今回は成功する長期投資家の共通点について解説します。私の周りには、つばめ投資顧問に関わっていただいているろくすけさんや森さんのような、多くの財産を築いた長期投資家が集まっています。彼らの共通点を見つけ、できる限り一般化して皆さんにお伝えしたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
成功する長期投資家に共通する13個の「性格・精神」
<1. 倹約家である>
これは分かりやすいポイントだと思います。
投資には元手が必要で、収入から支出を差し引いた残りを貯蓄に回すことが自然な流れだからです。
いくらテクニックを駆使しても、お金がなければ始まりません。
無理して節約するわけではなく、必要なだけ使い、残りを投資に回すのです。
これを自然にできることがお金持ちになるための絶対的な条件と言えるでしょう。
あのウォーレン・バフェットも倹約家として知られています。
<2. 読書家である>
お金を貯めることはもちろん重要ですが、投資は知識のゲームでもあります。
私の周りの成功した投資家さんたちは本をよく読んでいて、書評をブログにアップしていたりもします。
知識は積み重ねることができる財産で、それを蓄えて投資に活かすことが成功の鍵かもしれません。
<3. 楽天家である>
投資にはリスクがつきもので、価格が下がったり、企業が倒産したり、景気が悪化したりする可能性があります。
ネガティブな面を考えるのは当然ですが、そればかりに囚われていると投資はなかなかできません。
特に長期投資においては、将来に対する明るい見通しを持つ必要があります。
例えば、私がよく話す森さんは、かつて中国株で資産を築き、その後は米国株に投資しました。
日本株にはあまり強気になれなかったと言いますが、中国やアメリカの経済成長に対して楽観的であったことが成功の要因だったということです。
ウォーレン・バフェットもアメリカ経済の成長を信じたことで資産を築けたと言っています。
<4. 俯瞰できる>
楽天家であることは大切ですが、視野が狭くなってしまってはいけません。
本当に危ない場合には冷静に判断し、必要なら売却することも考えなければなりません。
成功した投資家たちは、信じる一方で冷静な目で市況を見る能力を持っています。
そのため、おすすめしていた株を急に売却することがあるように見えるかもしれませんが、それは心変わりしたというより、冷静な判断ができているからこそと言えます。
ウォーレン・バフェットも最近、TSMCの株を購入して1年後に売却したという事例があり、これは中国リスクを考慮して自身の戦略を変えた結果だと思われます。
<5. 損切りできる>
ダメなものを売って、良いものに入れ替えていくことができるかどうかで初心者かどうかが分かります。
当然、成功する投資家は、これを実践しています。
しかし、人間心理的に損切りは難しいとされており、自身の過去の行動を正当化しようとしたり、損失を確定させることに精神的苦痛を感じてしまいます。
しかし、それを断ち切り、前に進むことが成功への道だと思います。
<6. わが道を行く>
「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があるように、他の人が見向きもしないところにチャンスが眠っていることがあります。
特に長期投資の場合、周囲が悲観的なときに自分の目を信じて保有し続けることで成功を掴むことができます。
<7. 他人の気持ちがわかる>
成功している投資家さんたちは優しい人が多いです。
つまり、相手の気持ちが分かるということです。
株価が動いたときに他の投資家がどういう気持ちで投資しているのかを想像できるのではないかと思います。
一方で単にそれに流されるわけではなく、俯瞰的に状況を見て判断することで適切な行動につながっていくことでしょう。
<8. 成功は「運」と考える>
成功の要因を尋ねると、「運が良かったからだ」と答える方が多いです。
しかし、実際には、運は確かに存在しますが、それを呼び込むための行動を取っているのです。
例えば、アベノミクスで成功を手にした人がいますが、その前にはリーマンショックや東日本大震災などで株価が低迷していた時期がありました。
彼らの成功の要因は、そのような厳しい状況でも投資を続け、株を買い増ししてきたことにあります。
投資の世界では自分の選択によって運の要素を最大限に活かすことが可能です。
ぜひ運を呼び込むための積極的な行動を取っていただきたいと思います。
<9. 何十年も継続する>
たった1年だけ投資を続けても、長期投資においてはほとんど意味がありません。
長期投資のリターンは一般的に良くても10%程度ですので、1年間で資産が大幅に増えることは難しいです。
しかし、10%のリターンを15年間継続すれば、資産は約4倍に増加します。
そして30年続ければ8倍に達し、1000万円でスタートしたとすると1億円くらいになってもおかしくないということになります。
ウォーレン・バフェットも、資産の大部分を60歳を超えてから形成したといいます。
長期投資は、福利の効果もあり、年数が経過するにつれて成果が出やすくなります。
最初は成果を実感しにくいかもしれませんが、継続することで蓄積され、ある時大きな成果を実感できる日が来るでしょう。
<10. 投資そのものが好き>
投資をやっていると、うまくいかない期間もあると思います。
そんな時に続けられる理由は、投資そのものが趣味として楽しいことであるのではないでしょうか。
投資には様々なアプローチがあり、優待や配当、企業の分析、市場の動向の予測、理論の構築など、好みが異なります。
重要なのは、どれか一つでも投資の面白さを見つけ、それを楽しむことです。
<11. 自分の強みが分かっている>
企業分析が得意であるとか、マーケットの動きに合わせて投資をしたり、あるいは統計に強いなど、自分の強みを投資に活かすことも大切です。
自分の強みを投資戦略のきっかけにするとよいでしょう。
<12. 自分の弱みが分かっている>
一方で、自分の弱みを認識することも重要です。
得意でない部分では勝負をしない、強みと弱みはワンセットで考えるべきだと思います。
<13. 自信がある>
もちろん根拠のない自信では意味がありませんが、自信を持てるまで調べて考えることが重要です。
Next: 成功する長期投資家に共通する「知識・スキル」「投資戦略」とは
成功する長期投資家に共通する3つの「知識・スキル」
ここからは皆さんが知りたいと思うであろう、知識とスキルについてです。
<14. 決算書が読める>
断言しますが、決算書の読解スキルは必須です。
私の周りの成功者は前職が金融関係であったり、企業の財務部に所属していたりと、決算書を読むスキルが非常に長けています。
決算書が読めるからといって伸びる企業が分かるわけではありませんが、少なくとも潰れそうな会社を避けることができます。
専門的な仕事をしていない方でも、簿記3級程度の知識は身に着けておくべきでしょう。
<15. ビジネスのことがわかる>
特に個別企業を詳しく調査する場合、現在の社会情勢やビジネスの展望を理解することが大切です。
中小企業診断士の資格などは非常に役に立つと思われます。
ウォーレン・バフェットも投資家としてだけでなく、経営者としても優秀です。
自分でビジネスをやっている方、経営に関わる経験がある人にはぜひ投資をやってほしいと私は思っています。
<16. 好奇心旺盛である>
会計やビジネスに限らず、新しいものに対しても興味津々であったりします。
過去の成功にこだわりすぎても、未来を見通すことは難しいです。
世界は常に変化しているので、常に好奇心を持ち、新しいアイデアやビジネスに対して興味を持って投資していくことも必要です。
ただし、単なるギャンブルとして行動するのではなく、ビジネス知識や会計知識を背景に、冷静な判断を行うことが重要となります。
成功する長期投資家に共通する10個の「投資戦略」
<17. 過去の価格を気にしない>
過去の株価にこだわってはいけません。
株価が過去最高値であったり自分の買値より高かったとしても、成長し続ける企業であれば最高値を更新し続けることになるので、過去の株価は関係なく今買うべきなのです。
売る時も同様に、ダメな企業だと判断したのであれば損が出ていてもすぐに売るべきです。
重要なことは過去の株価ではなく将来を見越して投資することです。
<18. 価値と価格の違いが分かる>
価値は株や他の資産が将来どれだけ利益をもたらすかに関する評価であり、価格は市場での取引において成立する数字です。
価値と価格は必ずしも一致しないことがあり、価格は市場の心理によって変動するものです。
したがって、本当に価値のあるものを見極め、価格の変動に左右されずに投資を続ける精神面の強さが重要です。
<19. リスクヘッジしている>
1つのものに集中投資するのではなく、リスクを分散させるために複数の資産や銘柄に投資することが重要です。
集中投資して成功すれば一時的に大きなリターンを得る可能性がありますが、同時に大きなリスクも伴います。
長期的な投資を考えると、分散投資がリスクを管理しやすく、賢明な選択とされます。
<20. 目標を持つ>
投資を続けるためには明確な目標が必要であり、それがモチベーションを維持する助けになります。
例えば、引退までに1億円を貯めるといったことです。
<21. 目標が高すぎない>
しかし、目標が高すぎると達成が難しくなり、無理にリスクを取ったり諦めたりすることがあります。
したがって、実現可能な目標を設定し、長期的なプランに合わせて目標を選ぶことが大切です。
共通していたのは「10年で2倍」という目標。これは年になおすと7. 2%程度であり、株式市場全体の平均的な数値となります。
<22. 長期的な成長重視>
特に個別の企業を選ぶ際に、目先の株価上昇や急な業績向上に惑わされず、企業の長期的な成長を見極めることが重要です。
急激に成長するとその後急落する可能性もあります。
そのため、安定的な長期的な成長を持続する企業を選ぶことが投資の成功につながります。
過去の成功だけでなく、将来の成長性を評価しましょう。
<23. 割安にとらわれない>
投資においてPERなどの割安指標は重要ですが、過度に割安な銘柄を選ぶことは注意が必要です。
良い企業なのにPERが割安であるケースは本当に少なく、割安すぎる銘柄にはリスクがあると思っておくべきです。
成長株や資本の成長に従って伸びる銘柄は、長期的な視点で見ると割安株よりも成績が良いことが多いです。
<24. フルポジに近い>
フルポジションとは、現金をほぼすべて株式に投資している状態を指します。
暴落時に株を買えるように現金を残すべきだという一般的な考え方とは異なり、フルポジで持ち続けたことで資産を築けたということです。
もちろん暴落時に買えた方が良いのですが、いつ来るか分からない時のために現金を遊ばせておくよりも、その期間も投資しておく方が有益であるという考え方です。
フルポジの状態で暴落、つまり買いのチャンスが来た時はどうするかというと、持ち株の中で優劣をつけて、劣るものを売ってさらに良いものを買うのです。
フルポジでいることによって、ポートフォリオを改善する機会が必然的に発生するという効果もあります。
<25. 家計戦略もしっかり>
投資は結局「元手をどう確保するか」が非常に重要となります。
生活費ももちろん必要ですが、本当に手元に置いておかなければならないお金というものは3か月ほどの生活費だけだったりします。
家計に必要な分をきちんと把握することで、投資の元手を最大限に用意することができます。
<26. 記録を残す>
ブログや日記などに自分の取引や考えを記録することで思考が整理され、後から検証する際にも重要な資料となります。
情報をインプットするだけでなく、自分の行動をアウトプットすることは、将来の投資の糧になると思います。
Next: 成功する長期投資家に共通する「背景事情」とは
成功する長期投資家に共通する7つの「背景事情」とは
ここからは、「こうでなければならない」というものではありませんが、一方でこれに当てはまるような方はより可能性が高いかと思われます。
<27. それなりの年齢>
投資で成功するにはかなりの時間がかかります。
”成功した人”というと必然的に年齢は高くなります。
賃金や子育ての面でも、投資で成功する環境が整う頃にはそれなりの年齢になっているでしょう。
<28. そこそこ高収入>
倹約は重要ですが、収入が少ないとどんなに倹約しても資金が限られます。
収入が多いに越したことはないということが1つの現実かと思います。
<29. 共働き>
1人の収入がそれほどではなくても、共働きであれば資金を確保しやすいでしょう。
税金の面でも有利になります。
<30. 配偶者がしっかり者>
投資で成功している方本人がお金の計算に強かったりすることはもちろんですが、その配偶者の方が浪費をしなかったりするなど、しっかりしている印象です。
<31. 配偶者が寛容>
フルポジで、現金が手元にそこまで多くないという状況を許してくれる配偶者の存在も大きいでしょう。
<32. 配偶者も投資家>
さらに言えば配偶者も投資を始めたという方もいます。
異なるアプローチが刺激になったり、お互いの理解が深まるポイントにもなるかと思います。
<33. 高学歴>
投資は”知のゲーム”と言ってきましたが、重要なのは学ぶ気持ちがあって様々なことに取り組める土台があることです。
高学歴であるということはその土台を示すものかと思います。
しかし、高学歴であっても投資ではギャンブル的な行動を取ってしまう人も少なくありません。
頭が良い方であればぜひその頭を上手に使っていただきたいです。
逆に、高学歴でなくても学ぶ意欲と時間という土台があれば成功につながるでしょう。
投資に取り組んでもらいたい
勉強ができる方、知的欲求旺盛な方、これだったら負けないという強みを持っている方、ぜひ投資に取り組んでいただきたいと思います。
そして、投資を行っている方は、今回挙げた33項目に自分は当てはまっているか、考えていただけたらと思います。
(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年9月17日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。