マネーボイス メニュー

安定性増すインドルピー【フィスコ・コラム】

2023年に世界経済の回復に寄与した国を選ぶなら、間違いなくインドでしょう。高成長を維持し、株価は最高値を更新中。さらに海外からの投資を呼び込み、インドルピーはドル高基調にもかかわらず底堅さを維持しました。2024年は総選挙が焦点となりそうです。

インドの代表的な株価指数SENSEXは12月に入り騰勢を強め、心理的節目の70000ポイントを上抜け過去最高値を更新しました。3月には米金融システム不安によるリスクオフで57400ポイント付近に弱含む場面もありましたが、その後は上昇基調を維持し、20%も上値を伸ばしています。相関性の高い米国株に追随したとはいえ、NYダウの15%を超える上昇率は目を見張るものがあります。

インドの国内総生産(GDP)は3兆ドルを超え、第4位に転落見通しの日本を2026年には追い抜くとみられています。人口は中国から世界トップの座を奪いました。投資ブームの持続や生産性の向上で、内需を押し上げています。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、インドについて23年の成長率を+6.1%から+6.3%に上方修正。海外のマネーを引きつけ、ルピーは底堅く推移しています。

堅調な株価や底堅いルピーを支えているのは、与党の盤石な政権基盤でしょう。11月に行われた地方議会選で、モディ首相率いるインド人民党(BJP)が4州のうち3州で勝利。インド国民会議(INC)を中心とする26党の野党連合「INDIA」との接戦が予想されたものの、予想外の圧勝でした。それを受け、市場は来年4-5月の総選挙でのモディ氏3選を先取りし、株高・通貨高で反応しました。

2014年に発足したモディ政権の支持率は50%超。国内政策だけでなく、したたかな外交も安定政権の秘訣でしょう。BRICS拡大で中国と足並みをそろえつつ、太平洋地域では日米豪と協調して中国をけん制するなど米中対立に与せず、ルピーのバランスを保つ要因になっています。最近ではシーク教指導者がカナダで殺害された事件でカナダとの関係悪化が材料視されましたが、米英はインドの支持を表明しています。

株価が足元で伸び悩んでいるのは、国内のインフレ高止まりが背景にあります。12月12日に発表された消費者物価指数(CPI)は前年比+5.55%と、前月の+4.87%を上回りました。再加速は想定ほどではないものの、インド準備銀行(中銀)が利下げのメドとする+4%を大きく超えています。中銀の利下げ時期が来年後半以降に遠のいたとの見方から、CPI発表後は株売りに振れました。来年もインフレ抑止がテーマとなりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。