7万件と大幅に下振れしたことが影響しています。前月分も958.2万件から916.5万件と下方修正されており、ようやく金融引き締めの効果が意識される結果となっています。
雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
給与計算サービス大手のADP社の全米雇用報告も前月から急減しています。雇用者数はブレが大きく、あまり参考にはなりませんが、給与の伸びを見ると前年比で順調に下げており、全体として加熱感は後退している印象です。
また、8月初旬に米トラック物流大手のイエロー社が経営破綻しており、従業員3万人以上の雇用が失われたとの報道もありますから、これらを踏まえると強い指標は期待しにくいでしょう。
一方で、JOLTSが大きく下振れ、ADPも弱めということで、今回は弱い数字が織り込まれていますから、強めの数字が出た場合のサプライズには警戒したいところです。
️絶対的な円売りを意識して押し目狙い!
今夜の注目は予想並かそれ以上の数字が出てドルが買い戻されるのか、それとも弱い数字が出てドル売りが継続するかという点ですね。円売りは継続ですので、一定の底堅さはあるでしょう。
ちなみに事前予想値は非農業部門雇用者数(NFP)が+17.0万人増、平均時給が前月比+0.3%・前年比+4.4%となっています。
ドル円チャート(日足)
ドル自体の底堅さもありますが、全体としていったん調整模様で145円台前半まで調整しています。目先は145.00円の大台節目の攻防が焦点。ここには21日移動平均線もあるので、ここで下値を固められるかどうかがポイントとなります。
もっとも、今夜の雇用統計で予想を下回るような数字が出れば、144円台半ばぐらいまでの押し下げは想定しておくべきでしょう。雇用者数の伸びが+10万人台を下回るとか、平均時給が前月比で+0.1%以下になるなど賃金インフレの減速感が明らかとなれば、144円台を割り込むことも想定しておきましょう。
それでも、日銀緩和継続期待で円売りが支えとなりやすいですから、極端な円高・ドル安を想定するというよりは、やはり押し目を意識して買っていくのがベターかと思います。
もちろん、予想並かこれを上回る数字が出ればドルは買い戻されやすいので、146円台、予想を大幅に上回れば利上げへの警戒からドル買い再起動で147円以上の数字も見込めるでしょう。
Next: 具体的なトレード戦略は?今夜の想定は1ドル=144.50〜147.00円
今夜の想定は1ドル=144.50〜147.00円
トレード的には、145.00〜145.30円で軽くロングして雇用統計の数字を見て、さらに追加するか、それとも撤退するかを決めたいところでしょう。予想を下回った場合は、いったん損切りして144円台半ばぐらいで止まれるかどうかを確認、止まればロングを追加しても良いでしょう。この場合、144.00円を割り込んだらいったん損切りです。
予想並かそれ以上の数字となった場合は、146円台前半での重さを確認して利益確定するかどうかを検討したいですね。やはり146.50円レベルで上値は抑えられやすいですから、よほど強い数字、雇用者数が+27〜28万人を上回る、平均時給が予想を上回ってくるということがなければ、146円台に頭を出してきたら利食い検討でしょう。
大きなトレンド的には、やはり上昇方向にはあるので、まずは逆らわずにトレードを組み立てたいところでしょう。市場のバイアスも下振れに傾いていますので、そういった意味でも押し目・ロング戦略で狙っていきたいところ。
繰り返している通り、日銀の緩和期待による円売りがありますから、雇用統計でよほど弱い数字が出ない限り、ドル円のトレンドが変わっていくことは考えにくいので、そのつもりで取り組んでいきましょう!
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年8月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による